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読書記録『あかずの扉の鍵貸します』

あかずの間をひとつ借りれるとしたら、貴方はそこに何を入れますか?



主人公 水城朔実は親代わりである、安川不二代から「あかずの間がほしい」と頼まれることから、物語が始まる。
朔実は不二代から、建築士の幻堂風彦を紹介され、「あかずの間」を貸してもらうよう依頼する。
不二代はある屋敷にあるという「あかずの間」にある、「あるもの」もそこに入れたいという。
病床に伏す不二代の最期の願いを叶えるため、朔実は幻堂と共に彼女の「あかずの間」の秘密に迫っていく…。

著者の作品を読むのは初めてであったが、非常に読みやすい文章であった。
あまり読書に慣れていない方にも易しいのではないかと思う。
全5章で構成されており、水城朔実と幻堂風彦、また彼の住まいである「まぼろし堂」を舞台に展開する。
朔実は天涯孤独であるが、その姿に悲壮感は無い。
自分と周囲を真っ直ぐに捉える、非常に素直な若者である。
物語の象徴となるのは「金木犀」。
物語を通してその香りが漂っている。
朔実にとっては幸福を、風彦にとっては暗闇を象徴する、「金木犀」。
読了後は、暖かい香りとなって読者に残るであろう。

あかずの扉に入れるものは、わたしには後ろ暗いものだとは思えません。
あかずの扉は、開くべきときに開かれるんです。

五章 木犀の香に眠る


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