寮の名札への伝言

俺が学生時代住んでいた寮は、自治寮だった。
つまり管理人とかは、いない訳だ。
食事を作る栄養士や調理師、風呂のボイラーの管理するボイラーマンとかは、寮の自治会で雇っていたのだ。大学に払ってる毎月の寮費から、それは賄われていた。

管理人居ないから、寮の電話番は、寮生が交代でやっていた。
19:00〜21:00,21:00,23:00と言う形で、2人が毎日電話当番だった。
これは自治会から決められて、掲示されていた。都合つかない場合は、自分の当番を誰かに自分で交渉して代わって貰う訳だ。

寮の受付には、公衆電話が2台あった。
電話当番は、両替もしていた。10円玉しか公衆電話は使えなかったから、その両替である。
あとは大学内から通じる有線電話もあった。

電話が入ると、寮内放送で部屋番号と名前を呼んで、お電話ですと流す訳だ。
各階にはブザーがあり、これから電話に行きますと言う場合は1回、不在の場合は2回鳴らすのである。
不在の場合は、同室者がブザー鳴らしていたが、同室者も不在だったりすると、音沙汰もない。
そう言う時は、3分くらいで、呼び出したけど居ないみたいと伝えて、伝言あるか尋ねるのだ。
伝言あった場合は、玄関にある名札のところにメモを貼り付けるのである。
この名札は、大学通学してる時とかは、裏の赤にして不在を表していたよ。
でもこのメモは、気づかない時あるんだよね。

ある土曜日、俺は友達と約束してたので、高円寺の彼のアパートに向かっていた。その日は泊まる予定だったのだ。
夜20:00くらいだったかな、高円寺を歩いてると、俺の泊まる予定の人が数人の人と歩いていた。
「え?今日大学の友達と出かけるから、予定は中止と寮に伝言頼んでたよ」と言われた。
俺は高円寺から国電と小田急線を乗り継いで、寮に帰ったのだった。
名札のところを見ると、確かにMさんから予定中止との連絡と貼ってあった。
俺は朝寮を出て、直接高円寺に行ったから、メモには気づいていなかったのだ。
やっちまってた。

今ならスマホで個人的に連絡だから、こんなすれ違いは起きない。
でもよく高円寺で、すれ違えたなぁ。
あそこで出くわさなかったら、アパート行ってノックしてて、近くの喫茶店で時間潰して、またアパートを訪れていただろう。
そうしてみると、ラッキーずっきーだったのかもね。

昭和の出来事である。

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