第15回 79問

遅発性ジスキネジアについて誤っているのはどれか、1つ選べ。
a. 症状部位は舌・口唇・下顎が多い。
b. 若年者は高齢者より発現リスクが高い。
c. 抗コリン薬による治療は推奨されない。
d. 第二世代抗精神病薬でも発現リスクはある。 
e. 2~3か月以上の抗精神病薬の使用で出現しやすい。
解答:b??

a.○ジスキネジアは、顔面、口部、顎、四肢、躯幹などに出現する無目的で持続的な異常不随意運動の総称である。なかでも口周囲部(口、頬、舌、顎)に出現するタイプの異常運動は最も出現頻度が高く、ジスキネジア全体の96.7%に及んでおり、不規則で比較的ゆっくりとした口をもぐもぐさせるグロテスクな動き、舌なめずりや舌を突き出したり鳴らしたりする動きなどが特徴的である。

b.×遅発性ジスキネジアの発現のリスクが高い要因として、女子、子ども、50歳以上の中高年齢者、脳器質障害や気分障害の合併などが挙げられる。
よって若年者は高齢者より発現リスクは低いのではないかと思います。

c.○抗コリン薬は抗精神病薬による錐体外路症状を軽減するが、長期的な併用で遅発性ジスキネジア発現のリスクを高めることがある。したがって、抗コリン薬の併用はできるだけ短期間にとどめ、抗精神病薬の用量調節
で錐体外路症状を回避できない時のみ使用するほうがよい。
d.○遅発性ジスキネジアの発現頻度は、第一世代抗精神病薬より第二世代抗精神病薬の方が幾分低いとされている。しかし、第二世代抗精神病薬でも遅発性ジスキネジアが発現することに注意が必要である。

e.○←消去法から○になります・・・
遅発性ジスキネジアは、遅れて出現する抗精神病薬の有害作用であり、治療後6か月までに出現することは稀である。すべての抗精神病薬は遅発性ジスキネジアを起こしうる。患者が抗精神病薬を摂取するほど遅発性ジスキネジアは起こりやすくなる。1年以上治療を受けている患者の約10~20%、長期入院患者の約15~20%で遅発性ジスキネジアが出現する。

と過去問解答にはあり、2~3か月の抗精神病薬の使用で出現しやすい、とはいえないとは思うのですが。少なくも6か月までに出現することは稀であることは間違いありません。


【過去問から】
第1回61問
1)遅発性ジスキネジアについて正しいのはどれか、2つ選べ。
a. 定型抗精神病薬を長期服用している2~3%の患者で発現する。
b.急性錐体外路症状が出現しやすい患者では、発現リスクが高い。
c.第一世代抗精神病薬と第二世代抗精神病薬による発現頻度は変わらない。
d.男性患者で出現しやすい。
e.クロザピンは症状軽減作用を有する。
解答:b.e
×a. 第一世代抗精神病薬で長期治療を受けている患者の20~30%で遅発性ジスキネジアが出現するといわれている。抗精神病薬を服用している若い患者の3~5%で毎年遅発性ジスキネジアが発現する。
○b.急性錐体外路症状が出現しやすい統合失調症患者では、遅発性ジスキネジアが出現しやすい。認知障害や気分障害を合併する統合失調症患者では、それらを合併しない患者よりも遅発性ジスキネジアが発現しやすいとされている。
×c. 遅発性ジスキネジアの発現頻度は、第一世代抗精神病薬より第二世代抗精神病薬の方が幾分低いとされている。しかし、第二世代抗精神病薬でも遅発性ジスキネジアが発現することに注意が必要である。
×d.遅発性ジスキネジアの発現のリスクが高い要因として、女子、子ども、50歳以上の中高年齢者、脳器質障害や気分障害の合併などが挙げられる。
○e.クロザピンは症状軽減作用を有する


第4回 4問
2)遅発性ジスキネジアについて誤っているのはどれか、1つ選べ。
a.睡眠中は消失する。 ○ 
b.ストレスで増悪する。 ○
c.男性の方が罹患しやすい。 × 女性は男性より罹患しやすい。
d.50歳以上の患者は発症リスクが高い。 ○
e.抗精神病薬服用開始後6か月以内に発症することは稀である。 ○
ジスキネジアは、顔面、口部、顎、四肢、躯幹などに出現する無目的で持続的な異常不随意運動の総称である。なかでも口周囲部(口、頬、舌、顎)に出現するタイプの異常運動は最も出現頻度が高く、ジスキネジア全体の96.7%に及んでおり、不規則で比較的ゆっくりとした口をもぐもぐさせるグロテスクな動き、舌なめずりや舌を突き出したり鳴らしたりする動きなどが特徴的である。
 抗精神病薬の長期投与後に出現する遅発性のタイプが大部分を占め、難治性でしばしば不可逆的な転帰をとることから、精神科臨床上の大きな問第点の1つとなっている。一般に、抗精神病薬服用中の患者の平均15~20%に出現すると見積もられている。


第5回 80問
3)抗精神病薬による遅発性ジスキネジアについて誤っているのはどれか、1つ選べ。
a. 睡眠中も持続する。
b. ストレスで増悪する。
c. 女性は男性より出現しやすい。
d. 抗精神病薬の増量で一時的に改善する。
e. 若年患者に比べ、高齢患者で寛解しにくい。
解答:a
遅発性ジスキネジアは、ドパミン受容体拮抗薬により遅れて出現する有害事象であり、治療開始6か月後までに出現することは稀である。この障害は、頭部、四肢、体幹筋の異常で不随意・不規則な舞踏病アテトーゼ様運動からなる。運動異常の重症度は軽微(しばしば患者や家族も見落とす)~重度の障害の範囲に及ぶ。口周囲の運動は最もよくみられ、素早く捻るように突き出すような舌の動きや、噛むような側方への顎の運動、口すぼめ、しかめ面などである。指の動きや手を握るという症状もよくみられる。斜頸、頸後屈、体幹を捻るような運動、骨盤を突き出すような運動は重症例にみられる。呼吸筋のジスキネジアも報告がある。ジスキネジアはストレスによって悪化し、睡眠中に消失する。女性は男性より罹患しやすいようであり、50歳以上、脳損傷、小児、気分障害の患者も危険性が高い。
 明らかに必要とされるときのみ、そして効果の得られる最小の投与量で抗精神病薬治療を行うことにより、遅発性ジスキネジアの予防は最大限に発揮される。第二世代抗精神病薬は第一世代抗精神病薬より遅発性ジスキネジアを招く危険性が低いことが示されている。遅発性ジスキネジアは、しばしば患者が一定量の抗精神病薬を服用している間に現れるが、減量された時により出現しやすい。逆に増量で、一時的に症状が軽減することがある。遅発性ジスキネジアに単独で有効な治療法は見出されていないが、抗精神病薬の減量と第二世代抗精神病薬への変更が初期治療の戦略である。遅発性ジスキネジアの全症例の5~40%、また軽症例の50~90%が最終的に寛解する。しかし、若年患者に比べ、高齢者では寛解しにくいようである。いかなる抗精神病薬の投与も続けられない患者においては、リチウム、カルバマゼピンまたはベンゾジアゼピン系薬剤が運動障害と精神症状の両方の軽減に有効なこともある。しかし、これらの薬物は精神症状の治療に関しては抗精神病薬ほど有効ではない。


第6回 55問
4)抗精神病薬による遅発性ジスキネジアについて誤っているのはどれか、1つ選べ。
a. 睡眠中も持続する。
b. ストレスによって悪化する。
c. 抗精神病薬の減量が治療の基本である。
d. 服薬開始後6か月までに出現することは稀である。
e. 抗精神病薬を減量された時に一時的に悪化しやすい。
解答:a
 遅発性ジスキネジアは、遅れて出現する抗精神病薬の有害作用であり、治療後6か月までに出現することは稀である。すべての抗精神病薬は遅発性ジスキネジアを起こしうる。患者が抗精神病薬を摂取するほど遅発性ジスキネジアは起こりやすくなる。1年以上治療を受けている患者の約10~20%、長期入院患者の約15~20%で遅発性ジスキネジアが出現する。女性は男性より罹患しやすいようであり、50歳以上の患者、脳損傷のある患者、小児、気分障害の患者も危険性が高い。ジスキネジアは、ストレスによって悪化し、睡眠中は消失する。遅発性ジスキネジアは、おそらくドパミン受容体拮抗薬によるドパミン受容体の持続的遮断の結果、大脳基底核にあるドパミン受容体の感受性亢進が起こって生じる。
 遅発性ジスキネジアは、しばしば患者が一定量の薬物を摂取している間に現れるが、減量された時により出現しやすいようである。研究者によっては、これを離脱性ジスキネジアと呼んでいるが、遅発性ジスキネジアと離脱性ジスキネジアを鑑別するのは不可能である。遅発性ジスキネジアが認められたならば、できれば抗精神病薬の減量もしくは中止を考慮すべきである。第二世代抗精神病薬のほうが第一世代抗精神病薬よりもジスキネジアを悪化させる危険性が低い。


第7回 89問
抗精神病薬による遅発性ジスキネジアについて誤っているのはどれか、1つ選べ。
a.第二世代抗精神病薬での出現は稀である。
b.抗精神病薬の減量によっても誘発される。
c.若年患者に比べて、高齢患者で寛解しにくい。
d.抗精神病薬の服用期間が長いほど起こりやすい。
e.抗コリン薬の長期使用によって発現リスクが高まる。
解答:a
 抗精神病薬は薬理学的にドパミン遮断作用を共通の基盤として持っており、幻覚・妄想などの精神症様に対して有効性を発揮する一方、錐体外路症状などの副作用をしばしば引き起こす。
薬剤誘発性錐体外路症状は大きく分けて、急性期から見られるものと遅発性に見られるものの2つのタイプがあり、前者にはパーキンソニズム、アカシジア、ジストニアが含まれ、後者にはジスキネジアが含まれる。
×a. すべての抗精神病薬は遅発性ジスキネジアを起こしうる。第二世代抗精神病薬は、第一世代抗精神病薬に比べて、遅発性ジスキネジアを起こす危険性が低いといわれているが、稀ではない。
○b.遅発性ジスキネジアは、しばしば一定量の抗精神病薬を服用している間に出現するが、減量されたときにも出現する。これを離脱性ジスキネジアと呼ぶ。しかし、遅発性ジスキネジアと離脱性ジスキネジアを鑑別することは困難である。
○c.遅発性ジスキネジアは急速に発現し、安定化し、時には同じ薬物療法を続けていても軽快することがある。遅発性ジスキネジア全症例の5~40%、軽症例の50~90%が最終的には寛解する。しかし、若年者に比べて高齢者では寛解しにくいといわれる。
○d.長く抗精神病薬を服用するほど遅発性ジスキネジアは起こりやすくなる。1年以上治療を受けている患者の約10~20%、長期入院患者の約15~20%で出現する。
○e.抗コリン薬は抗精神病薬による錐体外路症状を軽減するが、長期的な併用で遅発性ジスキネジア発現のリスクを高めることがある。したがって、抗コリン薬の併用はできるだけ短期間にとどめ、抗精神病薬の用量調節で錐体外路症状を回避できない時のみ使用するほうがよい。


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