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聞くということFootwork & Network vol.24

 3月21日火曜日、春分の日、豊洲で行われたJWFA協会主催のウォーキングサッカーイベントに参加した。ウォーキングサッカーとは、走ってはいけない、思い切り蹴ってはいけない、顔の高さにボールを蹴り上げてはいけないというルールのサッカーである。この日は世界ダウン症の日ということで、「with us not for us」「私たちのためにではなく、私たちと一緒に」をテーマに誰でも参加できるウォーキングサッカーを通してダウン症について知り、考えようという企画だった。小さい子供から年配の方まで、幅広い人たちが参加した。

ウォーキングサッカーにて

 この日はウォーキングサッカーの他にも長野県中川村の物産展やヨガ、子ども向けのフットゴルフなどが同時に開催されており、それぞれ自由参加だったが、この日より前に2度ほどウォーキングサッカーを体験しすっかり面白くなっていた私は、もちろんこの日も最初からサッカーに参加していた。正直なところ、ダウン症については名前くらいしか知らなかった。
 1試合目、ゲームが始まる。参加者は10人くらいずつ3つのチームに分けられ、交代でゲームをする。この日は日本ダウン症協会からダウン症の方も何人か参加していた。私のチームのある青年(後で聞くところによると実は彼は協会のメンバーではなかったらしい。)はサッカーがとても好きで、高校ではサッカー部だったらしい。とても楽しそうにサッカーをしていた。私もつられて楽しくなる。彼がシュートを決めるたび、また上手いプレーをするたび、グータッチが飛び交う。彼の方からグータッチをしてくれて、私の口からは自然と「ナイス」という言葉が出た。体育の授業を友達とおしゃべりしてやり過ごしていた私の口から。なるほどウォーキングサッカーはすごい。体全体を使った言葉だけでないコミュニケーションを引き出してくれる。

ダウン症について知りたい

 試合と試合の間に設けられていた紙芝居や切り絵のコーナーの時間を使って、私は思い切って日本ダウン症協会の水戸川さんに話しかけた。ウォーキングサッカーを通して交流できた青年によって、私はもっとダウン症のことを知りたいと思った。今すぐ知らなければいけない気がした。もっと仲良くなれたらと思った。
 ダウン症のイメージカラーである黄色と青に身を包んだ水戸川さんは、私に優しくダウン症について教えてくれた。ダウン症のダウンとはアップダウンのダウンじゃなくて、ダウン症を見つけたダウン博士から取っていること、ダウン症とは23対ある染色体の21番目が3本になることで起こること(ここから3/21がダウン症の日になった)、おすすめの「あいちゃんのひみつ」という絵本も見せてくれた。
 水戸川さんは協会のパンフレットの沢山の子どもたちの笑顔が載っている写真を指して、ダウン症の子は天使だと良く言われるが、天使などと一括りにできるものではない、同じ笑顔に見えるかもしれないけれどみんなそれぞれ違うと目を見て教えてくれた。喋るのが苦手な子もいれば文字を書くのが苦手な子もいる、でも真剣に話を聞いて心から理解すればちゃんと通じるのだと。私が日本語を勉強中の留学生と話す時の真剣さと似ている気がすると言うと、そうかもしれないと笑ってくれた。

聞くということ

 私はあの感じが好きだ。次に何を言うんだろう、今言ったことはどういう意味だろう、今までの話とのつながりは何だろう。聞きながら頭をフル回転させる。耳も目も常に全集中で、ちょっとでも気を抜くとすぐに話がつかめなくなったり勘違いが大量に生まれたりしてしまう。相手が懸命に話している。こちらも懸命に聞いている。その関係が好きだ。他に何も挟む余地はない。知ってる話だろうと高を括って聞くのは簡単でラクだ。でもそれだと自分の知っている話しか耳に入ってこない。相手が伝えたいことではなく、自分が聞きたいことしか聞くことができない。イベント後のご飯会で別のダウン症の青年とも話した。アニーが好きでミュージカルを見ると元気が出るのだそうだ。全ての感覚を使ったこの全身で「聞く」姿勢をもっといろんな人へ向けられるようになりたい。

#melc2023
#FandN

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