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【PODCAST書き起こし】梅山いつきさん(近畿大学・准教授)に「運動」としての演劇をされている、佐藤信さんについて聞いてみた!(全5回)その5

【山下】最初に劇場の話をしましたけど、横浜の黄金町か、伊勢佐木町の奥のほうに若葉町ウォーフ、僕も2回ぐらい行ってるんですね。あれは梅山さんも行かれたことあります?

【梅山】はい。もちろん、行ってます。

【山下】どういう場所なんですか? 演劇公演もしてるけど。

【梅山】アートセンターっていうことで、3階建ての建物になってるんですけど。

【山下】劇場は2階かな?

【梅山】1階ですね。ただ、劇場ではないんですよね。どういうふうに建物登録してるかわからないんですけど、1階がアートスペースっていうことで、上演もできますし、今なんかは、子供向けのイベントを夏休みの間、やってるようですし、ギャラリーとして使って展覧会をやるっていうこともできるんですね。2階部分が作業スペースになっていて、稽古場として借りることができるんですね。

【山下】同じ大きさの2階の稽古場が?

【梅山】はい。3階部分が宿泊場所になっていて。

【山下】泊まれるんですか?

【梅山】はい。2段ベットで。

【山下】ドミトリー方式?

【梅山】はい。ドミトリーで、1泊3300円とかかな。あの界隈ではさらに安くて。

【山下】それは、あそこを使う人じゃないと泊まれないんですよね?

【梅山】関係ないです。

【山下】普通の人も泊まれるんですか?

【梅山】普通にブッキングドットコムで出てきます。

【山下】伊勢佐木町で飲んでて電車がなくなったら、泊まれるんですか?

【梅山】はい。1人ぐらい全然空いていると思いますよ。

【山下】安いですね。

【梅山】安いですし、1回私も西堂さんとか、大阪の友人たちで信さんに会いに行って、その夜そのまま泊まるっていうのをしたんですけど、すごい快適でした。

【山下】一応、男女は別れてるんですか?

【梅山】男女って分け方もできますし、そのときの宿泊者によるんですけど、そのときは、私たちの団体ともう1つだけだったので、2スペースに分けられるんですよね。真ん中がが共同スペースになってて、なので、それぞれに寄せて振り分けてくださって……。

【山下】なるほどね。僕は海外にバックパックで若いころ、時々行ってたんですけど、中国とか行くと、男女混合で、どこに寝るかわからないから、面白かった。その時はイスラエル人のレオラさんと仲良くなりまして。あと1番覚えているのが、ベッドが2つある部屋で、僕1人なんだけど、こっちが白人のカップルがベッドをシェアしてて、これがね、つらくてですね。

【梅山】つらいですね。

【山下】なんだよ、この2人はって。

【梅山】いていいのかなっていうね。

【山下】それでお酒を買って、日本人の2人組がいる部屋に行って、飲んで酔っぱらって眠くなるまで飲んで帰って寝たっていうのがありますけどね。どうでもいい話でしたね。すみません。

【梅山】でも、まだできて日が浅いっていうのもあって、管理しているスタッフが常駐しているんですけど、その人がウォーフ全般の運営にもかかわっている方なんですけど、すごく親切なんですよね。なので、すごく実は人気があるんですよ。安いし、綺麗だしっていうので。

【山下】これは、佐藤信さんがこれを作ろうと思って?

【梅山】そうですね。

【山下】きっかけがあったんですか?

【梅山】ずっと新しく……、イワトが閉まって、それで座・高円寺のほうで、公共劇場やり始めて、もう1回いろんな、特に若手なんかに自由に出入りして使える、共有できるスペースがほしいっていうのは、座・高円寺開いた直後ぐらいから、ずっとおっしゃっていたんですよ。

【山下】それは思ってらっしゃったんですね。

【梅山】それで、ずっと独自に物件探してたみたいで、そしたら、若葉町に見つかったっていう。

【山下】それでやってみようかというので。すごい運動家ですね。70代でね。

【梅山】はい。

【山下】うちの学校にテアトル・エコーの女優さんで安達忍さんが先生で来ているんですけど、若葉町ウォーフを教えてくれたのが安達先生なんですけど、あそこで清水宏が今なんかいろいろやってるらしいですね。

【梅山】はい。一人芝居を。

【山下】そう。よく聞くと、清水宏って、佐藤信さんの教え子的な立場なんですか?

【梅山】そうなんですかね。ちょっとそこ、詳しくわからないんですけど、2人でよくやってますね、ウォーフで。

【山下】そうらしいんですよね。まったくタイプが違うのに。清水宏は、僕はキャスティングの人に「この人の一人芝居めちゃくちゃ面白い」と言って見に行ったのが最初でした。すごく笑っちゃうじゃないですか。

【梅山】火曜日にやるんですよね。

【山下】あ、決まってるんだ。

【梅山】決まっていて、火曜日はさすがに大阪から仕事があって行けないので……。

【山下】これから行けるんじゃないですか?

【梅山】これからようやく清水さん見れると思って、楽しみにしています。

【山下】面白いですよね。あの人本当に。

【梅山】これもここ数年、ずっとやってますよね。

【山下】やってらっしゃいますよね。最近は古典の劇を自分なりに解釈してやってる。いやあ、清水さん。安達さんに「清水宏と佐藤信さん呼んだら?」とか言われたんですよね。「そんな僕、緊張して難しいですよ」とかってなりますね。

【梅山】会話がどうなるのか。

【山下】ちょっと今後の夢として、預からせていただきましたけど。最後にちょっと時間がおしてすみませんが、梅山さん、佐藤信さんの本とか、最初に出したのは、『アングラ演劇論』をお出しになって、アングラ演劇というものを梅山さん、どういうふうにとらえていらっしゃるのかというのを最後にお伺いしたいなと。
難しい質問なんだけど、アングラ演劇って自分が研究テーマにしようとして、今もやってらっしゃるのかわからないですけど。

【梅山】なんでしょうかね。観客の顔が見える芝居ってことじゃないですか?

【山下】どういうこと? 観客の顔が見えるって。

【梅山】観客が。

【山下】そこの場にいるっていう、一緒に。

【梅山】観客がよりほかの作品よりも主体的に参加する。

【山下】さっきの『水族館劇場』の最初のまくらの話と同じだね。

【梅山】はい。

【山下】それが観客と演じるのと、その場所と地域が一体となって、関係性を構築している場だからってことなのかな。

【梅山】そうですね。ゆえにその外側から、参加してない人から見ると、ものすごく濃密な関係性にあるようにも見えるので、ゆえにそれがアングラってことなのかなっていう気がします。

【山下】入っちゃうとそうでもないっていうのにね。

【梅山】入っちゃうとそうですね。

【山下】一緒に参加してると、昔、僕、徳島の阿波踊りに毎年行ってたんです。あれもみんなで踊りながらぐるぐると回っていると、なんか一体化してくるんですよ。全然、1年に1回しか会わないけど、「おー、またこのお兄ちゃん来たか」みたいな感じで。それに近いような気がするな。

【梅山】よく一般的にアングラっていうと、マイナーとか、少しマニアックなものってことだと思うんですけど、それって引きつけているものが万人にうけるかっていうと、そうとも限らないとは言えると思うんですよね。ただ、それだけではないように思っていて。

【山下】「何だこれは?」っていうのもあるけど、それじゃない引きつけるものっていうのがある。その魅力を解体しながら、新しいかたちのアングラ演劇が令和の時代に新しく生まれると面白いなと思いますね。全然違う、「あ、これ、アングラだったの?」みたいなことが、新しいアングラのかたちになって、若い演劇集団が出てくるといいなってすごく期待しています。

【梅山】若い人たちのすごく少人数、私も今具体的な集団名挙げられませんけど、特に2010年代以降って、いろんな事情から、何か大掛かりな公演を打つとかっていうよりは、非劇場空間でワークインプログレスみたいなかたちで、単発で、割とライトなかたちで発表して、それを積み重ねていくっていうのが傾向として多いと思うんですよね。それ自体が実はすごく60年代末の既存の大劇場では自分たちではお客さん、埋められない。もちろん、お金もない。だったら、自分たちでスペースを見つけ出して、そこで自分たちのやりたいこと、コツコツやっていこうっていうようなところと、非常に重なると思うんですよね。

【山下】そうですよね。確かにそういうの増えてきてるかもしれないな。

【梅山】まあ、それ言ったら、いつの時代も活動したてのころって、そういうものだとも思うんですけど、ただなんかこうじゃなきゃだめっていうようなとこから、もう今の人たちは自由に解放されているはずなので、学生と触れ合っていても今の二十歳前後の人たちの態度の示し方の中で、いろんな社会に対する疑問とか不満っていうものは出してるんですよね。特に今、コロナっていう中で、なんで大学生だったら、自分たち我慢しなきゃいけないのか、っていうことでかなり去年なんかは、今の2年生に相当する子たちなんか特に問題意識高いんですよね。

【山下】わかる。そこから、新しい表現が生まれるかもしれないね。

【梅山】そうですね。そういう子たちに60年代、70年代の映像をアングラ劇だけじゃなくて、学生運動の映像とか山下洋輔さんの「バリケードの中のジャズ」っていうのとか、あれ見せたら、すごいうけたんですよね。

【山下】だから、彼らも同じことを何か感じたのかもしれない。このコロナ禍で。

【梅山】そうなんですよ。

【山下】楽しみだね。近大発の面白い演劇集団出るかもしれないな。

【梅山】関西は結構、若い子とかが京都のほうとかでも学生演劇で頑張ってたりもしますしね。近大出で結構活躍している若手もいますから。

【山下】楽しみですね。

【梅山】はい。

【山下】佐藤信さんとこの前、対談でおっしゃられてたけど、地方にみんなが知らないような集団とか、活動をやっている劇団とか集団が、たくさんあるんだよって書かれてて、「そうなんや」と思ってですね。

【梅山】それも小劇場ネットワークっていう集団ではないんですけど、そういう集まりがありまして、野村政之さんってドラマ……、野村さんとか話伺ったらいいんじゃないですか? 

【山下】じゃあ、ぜひ。

【梅山】今、長野におられるのかな。すごく草の根運動的に全国に散らばっている小劇場の運営している人たちが集まって、意見交換するっていうのを重ねて2回目の集まりをウォーフでやったんですよね。

【山下】ウォーフで。

【梅山】佐藤信さんがメインのゲストみたいなかたちで自分と劇場の半世紀っていうことで自由劇場からウォーフに至るまでをご自身で語られたんですね。そういう集まりが基軸となって、実はそれがコロナでこんなことになる前年の話なんですよ。ウォーフであったのが。団体の活動自体はその前からあったんですけど、ウォーフでっていうときに私も参加して、信さんの話聞いたり、あとは各地の劇場の札幌のほうから岡山とか、各地から集まって、こういうことやってますっていう情報交換をして、そういうの聞いて、すごく面白くてっていうのがあって、コロナに突入してたときに、それがやっぱりベースとなって、オンラインで、今どうなっているんだって情報共有したりしてるんで、そのことを念頭に置かれているんだと思います。信さんは。

【山下】佐藤さんがおっしゃられてて面白かったこと、「なぜか東京だとその情報が何も入ってこない」っていうね。なるほどなと思って。

【梅山】確かにそうですね。それは大阪に住んでても、大阪もあの辺全部近いじゃないですか?

【山下】そうですね。京都も神戸も近いからね。

【梅山】だから、自然と県を越えてるところがありますよね。

【山下】あります。

【梅山】特に今、伊丹アイホールを巡って、関西の小劇場の演劇人、一致団結して、どうやったら存続できるのかっていうのを日々意見交換してるんですよね。

【山下】あれは、伊丹市の方針なんですか?

【梅山】そうみたいです。そういう団体というか、スポーツ関係のところに指定管理というか、そっちのほうに管理者にして、スポーツの施設にするっていう計画が持ち上がってるっていうことなんですよね。

【山下】なるほどね。そこは僕も勉強不足なんで、勉強してみたいと思いますけど。
ということで2時間少々、経ってしまいましたけど、梅山さん、ありがとうございました。
このBRAIN DRAIN、みんなで語る小劇場演劇では、私と梅山さんがしゃべってたものがもちろん、音声コンテンツで聞けるんですが、noteというものに文字を書き起こしてもらって、だいたい1カ月ぐらいかかるんですけどね。それを掲載してます。いつも僕は書き起こしたやつを読むと、すごく面白くてワクワクするんですけど、今回もそんな番組になってるといいなと思います。ということで、梅山さん、ありがとうございました。

【梅山】ありがとうございました。

【山下】皆さん、どうもありがとうございました。さようなら。

【梅山】ありがとうございました。さようなら。

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担当:高橋
ご依頼ありがとうございました。
演劇はあまり見たことがないのですが、同年代の学生が学外で活動している学生演劇や一人で芝居をするものなど様々あることを知りました。いろんな演劇を見てみたいと思います。ありがとうございました。

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