元々映画業界の販促活動で使われた用語だという「ゴールデンウィーク」。新幹線や航空機のチケットが高額だったりそもそも予約も困難というようなニュースを聞くに地元で映画を見るのが最も気楽に楽しめる過ごし方なのではないか…などと考えつつ地元のシネコンで『オッペンハイマー』の予約を取ったのだった。
さて、このオッペンハイマーの時代において重要なトピックがある、「赤狩り」だ。日本でもマッカーサーの指令により共産党員やそのシンパとされた人々が公職から追放されたとして有名なものだが、これは冷戦の始まりの西側諸国一般に見られるものだった。
ちなみに主にアメリカにおけるこの流れを示す「マッカーシズム」は日本でのマッカーサーとは全く別人物のジョセフ・マッカーシー上院議員(共和党)によるものである。日米におけるキーパーソンの名前が似ているため誤解してしまいがちだが、ここはぜひ押さえておきたい。
とはいえこの頃の歴史はなかなか話題に上がることも少なく、短時間でその内容を想起して映画鑑賞に備えるというのは少し難しそう。というわけでいわば「一夜漬け」でこの時代を知るうえでの基礎知識の取り繕いをするにはどうするか…というのをこの記事のテーマとしたい。
なお、この記事においては生成AIによる内容の正誤確認についてはプロンプト作成などで必要な場合を除き一旦割愛とする。一般的な注意事項ではあるが、いわゆる調べ物におけるAI活用の例に漏れず自己責任で信頼の置ける文献などにアクセスすることを強く推奨する。
それではこの映画を見るうえで重要なポイントはどこになるだろうか、早速Microsoft Copilotに訊いてみるとしよう。質問文は
「日本人の友人に映画『オッペンハイマー』を勧めるとき、知っておくと良い知識や押さえておくと良い時代背景などをいくつか提示してみてください」として国による背景の違いを意識させるようにプロンプトを作成してみよう、会話のスタイルは「より創造的に」で試して様々なアイデアを引き出す。
代表的なポイントはあらかた出てきたので、今度は「冷戦と赤狩り」にフォーカスすることにする。まずは日本国内でもレッドパージがあったことを前提として、アメリカにおけるそれについての情報を引き出す。今度のプロンプトは「それでは日本における『レッドパージ』とアメリカにおける『赤狩り』について違いがあればそれを踏まえつつ、アメリカにおける赤狩りの概要を説明してください」とする。
よく似た単語ゆえに、先の場合と同様2つの違いに着目させてのプロンプト作成を心がけたつもりだがその効果はどのようなものだろうか。先の質問「日本人の友人に映画『オッペンハイマー』を勧めるとき~」をアメリカ人に変えたらどうなるだろうか。今度のプロンプトは「それでは、アメリカ人の友人に映画『オッペンハイマー』を勧めるとき、知っておくと良い知識や押さえておくと良い時代背景などをいくつか提示してみてください」とする。
もちろん基本的な情報は概ね同じだが、項目の区切りや内容の濃淡に差異が見て取れるのが興味深いポイント。人によってはこちらの方がより興味をそそられるような人もいるのではないだろうか。
最後に少し意地悪であろう問いを尋ねてみる、これに確たる回答が出ていたらそれこそ歴史が変わっていたものであろうが…「たとえ疑惑があったにしてもオッペンハイマーほどの実力のある科学者を排斥したのは一体どうしてでしょうか、排斥を是とする立場と間違っているとする立場から論点を挙げてみてください」。
なるほど、これは掘り下げてみると面白そうだ…ということでここ掘れワンワン「オッペンハイマーが共産主義者と疑われたのにはどのような理由があったのでしょうか」。
まだ漠然としている感が否めない、もう少しクリティカルに掘り下げた回答を引き出す「オッペンハイマーの親族や友人に共産主義者が多かったとのことですが、客観的に見た場合当時のアメリカの科学者としては共産主義者とのつながりが特に強いと言えるほどだったのでしょうか」。
掘り下げてみれば更にいくらでも興味深いテーマを引き出せるだろうという結果が引き出せた。今回は比較的一般的なテーマだっただけにAIにとっても引き出しやすいものだったというのもプラスに働いたかもしれない。
ChatGPTが話題になり始めたばかりの頃はハルシネーションが注目されたものだが、Copilotの場合Web検索を併用することもあってかそのリスクも一定抑えられているように見える(もちろんWeb検索である以上その信憑性は絶対的とは言い難いが、そのレベルを求める場合にはそもそも図書館に行って然るべき文献にアクセスすべきであろう)。
ということで対話方式のAIチャットで何かのコンテンツに触れる際の背景情報の引き出し方…という観点で試してみたがなるほど確かに一夜漬けレベルとするなら十分なものが引き出せたように思う。
もちろんさらなる掘り下げ方もあるし、英語でプロンプトを出せば更に異なる角度の情報も期待できたろう。そういったテーマは今後の課題として残るが、特に「ミリしら」なジャンルにおいて短時間で基礎的な情報を引き出すとする場合昨年の今頃すらここまでの効果が期待できただろうか。
これが来年の今頃はどうなっているだろうか、そういった夢を見つつこの記事の総括としたい。