Y's factory

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[詩]最初からずっと

春の荷物を待っている 背丈の程の草に隠れて 濡れた額に前髪が沿う 返らぬ言葉を待ち続けてる 干潟の岸の砂の往来 焦がれるまま揺られるままに 波間に消える小石のように たどり着く場所を決めている 春の荷物を待っている あの人の肩に触れている 寒い日向の風に打たれて また逢う日まで もう聞こえない

    • 滲む朝日を胸にしまった 夜明けの窓に虹を見ていた  もう忘れてもいいと思った きっと逢えるとふいに思った   産毛を撫でて季節が進む 散る花の色 双葉の匂い もう忘れてもいいと思った 必ず逢うと強く思った

      • いつかどこかで(再掲)

        ずっと雨が続いている 時折風が窓を叩く あなたはどうしているのだろう 濡れても気付かぬ人だから ずっと冬の町にいたい 春を待つよな顔をして あなたはどこにいるのだろう 炬燵で聞いてるboygenuis ずっと雨が続いている 気付けば霙に変わっている あなたはどこに行ったのだろう 風に巻かれる白いビニール 空を見上げて少し笑う 息を溜めて滴をはらう

        • 水面の灯り

          心の深い奥底が きっと私にはないから 謝ることで逃げてしまうの それがあなたを傷つける 空の青さも花の翳りも うわべを撫でて過ぎて来た 痛む心を知らず寄り添う あなたの心が死んでゆく 心の深い奥底が きっと私にはないから よくないことが起きそうだから 一人で生きると決めたいから 空の青さを花の翳りを あなたの視線の先に見た 露路の夕焼け 帰る椋鳥 あなたの隣りで見上げていた 夕方の風に吹かれていた

        [詩]最初からずっと

          青春

          目に映るすべてから この美しく意義ある世界から 何ひとつ学ぶこともなく あなたは生きてる 足元も照らさず ただ甘やかな上澄みを舐めて 平凡過ぎる生き方をなぜか笑って あなたは生きてる どこにもないあなたの 思いもよらぬ愚かな日々を 諦めながら 蔑みながら ただ視界の隅に私は見ている どこにもないあなたの 見たこともない浅はかな日々を 嘆くでもなく 恨むでもなく ただ心を失くし私は見ている 騙されながら 宥めながら 誰に何を謝りながら私は 生きてく

          流れ星

          19時前の空の版木に 明るい星が並んでいる 庭に投げ入れた桜の壺に 新月が揺れて滲んでゆく 愚かな人は美しい 傷つくことない魂で 旅立つ人は賢しらに 二度とは人を思わずに ただ遠ざかる流星になる ただ最小の粒になる

          桜レジデンス

          その横顔の美しいまま 黄砂に煙る街を見ていた  生きる世界が違うと知った  あなたの生き方が腑に落ちた 柳の反射 対岸の正午(ひる) 寂しさももうわからない それぞれの道を選ぶ時 やっと幸せを願うんだろう あの真心に触れるんだろう

          桜レジデンス

          彼岸

          松の葉陰に海を見下ろす   未来を知らずあなたは眠る 涙の乾く時は来る 高台の墓地へは いつかは行けなくなる 無風の空に鳥が羽ばたき 侘しさがきりもなく訪れる 貝殻になり攫われる 波音が急にあらわれる  

          夜明けの一歩

          シーズン最後のホームラン 夜更けの雨脚 花びらを踏み消えてゆく 遠い幻 心に春が来るものか 問い続けてる 呼んで宛てない悲しみを どこに捨てようと 巻き戻る時間はなく 朝は明るく 通過駅でふり仰ぐ それも幻 心に春はまだ重い 息を堪えて 呼んで呼んで呼んでみる ひそやかな名前 あの花の名前  

          夜明けの一歩

          夏の国

          どの窓も汚れて 街はいつも霞んでいた    魚のスープとライムの匂い 夕べに帰る犬の肋 またすぐ逢おうとふいに言った 送らないでと少し泣いた 夕日が遠く沈んでゆく 赤くただ赤く 見知らぬ顔で またすぐ逢おうと掠れて言った 傷つく心を攫われていた 夕日がふたりを追い越してゆく 赤くただ赤く 震えて丸く 赤くただ赤く 素知らぬ顔で

          夜景団地

          俺たちはいつも外にいて 不毛な賭けを続けている 街や建物の美しさも 理解しないで死んでゆく 野良犬よりも薄い身体で なんだよ やんのか 言ってりゃいいさ あいつのことを悪く言うなよ 兄貴のことも 親父のことも 春夏秋冬外にいて 笑われがちに生きている 生まれて死ぬまでここにいる 夜の軽さを知っている いつもの顔でここにいる 夜明けの重さを知っている

          君は一年生(再掲)

          ずっと君を待ってたよ 桜の枝を揺らして ずっと君を待ってたよ 藤棚の陰で 君と僕は似てるかな 好きなものは一緒かな 友達になれるかな なれたらいいな ずっと君を待ってたよ ひなたの歌を聞きながら ずっと君を待ってたよ 君は一年生

          君は一年生(再掲)

          春の日に

          優しい窓灯りの影絵の中に くだらない優劣の感情がある 心の中が薄くなる ガードレールにうずくまる 雨の日も風の日も ただ生きるだけ それだけでありたい 春の日に晴れの日に ただ少しだけ ほほえみながら 過ぎた日の座礁船から 潮に乾いた手紙が届く 選んだ今を強く生きてと ひび割れた窓をあたためている 雨の日も風の日も 濡れて悔いない夢があるなら 春の日に晴れの日に ただ少しだけ 光の中へ ただ少しだけ 明日を信じて

          青い花

          例えるほどもなく時が流れ 変わらず水は湧き出でくる 小川へ大河へ外海へ 青い花びら散らしながら 誰がいなくても地球は回るけど 泉を汚す者はいない方がいい  心のナイフを研いでいる また明日の米を研ぎながら 例える術もなく時は流れ 相変わらず人は嘆いている 私は星になりその頃は あの町のあたりで瞬きたい 愚かな生き様ほど照らしたい 生き急ぐ足元を宥めたい

          家族の旅

          いつかどこかで笑って会えたら いつか遠くで わかりあえずとも 若葉の滴が揺られて落ちる 果たせぬ未来がたゆたい消える いつかどこかで笑い合えたら 目を閉じ祈る 旅路の終わり 家族の終わり

          いつかどこかで

          ずっと雨が続いている 時折風が窓を叩く あなたはどうしているのだろう 濡れても気付かぬ人だから ずっと冬の町にいたい 春を待つよな顔をして あなたはどこにいるのだろう 炬燵で聞いてるboygenuis ずっと雨が続いている 気付けば霙に変わっている あなたはどこに行ったのだろう 風に巻かれる白いビニール 空を見上げて少し笑う 息を溜めて滴をはらう

          いつかどこかで