祖父のトマト 3段落エッセイ
亡き祖父は戦争から帰ってから、漁師をしていた。何ヶ月も帰ってこない遠洋漁業。母は子どもの頃、生活が苦しくて大変だったと語る。でも私が物心ついた頃には祖父は花農家をしていた。泳ぎがうまくて、10メートル以上も素潜りできて、魚を捌くのが職人のように上手だった自慢の祖父。
花農家になったきっかけは運命的だった。地元の海で、どこかの船が難破し、泳ぎ自慢の祖父も救助活動に。助けられた人たちと皆仲良くなった。彼らは、気候が似ているからきっとよく育つ、と花の苗だか種だかを贈ってくれたらし