【日記】さようなら

気がついたら涙は出なくなっていた。
あなたのことで頭がいっぱいになるのは、
酔った深夜だけになった。
2人で歌った歌も、昼間なら何も思わなくなった。
あなたがどんどん薄れていく、
時間がゆっくりと忘却な彼方へと溶かしていく。
あなたを重ねて泣いていた音楽も、
もう何も思わなくなってしまった。
そんなことより、憧れているミューズの新譜がカッコよくて、何にあんなに涙を流していたのかも忘れてしまった。
自分の熱の冷め方が怖いと感じるのは初めてだ。
あんなに熱烈に思っていたのに、
桜が舞い人々が楽しげに宴を広げている真ん中で、
友達の腕を掴み嗚咽が出るほど泣いていたのに、
今ではあの時抱いていた違和感を反芻しては
少しずつ熱が冷めていくのが手に取るようにわかる。
今はまだありがとうと言えないけれど、
いつかありがとうと思える日が来てしまう。
今はまだ幸せになってねと願えないけれど、
いつかあなたの幸せを願えてしまう日が来てしまう。
そうなってしまったらもう、
全て全て消えてしまう。
どうして忘れることが怖いのだろう。
あなたに執着をしているのではなくて、
あの時の身が焦がれるように誰かを好きだと思えていた自分に執着をしているだけなのかもしれない。
本当はもう、あなたのことなんて、
とっくにどうでも良かったのかもしれない。

あなたの嫌いなところは沢山ある

本当は他の女の子たちにも手を出していたのに、
嘘をついていたところ。何のメリットか分からないけれど、そういうことでガチ恋ムーブに待っていこうとしていたところ。アイコンがコロコロと変わるナルシストなところ。人とちゃんと向き合うことができないこと。流されやすいところ。薄情なところ。頭が悪いところ。いいなりなところ。其の場凌ぎが酷いところ。本音でぶつかり合えないところ。好きなところより嫌いなところの方が多いのに、多いのに、好きだったんだよ。私。違和感に目をつむるくらい、見えないフリをするくらい、私、好きだったんだよ。そんなことも多分あなたは、鈍感で、私のことに興味なんてなかったよね。期待なんて出来ないこともわかってたのに、期待してしまってたのは、あなたの事が好きだったからだよ。
「旦那はオキシトシンで、彼はドーパミン」
と言っていた彼女の言葉を反芻しては、あぁ、そうだなぁ、と思う毎日だよ。
あなたを思って泣いていた日々が薄れて、
ああようやくあなたのことを、まっすぐ見ることが出来て、夢から覚めて、そして、ここから本当のさよならなんだね。さようなら。健気にあなたを慕っていた私。さようなら。あなたに夢中になっていた可愛い私。さようなら。あなたに一喜一憂していた私。

さようなら。あなた

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