H29 SM 午後2-2 継続的改善によるITサービスの向上について

設問ア:携わったITサービスの概要と特に重要と考えたサービス品質とその目標及び目標値について

 Z社は法人向けにOA機器を販売し、その故障対応や運用支援を一括で行う通信機器事業者である。Z社技術部は、販売した機器に関わるインシデント対応を自社サポート課が電話などの窓口対応を行っている。受付から電話誘導で対応可能な場合、そのままサポート対応を行うが、対応ができない場合は訪問作業員を手配し、現地にてインシデント対応を実施する。
 Z社技術部は、これらのインシデント対応の管理、具体的には、繰り返されるインシデントの対応手順をまとめたり、インシデントに対するいくつかの指標を管理する、管理課が存在する。私は技術部管理課に所属するITサービスマネージャである。
 Z社技術部では、ITサービスの品質向上を目的として、定期的に顧客にアンケートを実施している。管理課では、このアンケートの内容を定期的に調査し、サービス品質向上のために利用している。
 このアンケートの中で、先日「何度も訪問しているが改善しない」という内容があった。このインシデント対応について、詳細に確認したところ、複数回対応はしたものの、対応は完了していること、また高難度な内容であったことが判明した。
 技術部サポート課課長は、複数回訪問を要するインシデント対応(以下、複数回対応という)が、ITサービスの品質、特に顧客満足度の低下といった悪影響を与えていると判断し、改善が必要と考え、私に対応を依頼した。
 私は、技術部サポート課において、訪問作業員の複数回対応の回数について何らかの対応策が必要と考え、この回数の減少の改善活動を取り組むこととなった。
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設問イ:サービス品質の目標値を達成するために立案した方策について、管理指標と方策立案時の考慮点について

 まず、私は、現状のサービス品質を把握する必要があると考えた。Z社のインシデント対応では、受付から完了までをインシデント管理システムに記録している。インシデント管理システムはZ社情報システム部が管理している為、私は情報システム部に依頼し、三か月以内の複数回対応のデータを入手し分析することとした。
 分析の結果、2回の対応で完了しているものが大半で、これら2回以内の対応は長期化することがなかった。しかし、3回以上の訪問を要する対応は長期化する傾向が強いことが判明した。
 私は、この3回以上の訪問で完了できなかった案件(以下、未完了案件という)の削減を目標とした。また、目標値については、未完了案件は長期化する傾向があることと、対応回数にバラつきがあることから、件数ではなく初回の対応からの経過時間(以下、完了時間という)の改善を図ることとした。ここで、一か月の平均のインシデント対応が1000件あり、この内50件が未完了案件であった。この未完了案件の完了時間は平均で二週間であった。私はこの完了時間を平均10日にすることを目標値とした。
 次に私は、この目標値達成のための方策を立案することとした。
 私は、Z社技術部サポート課及び管理課の要員を収集し、この方策立案の会議を開催した。
 この結果、訪問作業員のサポート課課長からは、未完了案件の内容は概ね高難度であり、技術が未熟な訪問作業員が対応に苦慮していることが報告された。この為、私は管理課要員に指示し、管理課の中でそれぞれ専門の知見を持つもの(以下、専門対応者という)が、対応のフォローに入ることを方策とした。 
 さらに、会議において管理指標を検討した結果、現状の未完了件数が月平均50件であるため、40件を超えないよう維持することとした。期間についても同様に検討し、初回の推移を確認するために、一か月を仮の期間として実施することとした。
 また、私が考慮した点は、訪問作業員及び上長とフォローに入る専門対応者が未完了案件の経緯や進捗確認を行う場が存在しないことである。この点を無視して、方策を開始すると、情報の共有に時間がかかり、報告作業が増え、また十分な効果が期待できない可能性がある。
 私は、Z社で自社開発したチャットツールを利用することとした。このチャット内のグループの報告(以下、グループチャットという)に情報を展開することで上記の情報共有の問題が解決できると考えた。
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設問ウ:サービス品質の目標達成に向けた改善活動の振り返り、評価した結果を次の取組計画にどのように生かし、継続的改善活動を行ったかについて

 方策を開始して一か月後、私は改善効果について確認するために、サービス品質の目標値の達成状況と管理指標を確認した。
 結果はサービス品質の目標値である完了時間は12日、管理指標は未完了の平均件数は45件であった。
 どちらも改善傾向は見られたものの、目標に達しなかった。私は、今後もこの方策の活動を振り返り、定期的に評価した上で目標達成に向けての活動を見直し、次の取組み計画を策定し、継続的に改善に取り組む必要があると考え、再度Z社技術部サポート課及び管理課の要員を収集し、方策改善の会議を開催した。
 この結果、技術部サポート課からは高難度の未対応案件を専門者が積極的に携わることで未完了案件の早期解決が図られたことが多かった、という好意的な意見があった。しかし、専門者のフォローがどのタイミングで、また訪問対応者から依頼するか専門者から未対応にコミットするか、が案件によってバラつきがある、という意見があった。
 私は、このフォローについては、明確にルールを定義する必要があると判断し、この会議においてルールを設定した。
 また、チャットツールの利用についても、情報共有について大いに利便性があることが確認できたが、周知の徹底が図られず、いくつかの未完了案件ではグループチャットが作成されなかったり、作成が遅れることがあった。
 私は、このグループチャットについてもルールの設定が必要と判断し、同様にルールを設定した。
 私は、新たに未対応完了ルールとグループチャットルールの遵守状況も確認する必要があると考えた。これに対し、仮に設定していた一か月の振り返り期間が情報収集に十分有効な期間であると考え、また振り返りの要員は今回の会議のメンバーが適任と考え、一か月後に同様の会議を開くことを検討した。
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