R4 SM PM2-2 ITサービスの運用品質について


設問ア:携わったITサービスの概要と、運用チームの構成、及びITサービスの運用品質の改善目標とその設定根拠


1.概要
 Z社は、自社開発のネットワーク機器を販売する通信機器事業者である。Z社は自社製品、およびネットワークやPCの運用やインシデント対応などのサポート(以下、これらをサービス要求という)のサービスデスクを技術部にて実施している。
 このZ社のサービス要求から解決までをワンストップで実施し、Z社の中でも高い評価を得て、Z社のコアコンピタンスの一つとなっている。
 Z社技術部のサービスデスクは、20のチームから構成されている。構成メンバーは、スーパーバイザと呼ばれる構成メンバーへの指示などを実施するリーダー(以下、SVという)が一名、業務歴が一年以上の対応者(以下、中堅者という)が2~3名、業務歴一年以下の対応者(以下、新人という)が1~2名の構成である。
2. 改善目標 
 本年度、Z社の業務拡大に伴い、サービスデスクの人員も増加することとなった。具体的には、20のチームの構成メンバーにそれぞれ、新人が1~2名増員されることとなった。
 増員後の一か月が経過したある日、対応後に実施しているアンケートの内容にて、サービス要求から対応完了までの対応時間(以下、対応時間という)が長い、という内容のアンケートが増加した。
 Z社技術部部長は事態を重く見、Z社技術部のITサービスマネージャである私に、調査を依頼した。
 私は、直近一か月の対応時間と前年度を比較した。結果、対応時間の平均は前年度が45分であったが、直近一か月では60分であった。
 私の報告を受けたZ社技術部部長は、私にこの対応時間の遅延(以下、対応問題という)についての改善を依頼した。
 私は、対応問題の改善目標について検討し、従来の45分としこれを半年で達成を目標とした。
これは、新人の増加についての問題が改善されれば、十分に達成可能と考えたからである。

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設問イ:改善目標を達成するための方策について


1. 改善目標を達成するための方策
 私は、改善目標について、上意下達の伝達だけでなく、ボトムアップの意見が必要と考えた。また、取り組みの意味合いについて粒度が細かい伝達が必要と考え、SVを招集し対応問題についての意見を聴収した。
 以下が、聴収した内容である。
 ・ベテランの対応は問題ない。
 ・新人の対応は、今回増員されたメンバーも含めて、対応に時間が掛かるが、サービス要求に難易度が高いものがあった場合、ベテランへの引継ぎ(以下、機能的エスカレーションという)が行われ対応時間が長くなる。
 ・新人は機能的エスカレーションが行われない場合でも、SV及びベテランへの確認があり、SV及びベテランが対応中だと、待ち時間が発生する。
 私は以上の知見を得て、方策を立案した。
2. 方策の内容及び管理指標
 私は、方策について検討する際、単一の方策ではなく、複数実施することで相乗効果が生まれると考え、以下のようにプロセス、ツール及び人の観点から改善まとめた。
 プロセスについて:機能的エスカレーションの実施時間の設定。これは従来機能的エスカレーションの明確なルールがなく、対応した新人の依頼によって開始されていたが、新人の対応について30分を超えて対応が継続している際は、SV及びベテランから対応中にチャットで対応要請の要否の確認を実施する。
 SVの新人の確認及び対応ヘルプへの注力。これはSVがサポート対応をすることで新人の待ち時間が発生することを抑制するものである。これについて、SVは極力サポート対応をせず、上記機能的エスカレーションの要否やベテランの対応引継ぎなど(以下、采配という)に注力させる。
 ツールについて:ノウハウのデータベース化。これは、構成メンバー各個人が作成した対応方法や一時的な暫定処置をまとめた既知のエラーをまとめたメモを利用する。私は、SVに指示し、このノウハウのメモを簡易的なデータベースを作成し、新人に共有させた。
 人について:役割と責任についての明確化。これは、上記の対応方策について、SVやベテランが新人と同様な単純な対応作業だけでなく、それぞれの役割と責任に基づき実施されるためである。具体的には、SVは先述した采配に注力させる。また、ベテランは、新人の機能的エスカレーションの依頼先であるため、自身の対応時間に余裕がないとならない。このためスキルアップのために定期的にEラーニングを実施するように手配した。
3. 工夫した点
 私は、改善目標が可視化されるよう、現状の対応時間の平均をディジタルサイネージで表示するようにした。
 また、改善目標達成の方策について、取り組みへの議論を促して取組みへの動機づけを行う必要があると考え、従来週次で全体朝礼を15分実施していたが、10分の全体朝礼と5分のチーム朝礼へ分割した。このチーム朝礼についても粒度が細かい情報伝達とボトムアップ、特に新人の意見も積極的に取り入れるよう指示した。

1995-2600

設問ウ:方策の管理指標の達成状況と改善の取組全体の評価


 1. 方策の管理指標の達成状況
 方策の管理指標である対応時間の削減を設定し、一か月経ち、私は現状の進捗確認が必要と考え、現時点の達成状況を確認した。対応時間の平均は55分となり5分の削減効果があった。目標達成はまだだが、引き続きの方策の徹底および改善点を検討すれば十分に目標達成は可能と思われる。
 2. 取組全体の評価
 私は、取組全体についても評価をした。
 2.1 良かった点
 これは、一つの課題についてチーム全体で対応をすることで、チームの力が結集し、チームのまとまりが醸成されたことである。今後も集団での対応が必要な対応方策の実施に対して、強い結束力が得られたように考える。
 2.2 悪かった点
 これは、設問イで述べたツールについてである。これについて各チームにおける品質はバラつきがあり、標準化されたものではなかった。週次のチーム朝礼の議事録を確認すると、概ね役に立ったこと意見が目立った。しかし、いくつかのチームの新人からは、ノウハウのデータベースについて「検索しにくい」などの指摘があった。
 2.3 改善点
 私は、今後とも継続する対応問題の改善には、このノウハウデータベースについての改善が必要と考えた。このノウハウデータベースがチーム毎の暫定的な作成のものではなく、Z社技術部共通の内容として作成すれば、Z社技術部の対応が大幅な対応時間の削減を期待できるからである。
 私は、このノウハウデータベースの本格的な作成を改善点として検討し、具体的な作成手順をまとめ、Z社技術部部長に提出した。


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