H30 午後2-2 ITサービスの運用チームにおける改善の取組みについて

設問ア:携わったITサービスの概要と、運用チームの構成、及び運用チームの課題とその根拠について


 Z社は、自社開発のネットワーク機器を販売する通信機器事業者である。Z社の技術部は、自社開発のネットワーク機器を中心として、運用や保全対応と保守サービスを実施している。Z社技術部は、受付及び簡易的な対応をするサポートデスク課とサポートデスク課が対応出来ない内容や、高難易度の対応をする技術課が存在する。技術課は、サポートデスク課のエスカレーション先として機能し、社用車を利用し外勤作業が主である。
 サポートデスク課の中に、技術課の対応の補助作業を専門にする外勤ヘルプチームが存在する。これは外勤作業の訪問前に情報を整理したり、対応前の確認事項などをまとめるなど、サポートデスク課と技術課の中間に位置するような位置づけである。
 その構成は、統括者が一名と、サポートデスク課在席5年以上のベテラン2名と、在席3年以上の中堅が2名である。
 先日、サポートセンター課の業務拡大に伴い、外勤ヘルプチームの再編が行われた。その結果、統括者一名は変更がなく、ベテランは一名、中堅者が1名、そして在席一年未満の新人が5名追加された。
 ベテラン及び中堅者の構成が半数になり、サービス品質の維持が危ぶまれたが、人員は増加していることから問題がないと判断した結果だったが、運用開始から一か月後、利用者である技術部から”対応が以前よりも遅くなっている”という内容の苦情が相次いだ。
 技術部サポート課課長は事態を重く見て、同じく技術部サポート課に所属するITサービスマネージャの私に、外勤ヘルプチームの課題を明確にした上で改善に取り組むよう要請した。
 私は、課題の明確化のために、現状を、外勤ヘルプチームの対応時間(以下、対応時間という)の比較によって確認した。
 対応時間は以前が平均で15分であったが、現在は30分であった。
 私は、この対応時間の短縮を課題とした。
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設問イ:課題を達成するための、改善の取組と課題に対して、設定した目標、運用チームの力を結集するために工夫した点について

 まず、私は、課題である対応時間の短縮に対して、目標を設定することとした。目標設定については、達成可能であること、測定可能であることを重視した。測定可能性は時間を目標値とすれば問題がない。達成可能であることは、外勤ヘルプチームの編成の変更が、ベテラン、中堅者が半数になり新人が編入したことから、元の値である15分ではなく20分と設定した。
 次に、改善の取組みを策定するために、私と外勤ヘルプチームのメンバー全員で会議を開催することした。これは、課題を明示化することでチームメンバーの議論を促して取組みを主体的に考え、動機付けを行うためである。
 私はここで、良い改善の取組みの策定と、より改善に意欲的に取り組むことができるよう、できるだけ上意下達のようなトップダウンの会議をせず、新人の意見を取り入れることが可能なように、全員が会議に参加できるようなボトムアップな会議であることを心掛けた。
 新人からは、対応が長期化するのは、対応が不慣れなので判断がつかない際に、統括者やベテラン(以下、上長という)に判断を仰ぐべきだが、上長も同様に対応している場合が多くあることが指摘された。
 以前は、ベテラン、中堅者は自身の判断で対応が可能だったため、判断は各々裁量で対応可能だったが、現状では新人の判断をサポートする必要が確認された。
 また、対応の際に、作業が不慣れなため、対応時間を計る余裕がない、という意見もあった。
 これについては、ある程度の時間が経った場合、上長に通知が入るように対応業務を整備し、対応の引継ぎや対応のサポートなどが可能なようにすることとした。
 以上から、会議では、上長は以前のように自身の対応を主体とするのではく、新人の対応のサポートを主体とするような、現状のチームの編成及び特性に合わせた改善の取組みが有効であると検討された。
 そして、私は、この取り組みの達成状況を”見える化”して、進捗の確認を適宜行い改善に意欲的に取り組めるようにする必要と考えた。
 これについて、日単位で対応時間を集計し、サポートデスク課が所有するデジタルサイネージに表示することとした。

設問ウ:改善の取組みの結果はどうであったか。目標の達成状況、及び取組の評価について、良かった点、悪かった点について

 私は、会議から一か月経って、改善の取組のレビューを実施した。
 対応時間は、21分であった。この結果は、目標値に届かなかったが、改善効果が見られたため、継続して実施していくことで目標達成は可能と思われるため、目標設定については無理がなかったと考えられる。
 また、取組の評価についてもレビューをした。
 まず、良かった点であるが、会議において目標の達成のために上長が新人のサポートを重点的に回ることで、新しい編成上の特性である”人員の増加”を活かせたことであると考えられる。これは、対応可能な件数が増加しているので、今回の課題である対応時間の減少がさらに進めば、外勤ヘルプ対応そのもののサービスの質が向上できるものと思われる。
 また、会議においては新人の意見を積極的に取り入れることで、管理レベルではなく運用レベルの問題点の発見ができた。同時に、新人の不満や不安も取り除くことが可能であった。
 そして、悪かった点は、以下の二点である。
 一つ目は、上長が対応ではなく新人のサポートに回ったことで、運用レベルでのサービスの品質が低下したことである。
 これについては、新人のOJT教育を整備するなど、補完的な対応が必要と思われる。
 次に、動機付けにおいて、設置したデジタルサイネージの表示する対応時間が、対応時間の平均を表示していたために、例外的に長期対応することになった件を含めてしまったために数値が乱れてしまった点である。
 これについては、平均化する数値に上限を定め、より実態に近い形で対応時間の現状が確認できるようにすることで対応することとした。
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