H26 SM PM2-1 ITサービスの移行について


設問ア:移行の対象のITサービスの概要と移行計画の策定の考慮すべき点


 Z社は、自社開発のネットワーク機器を開発、販売する通信事業者である。Z社では、Z社の商品及びネットワークに関わるサポートを実施するサポートデスク対応をZ社技術部にて行っている。
 Z社技術部のサポートデスク対応は、電話やEメールを通じてサービス要求を受付け、サポートDBに優先度や対応種類などを設定し起票(以下、これらの業務を受付け作業と呼ぶ)する。受付作業から、そのままZ社技術部のサポート課の人員によりサービス要求に対する対応を実施する。
 Z社のサポートデスク対応は、幅広い対応内容が好評でZ社のコアコンピタンスのうちの一つとなっている。
 Z社では、サービス対応の効率化及び高度化を図るため、受付作業を分離し、子会社であるY社に移行することとなった。
 この移行について、移行実施計画が策定になり、Z社及びY社の要員が招集された。私は、Z社技術部に所属するITサービスマネージャとして移行計画を主導する立場として参加することとなった。
 私は、移行計画の策定にあたって、Z社のサポート対応の受入基準に従って検証する方法を実施することとした。
 この内、運用体制について特に重要と考えた。これは、受付業務を移行を実施することによって、複数のリスクが顕在化する恐れがあるためである。一つは、Y社の受付作業の不慣れさによって、サポート受付時の電話入電時にサポート窓口に繋がらない事態のような呼損率の悪化がリスクである。もう一つはZ社側のサポート業務の手順の変更により、サポート受付から対応までの時間がかかり対応完了時間が遅延するリスクである。
 いずれも、Z社のサポート対応の品質が劣化し、企業価値を低める要因となりかねないため、私はこの受入基準に注意し、移行計画を策定することとした。
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設問イ:考慮すべき点についての協議と、決定した対応策、決定した理由、及び対応策が確実に実施されるための工夫


 私は、この移行計画について、Z社及びY社の緊密な協力体制が必要と考え、両社の意見や進捗の共有をする為の会議を開催した。 
私は、Z社の要員とY社の要員が参加した会議において、設問アにおけるリスク顕在化に対する対応策を協議した。
 Y社におけるリスクは、Y社のサポート対応者が受付業務に不慣れなためOJT(On the Job Training)のみで対応することで顕在化すると考えられる。 
 この為、十分なOff-JT(Off the Job Training)を実施する対応策とした。
 Off-JTに関して、私はZ社が新人向けに利用している教育手順のうち、既存の受付業務の内容及びY社による受付業務で新規に発生する作業工程をまとめた教育手順をまとめることをZ社要員に指示した。
 また、指導役として、サポート業務について対応歴が長いZ社のサポート対応者数人を一時的にY社に出向させ、Off-JTの内容が徹底されるよう指導し、ロールプレイングによる研修などで対応内容の確認をするように指示した。
 Z社によるリスクは、サポート業務の対応手順の変更の周知徹底がされずにより発生する。
 私は、対応手順の変更を周知する為、動画を利用したEラーニングを実施することとした。これは、Z社技術部においては、サポート受付業務の従来の作業手順から受付作業を除くだけなため、情報発信が十分であれば、リスクが顕在化する可能性は抑えられると考えたためである。
 また、受付から電話対応までの時間(以下、完了時間という)を管理指標として策定し、管理することとした。これは、対応手順の変更、具体的にはY社によるサポート受付からZ社へのサポート対応移行(以下、対応移行という)がスムーズに行われれば、現状の数値と変わらない若しくは改善が見られることが期待される。しかし、数値が悪くなれば、対応移行に不備がありリスクが顕在化する可能性があると判断できる。
 私は、この完了時間について、Z社技術部の要員に対して管理するよう指示した。また、Y社の要員にもこの管理指標についてをY社作業員に指導するよう指示した。
 私は、以上の点についてを重点的に検討し、対応策を決定した。これら移行計画をまとめ、実行した。
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設問ウ:ITサービスの移行後のレビュー結果とその活用について


 私は、再度Z社の要員とY社の要員を招集し、レビューを実施することとした。 
 私が主導した受付業務の移行計画は、計画の沿って支障なく移行が完遂された。設問アで述べた二点のリスクも顕在化することはなく、設問イで述べた管理指標である完了時間についても、一日の平均対応完了時間が従来は30分から25分に短縮できた点からも問題がなかったと評価できる。
 Z社の要員からは、今回のケースから対応の変更についての周知の方法について、その内容によって方法や回数を変える活用方法が提案された。
 従来の情報発信では、要員が集まる会議によって決定し、それを作業員に伝える口頭伝達がメインであった。今回のケースのようなZ社サポート対応の軽微な変化の場合では、動画配信により、情報発信者及び受信者の負担が減ることが可能であった。この場合とは逆に、重要な変更の場合、様々な情報発信を活用することで周知徹底が図ることができることが期待される。
 Y社要員からは、今回のケースから、新人教育に関するノウハウを活用する提案がされた。
 今後も、Y社ではZ社の業務委託や新規の作業内容が増加することが予想される。今回のZ社のサポート対応者によるロールプレイングやOff‐JTは十分な効果があることが確認された。この新人教育に関するノウハウは別の作業内容にも応用が可能と考えられる。
 この提案を受け、私は、これらのレビュー結果を組織のナレッジとして蓄積し、共有することとし、今後も活用可能であると考えた。

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