H27 SM 午後1問3⇒論文習作

E社は、中堅の化学薬品製造会社である。E社では、自社工場で製造した薬品を、取引先の小売店に販売している。生産部が生産管理業務を行い、営業部が販売管理業務を行っている。情報システム部は自社データセンターで生産管理システムと販売管理システムを運用している。
生産管理システムは、生産部が自社工場の端末を用いて捜査する。生産管理システムの稼働時間は6時から翌日の4時までとなっている。
販売管理システムは、営業部と小売店が利用する。小売店へは販売サービスとしてインターネット経由で提供されており、情報システム部は、販売サービスのSLAを営業部と合意している。SLAでは可用性に対するサービス時間を24時間365日(計画停止を除く)、性能に対するオンライン処理の性能を1分間に30件の注文を処理としている。
また、情報システム部は、販売サービスの利用に関する小売店からの問い合わせに対応するために、毎日9時から18時までサービスデスクを開設している。
以下が生産管理システムと販売管理システムの概要である。

生産管理システム
・工場の端末から入力された販売実績をオンライン処理し、生産管理情報を作成する
・毎日3時、9時、15時及び21時にバッチ処理を自動起動し、生産管理情報をE社データセンター内の販売管理サーバーに送信する。バッチ処理の対象は、該当するバッチ処理直前の6時間で作成された生産管理情報である。バッチ処理時間は10分以内である。
・販売管理サーバーから注文情報を受信したときは、バッチ処理が自動的に起動される。バッチ処理では、注文情報を工場の生産計画に反映させる。
・工場では端末を利用して、生産状況を確認する。

販売管理システム
・小売店からの注文をオンライン処理し、注文情報を作成する
・生産管理サーバーから生産実績情報を受信したときは、バッチ処理が自動的に起動される。バッチ処理では、在庫情報を更新する。
・毎日2時、8時、14時及び20時にバッチ処理を自動起動し、注文情報を生産管理サーバーに送信する。バッチ処理の対象は、該当するバッチ処理直前の6時間で作成された注文情報である。バッチ処理時間は10分である。
・営業部では端末を利用して商品情報(新商品登録、価格改定など)を更新する。

システム移行の概要
E社では、構成機器の老朽化に伴い、生産管理サーバーと販売管理サーバーを再構築することになった。
システムの移行計画は、情報システム部の私が作成することとなった。データセンター内にそれぞれ新サーバーを構築して、両システムを別々に移行させる。また、営業部からの要求を受けて、情報システム部の開発チームが販売管理システムの機能改善を行うこととなった。この時、移行後の稼働環境に使用する新サーバーを機能改善の開発環境として利用する。
私は、社内だけで利用している生産管理システムを最初に移行し、その後小売店が利用している販売管理システムを移行することにした。生産管理システムの移行は前月に完了し、現在は正常に稼働している。

販売管理システムの移行計画
私は、販売管理システムの移行計画を検討し、移行日は、業務の繁忙時期を避けて設定した。また、移行作業時間として3時間必要なので、移行日の1時から4時まで販売管理システムを停止する移行計画を策定した。私は営業部に移行計画を提示し、了承を得た。
販売管理システムの機能改善は、開発チームによって予定通り完了した。そこで、私は移行作業の内容と移行作業時間について検討し、詳細計画を作成した。移行作業では、販売管理システムの停止中に、移行対象情報をバックアップする必要がある。また、移行作業中に、生産管理システムと情報の連携を行うバッチ処理が必要である。これらの点を考慮し、以下の作業スケジュールを作成した。
現販売管理システムでの作業
注文のオンライン処理終了・バッチ処理の自動起動を停止⇒問一:前日20時から作成されている注文情報を生産管理システムに送信or販売管理システムの通常の運用で2時に開始しているバッチ処理を実施⇒移行対象情報のバックアップ
新販売管理システムでの作業
バックアップデータを復元⇒生産管理システムから取得した生産実績情報をバッチ処理で反映⇒移行確認試験
移行確認試験の結果の可否によって切り戻しを実施

システムの移行は情報システム部が展開チームを編成して実施する。展開チームには機能改善を行った開発チームの要員も参加する。移行後は展開チームが初期サポートを行う。初期サポート活動ではサービスのパフォーマンスデータを収集し、サービスの正常性を検証する。また、初期サポート活動期間中、展開チームはサービスの正常性を検証する。また、初期サポート活動中、展開チームはサービスの正常化に役立つよう改善を実施して問題を解決する。
既に移行を完了した生産管理システムでは、移行後初日から5日間は、1日あたりに発生するインシデント数が移行前の1日あたりに発生するインシデント数の平均値よりも多く、6日以降は移行前のインシデント数と同じ程度になった。そこで、私は、生産管理システムの状況を参考にして、販売管理システムの初期サポート期間を移行後5日間とした。
なお、展開チームは、移行後に想定されるよくある問い合わせとその回答をFAQとして事前に作成し、サービスデスクに引き継ぐ。

初期サポート活動の確認項目
私は、初期サポート活動の確認項目について検討した。その結果、初期サポート活動期間中の販売管理活動の正常性に関する確認項目を、次のように設定した。
①販売管理システムが正常に稼働し、異常を示すエラーメッセージなどが出力されていない
②インターネットからの注文は、SLAのサービス性能の目標値である1分間に30件の注文を処理できる
③問2:注文情報を販売管理サーバーから生産管理サーバーに正常に送信できている

販売管理システムの移行計画の承認
私が、情報システム部長に移行計画を提示したところ“提示されたスケジュール案では、計画通りに作業が進まなかった場合問3‐1:移行結果が不可と判定され切り戻しを行う場合に、サービス開始時間が遅れるor移行結果が不可
と判定され切り戻しを行う場合に、SLAを満たさなくなる”ことを指摘された。この為、問3‐2:現販売管理システムにも生産実績情報を反映させておく 改善策を反映させ、移行の準備が整ったことを報告し、承認を得た。

販売管理システムの移行
移行日を迎え、展開チームは移行計画に基づいて販売管理システムの移行を実施した。移行結果は「可」と判定され、予定通り新販売管理システムではオンライン処理が開始された。
移行後5日間は、販売管理システムの利用方法・機能に関するインシデントが発生した。プログラムの修正が必要な問題など、期間を掛けて問題の対策を行う必要があるインシデントも発生したが、展開チームは、暫定的な回避策を作成してインシデントに対応した。利用者からの問い合わせに対しては
、サービスデスクから依頼を受けて展開チームが回答した。
展開チームは、移行計画に従って、移行後5日でサポート活動を終了する予定であった。しかし、一日あたりに発生するインシデント数が移行前の一日あたりに発生するインシデント平均数よりも多い状態が続いている為、問4-1:初期サポート活動の終了時期は、インシデントの発生状況を加味して判断する こととした。
また、事前に引き継いだFAQだけではサポートデスクで対応できない問い合わせが度々発生している状況であることから、問4-2:展開チームが初期サポートで実施した回避策をFAQに反映し、整備 することとした。


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