⭐︎ムラカミー賞 2020⭐︎

 

今年は何と長い一年だっただろう。僕だけじゃなくって、違う誰かにとってもそれは同じ話だ。

いろんな苦境が僕たちにじわじわ迫ってきた。尊敬していたいろんな人が死んだ。そういうギリギリの中で、映画を見続けることをやめなかった。

なぜかといえば、やはり映画を愛しているからである。そういう映画に対する愛を、ここにかけて見ます。それでは、

第一回ムラカミー賞開催!!!!!!

出オチじゃないですよ。今回は中までチョコたっぷりです。

内容です。

1 旧作 クウマはこれが好きで賞 10選

まずは旧作の好きだった奴らを紹介するよん。


○浮雲(1955) (成瀬巳喜男)

 強くたくましく生きることが時として死んだ方がマシだよねって時があるよね。これです。こんなに残酷な物語がこの時代にすでにあったなんて・・・


○幸福(1964) (アニエス・ヴァルダ)

 人間ってこうでしょ?人間ってこうなんだよ。という押し付けがましいながら真理を突いてしまった作品。単調で起伏がないけど、のめり込むと苦しくて仕方がなくなっちゃうな。


○肉弾(1968) (岡本喜八)

 戦争っていう残忍な世の中で完璧に狂っちゃった映画だよね。振り切ったブラックユーモアが冴えてる。博士の異常な愛情を思い出すなあと思う。


○アンドレイ・ルブリョフ(1969) (アンドレイ・タルコフスキー)

 ベン・ハーが嫌いすぎてキリスト教の絡んだ映画を毛嫌いしているところがあった。けど、この作品には押し付けがましさがなく、ただ美しい、ただ尊いということだけが示されていて、とても観心地がよかった。映画館で観たからってのもあるのかな・・・最高でした。


○ THE LAST MOVIE(1971) (デニス・ホッパー)

 掘り出しもんというか、これは観ておかないとな〜と思っていたヤツ。イージーライダーとセルバンテスのドンキホーテが好きな人は絶対好きになる!重厚なモンタージュで、もはや神話の域にあるな・・・


○絞殺(1979) (新藤兼人) 

 こんな題名で怖い映画かな・・・って構えちゃうことはとてももったいない。家族映画って思ってみないとちゃんとこの映画の本質を捉えることは難しいよね。


○北京的西瓜(1989) (大林宣彦)

 今年日本が失った日本映画界の名匠、大林宣彦監督の作品。監督の作品で観てなかったものとか観直したいものとかを観てた。この作品だけは忘れられなかったなあ。わざとガンマイクを使わないでシーンひとつ一つを環境として雑音もそのまま捉えるという自然主義的な作品。ここで感じた感情を大切にしてく。


○ニンフォマニアック(2013) (ラース・フォン・トリアー)

 後回しにしすぎていつの間にかタイミングを失ってたヤツ。観た日めっちゃ体調よかったけど、めっちゃ体調悪くなったよね。まあ最高ってワケ。


○凱里ブルース(2015) (ビー・ガン)

 絶対こんな才能を見過ごしちゃいかんぞ!中国新世代の才能。体験する混乱。なぜか最近再評価の呼び声高い今敏が好きなら、是非観てね。


○マリッジ・ストーリー(2019) (ノア・バームバック)

去年が受験だったから観れていなかったヤツ。僕はこの映画を観ていなかったら全く同じ結婚生活を歩むところだったな・・・(多分観たあとの今でも全く同じ結婚生活を歩む)


2 新作  評価不可能で賞

年に一本か二本あるかないかだけど、これは評価とかそういうことじゃなくて観たか観てないかによる映画ってあると思う。これはそういう映画に贈る賞です。


○死霊魂 (ワン・ビン)

中国の話。歴史をなぞって、百家争鳴をした直後に右派闘争をして、逆恨みや何やらで右派と認定されてしまって、国の端っこに追いやられてしまった(言ってもわかんないよね)民衆が、数百年に一度の規模の大飢饉と最悪なタイミングでぶつかって大変なことになってしまったという史実を、生ける証人たちが語っていく作品。八時間超の大作ながら、この作品がこう!ということは何もなくって、見たかどうかってだけの映画だから言いようがないんだよな。

今はこれと似たようなことを考えていたりして、そう考えると奇妙な縁があるなあ。


3 新作ベスト10

はい。この時期だけどさすがに20本くらいは観てるのでギリギリのところでつけた順位だけど・・・いってみよう。


10位 82年生まれ、キム・ジヨン (キム・ドヨン)

 これは結構傷付いたわ。一見の価値ありというか、性別問わずみんなの心の中に映し出しておくべきだよなあ。まず韓国っちゅうジェンダーギャップのバカでけー国でこれだけの踏み込んだ映画ができるんだ!と思ったらしっかりロッテ配給でちょっとウケたよね。


9位 チンパンジー属  (ラヴ・ディアス)

 東京国際映画祭で鑑賞。フィリピンの作品。モノクロで、カメラがズーッと定点でほとんど動かない。遠近感のある演劇を観てるみたいな感じがする。この作品に何一つ救いはないから、つまんないということではなくって、人間の本質の告発文みたいな映画。残念ながら字幕と翻訳がクソだったので乗り切れないところもあったが、評価はどうしても下げられない。だって好きなタイプの映画なんだもん。filmarksにフィリピン版の「羅生門」だって書いてあったけど、言い得て妙。


8位 スパイの妻 (黒沢清)

 すごい。蒼井優って本当にすごいな。もう目をそらしたいのに、ずーっと見てられるみたいなバランス感覚が異常だよ。脚本のうやむや感も作品のテイストに合っている。すごいな。でもヴェネチアは惜しかったな。こっちの黒沢だってずっとズゴイんだぜ。


7位 鵞鳥湖の夜 (ディアオ・イーナン)

 映画に対する愛だけでこんなにいい映画が撮れちゃうとはね・・・。中国のタランティーノと言っても過言ではないでしょう。(タランティーノより映画のシナリオにはちゃんと向き合っているかもしれないな。可愛げあり。)


6位 his (今泉力哉)

 この監督は曲者ですわ。ひどい話ですわ。でもね、大切なことが宝箱見てえに山ほど詰まっててこぼれ落ちないように大切に大切にしていきたいなあって心底思うんだよね。2021には「あの頃。」が控えているから、みんな楽しみだよね!ハム太郎!


5位 音楽 (岩井澤健治)

 ずっと自分のテンポで話が進んでいくので、そういう割り切りがとっても潔くって心地よくってコミカル。初期衝動がこの作品に充満してる。初期衝動って本当に大事。何かを始めるときのあの胸の高鳴りが蘇ってくる・・・


4位 ようこそ映画音響の世界へ (ミッジ・コスティン)

 映画制作を志した時からずーっと映画というものに興味は尽きなかった。その興味とドキュメンタリーに対する愛の隙間に入り込んできてくれたっていうことがポイント高い。また、想像は膨らんで音響それだけじゃない全ての巨大な気持ちの上で映画って成り立ってるんだ!という深い感動があったよね。


3位 パラサイト 半地下の家族 (ポン・ジュノ)

 そういえばこれ2020じゃん。受験直後に見に行ったからこれ2020じゃん。ってか受験って2020じゃん。アジア初のアカデミー賞は一点の曇りのない傑作ですよ。これほどの脚本力と細部のこだわりを評価しないのは阿呆のすることだよ。しれっと韓国二個目じゃん。最近韓国すげ〜。


2位 ノマドランド (クロエ・ジャオ)

 東京国際映画祭にてお先に・・・ヴェネチアで黒沢清を抑えて金賞のこの作品。生々しくぬるぬるとストーリーは進んでいきながら、労働と放浪を通して生きることを観客の心に映し出していく。刮目すべきは映像詩。カメラやってる人は見ておいた方がいいのかなあ。

来年の3月26日公開みたいだから、絶対見逃さないでね。


1位 燃ゆる女の肖像 (セリーヌ・シアマ)

 もうなんか僕がどうって言わなくてもみんなはこれを好きだし、観てない人もこれを観て絶対に刺さるし、しんどいし、最高だし。文句なしの一等賞です。19世紀の女性愛の話だよね。これが人を好きになるってことですわ。全ての始まったことには終わりがあって、そのことを認めて前へ前へ進んで行かなきゃいけないんだよな。(ここまでこの映画を見た後の数多の号泣を乗り越えてこれを書いてる)


ご清聴ありがとうございます。



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