BRTに関する自分の研究紹介と雑感

こんばんは。
学生時代に書いた論文を紹介するとともに、最近見かけたBRTに関するニュースを見て思ったことをぐだぐだと書き連ねます。

私の経歴


私は、大学院で土木工学を修め、都内の建設コンサルでヘルメット被って冬に世田谷区の川の中に入って橋の点検をしたり、コンパクトシティ政策やインフラ維持管理計画を立案していました。
もともと、交通計画研究室にいたのですが、修論が以下のリンクにある論文を書いていたのもあり、道路や橋の維持管理計画や全国の国道の維持管理政策立案のお手伝いをしていました。

今は日本の交通政策に携わってますが、久しぶりにBRTに携わることになったので、思い出しがてら、論文をちょこっと絡めながらニュースについて思ったことを書きます。

BRTとは


BRTっていうのは、最近、宇都宮に新しくできたLRTつまりめっちゃ良い路面電車、をめっちゃ良いバスに変えたような感じの交通システムと思ってくれれば良いです。

BRTは厳しく定義すると小難しい話になるので、そこは国交省などのガイドラインで見ていただくとして、一言でいうと、めっちゃ人がたくさん乗れて早くて渋滞に左右されずないかっこいいバスシステムです。
日本では新潟や厚木、博多などでアコーディオンのように長いバスが走っていたり、名古屋市でもバスだけが走れる道路をもつ路線があり、それが日本ではBRTに近いものなのかなと思ってもらえればと思います。


渋滞緩和やまちづくりの一環としてBRTかLRTどちらを採用すべきかという論争がありますが、それはいろんな所で議論されているのでそちらは専門家にお任せするとして、ここでは、なかなか議論されにくい点についてお話しようと思います。

BRTは本当に安いのか、安物買いの銭失い?

よく地方の鉄道存続問題でバスに転換すれば安いと聞きます。確かにめっちゃ重い鉄道を走らせる地盤や車両を維持するのはコスト的にきついです。だから、廃止するかどうかが論点になってきた経緯があると思います。
実際に、JR東日本は、JR気仙沼線を一部だけバス転換させて、線路を剥がした跡地を道路に舗装し直してバスだけが走行する路線として運営しています。そういったコスト削減の結果?、停留所を増やしたり増便するなど便利になった側面があります。しかし、定期的に専用道路の補修工事で一般道への迂回運転がされております。(下記リンク)

https://www.jreast.co.jp/morioka/press/pdf_1496121332m.pdf

通常はバスや電車が運行終了してから始発までの夜間に工事することが多いですが、夜間の工事は夜勤での仕事となることや深夜の短い時間に終わらせないといけないため、道路工事の積算基準では通常の昼間工事よりも割高になります。実際に、近年はJR東日本などにおいて工事で運休になっても影響を受ける人数が少ないローカル線の保守工事を昼間に行ってコストを削減しています。こういった背景から、気仙沼BRTにおいても数年おきに大規模な補修工事を行っています。ここでバスか鉄道に勝る点が生かされます。
それは、近隣の一般道路に迂回して運行するので運行を中断しなくても良いことです。これは、バス転換が議論されやすい地方部においてはベターでしょう。しかし、ここで私は疑問に思いました。維持するのが大変だけどインフラの品質管理に慣れている事業者であれば、鉄道はめったに運休にならない信頼性の高いサービスを提供できます。しかし、コストばかりに目がいって安易にバス転換してしまうと、過疎地の路線であればともかく、朝夕の通勤通学は多く利用されている路線(JR西日本の山陽小野田線が議論にあがりましたhttps://yama.minato-yamaguchi.co.jp/e-yama/articles/21217
では、どうでしょうか。安く済ませたとしても、補修工事の品質管理(地盤力学はめっちゃ難しい😓)が適切でなければ、道路補修工事の繰り返しで迂回運行が頻発し、利用者はそれを想定した生活スタイルを組まなければなりません。これは、私が冒頭で紹介した自筆の論文における課題でも触れております。確かに、運営者である鉄道事業者からするとコスト削減は喫緊の課題です(第3セクターによる維持であっても、税金が投入されていることが多いため、コスト削減しなくていいとは限りません。)

とまあ、軽く課題の提案をしてみましたが、結局は、以下の2択を迫られます。
・インフラ維持に金をかけすぎて1時間に1本の運行しかできない鉄道
・安く維持できるから増便できるけど品質管理が難しく迂回運行のリスクを利用者に納得してもらわなければならないバス

おわりに


最近は、宇都宮で開業したLRTの利用が好調ということもあり、なかなか注目されない?BRTですが、まちづくりの目玉となる交通システムの導入検討においてLRTかBRTか問題は必ずと言ってもいいほど出てくるので、こんな問題もあるんじゃね?って思ったことを書いてみました。
以上、ご一読ありがとうございました。

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