H27 SM 午後1-2 サービスデスク


概要図


 製品製造会社のF社では、工場の部品生産を管理する生産管理システム、全国の営業所からの注文受付と発送指示を行う受注発送システム、及び業績管理を行う会計システムを運用している。情報システム部のサービスデスクでは、これらのシステムに関するサービス利用部門からの問合せにオペレータが電話で対応している。

サービスデスクの概要

 サービス提供時間帯には、統括者(以下、スーパバイザという)一名とオペレータ数名が在席し、問合せに対応している。
 情報システム部は、サービスデスクに関わるSLAをサービス利用部門と合意している。その一部を以下に示す。
・サービス提供時間帯:営業日の9-17時まで
・回答完了時間:優先度高は3時間以内、優先度低は6時間以内
・呼損率:5%以下
 ITサービスマネージャのT氏は、情報システム部の管理課に所属し、SLAの達成状況の管理をしている。また、管理課は、SLAの達成状況をサービス報告の一部としてサービス利用部門に定期的に報告している。

問合せ対応手順 

 サービスデスクでは、問合せを含むサービス要求に関する対応手順を以下のように文書化している。
・記録:利用者からの問合せを受け付け、問合せ台帳に記録する
・優先順位の割当て:業務の重要性に合わせてシステムごとに優先度を割り当てる。生産管理システム及び受注発送システムの優先度を高、会計システムの優先度を低としている。
・分類:問い合わせの内容を、システムごとに決められたカテゴリに分ける
・記録の更新:問い合わせの内容、割り当てた優先度、及び分類したカテゴリの内容を問合せ台帳を更新する。
・段階的取り扱い:サービスデスク内で解決できない問い合わせは、システム保守課に回答期限を定めて調査を依頼する。依頼されたシステム保守課では、専門的技能及び経験を基に対処方法を特定し、サービスデスクに回答する
・対応手順書又はシステム保守課からの調査の回答を基に、利用者の問合せに回答する
・終了:回答内容などを記録を更新し、終了する。
 問合せの発生時の対応フローは以下の通りである。

・サービスデスク内で解決できない場合(段階的取り扱いを行う場合)は、対処方法を後で連絡する旨を伝え(一次回答)、一旦電話を切り、システム保守課からの調査の回答を得た後に、対処方法を回答する(二次回答)。
・サービスデスク内で解決できる場合(段階的取り扱いを行わない場合)は、通常、問合せに対して回答は一回で終了する。ただし、サービスデスクで対応手順書の参照に時間が掛かる場合は、段階的取り扱いと同様に、一次回答、二次回答の手順を取る。

サービス窓口の計算

 利用者の問合せに対応するサービス窓口の数は、オペレータの席数で決まる。必要なオペレータ席数は、呼量と呼損率の関係から以下の表を参照して求める。

(1)呼量:呼量=平均利用時間×平均個数
 ここで、平均利用時間(単位:時間)とは、問合せ及び回答で利用する一回当たりの通話時間である。また、平均個数とは、一時間当たりの電話受付数である。二次回答が必要になった場合には、二回目以降の通話も呼数に加えて計算する。
(2)オペレータ席数
 今期のオペレータ席数は、次の手順で求める。
①平均利用時間は、今までの実績から5分とする。
②今期の一時間当たりの平均問合せ件数の見通しは、以下のとおりである。

③呼量の計算に基づいて、①と②から呼量を求める。ただし、二次回答を必要とする問合せがあることから、平均問合せ件数の1.5倍を平均呼数とする。したがって、①と②の値から呼量は1.5アーランとなる。
 なお、サービスデスク全体のオペレータの要員数は、要員の勤務体制、稼働率などを考慮して算出している。

生産管理システムの更新

 生産管理システムは今期末に更新が予定されていて、来期の問合せ件数が増加することが予測された。T氏はサービス利用部門と調整し、生産システムの「来期の平均問合せ件数の見通し」を8と見積もった。また、来期からはSLAで呼損率の目標値が3%以下に変更される。
 よって、来期の呼量は(問1-1:生産システムの増加分の4を追加した平均問合16に二次回答分1.5を掛けて、平均利用時間5分をさらに掛けて、単位:時間に合わせるために60で割って、答えは2アーラン・(12+4)×1.5×5÷60=2)
 また、呼損率を呼損率早見表の5%ではなく3%の列を参照して、2アーランは1.88と2.54の間であるから、(問1-2:席数は6)となる。

段階的取り扱い作業の調査

 サービスデスクは、管理課と情報システム部内の支援協定である運用レベル合意書を締結し、SLAの目標値を達成するための活動を行っている。活動の一環として、スーパバイザは問合せ対応の進捗を管理している。例えば、段階的取り扱いが必要な場合に、回答期限を過ぎたときは、システム保守課に対処方法の回答を催促している。
 T氏はサービス報告の活動として、サービスレベル項目の回答完了時間の遵守状況を調査している。サービス報告の対象となっている全ての問合せの回答完了時間は、SLAの目標値を達成していた。ただし、サービスデスク内で解決した場合は、目標値を大きく達成している状態であったのに対し、段階的取り扱いを行った場合は、もう少しで目標値の達成が難しい状態であった。そこで、T氏がシステム保守課の作業を調べたところ、システム保守課の作業を調べたところ、システム保守課では生産管理システムなどの業務ソフトウェアの保守作業は、主要業務として計画的に実施しているが、サービスデスクからの依頼に基づく調査作業は、支援業務として副次的に取り扱われていることが分かった。T氏は(問2-1:システム保守課におけるサービスデスクから依頼された問い合わせの優先度の扱い or システム保守課における主要業務と支援業務の割合 or 回答期限の遵守率と遵守できない理由)を調査した。
 その後、T氏は情報システム部内で調整を行い、システム保守課と管理課との間で(問2-2:サービスデスクから依頼された調査の回答期限に対するサービス目標値の合意事項 or サービス目標値として、回答期限の遵守率100%を設定)した運用レベル合意書を締結し、運用の確実性を向上しようと考えた。

サービス提供時間帯拡大の要望

 一部のサービス利用部門から、サービスデスクのサービス提供時間帯の拡大を要望された。要望内容は以下のとおりである。
①サービス提供時間を二時間拡大し、9-19時までとしてほしい。
②サービス利用部門が出勤する休日も対応して欲しい。
 現在のオペレータ要員体制ではサービス提供時間帯を拡大できないので、よくある問合せとその解決策をFAQとして整備し、要望があった利用部門に提供した。
 T氏は今回の対策の効果をアンケートによって確認した。FAQの利用は、サービス利用者の一部に限られていたが、FAQは、ある程度有効に機能していることが分かった。また、T氏は、今後FAQを社内のWEBに公開することによって、サービスデスクに関わる利点(問3:サービス利用部門にFAQの利用を推奨することによって、サービスデスクが扱う問合せ件数が減少する or サービス利用部門にFAQの利用を推奨することによって、利用者自身が要求解決を早期に実現する)ことができると考えた。

顧客満足度の調査

 情報システム部では、サービスデスクの利用者を対象に、顧客満足度の調査を行っている。T氏は調査内容をサービス報告の一部としてサービス利用部門に報告している。 T氏が、今月の調査内容を分析したところ、顧客満足度調査の回答の中に複数あった次のコメントに注目した。
・サービスデスクの回答に従って操作しても解決できず、再度問い合わせることになった。
 そこで、T氏は、サービス要求に関する対応手順の終了項目の(問4:利用者が回答に基づき対処を行い、問合せが解決したことを確認する)を実行しているか調査をすることにした。








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