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Lamp「さち子」

今日の曲は、Lampの「さち子」。

作詞は榊原香保里。作曲は染谷大陽。

Lamp(ランプ)は2000年に結成された、日本のバンド。ボサノヴァをベースに様々な音楽を織り交ぜた、複雑かつ洗練されたサウンドが特徴である。はっぴいえんどやシュガーベイブといった70年代の日本語ロック、ポップスを軸に、シティポップやブラジリアン等様々なジャンルの音楽を取り込んだ、先進的であり何処か懐かしくもあるポップスを世に送り出している職人気質さが特徴的。

メンバーは染谷大陽・永井祐介・榊原香保里の3人。染谷はギター・シンセサイザー・ヴィブラフォンほか多数の楽器を、永井はボーカル・ギター・ベース・キーボードほか多数の楽器を、榊原はボーカル・フルート・アコーディオンほかを担当している。作詞は3人でし、作曲は永井と染谷の二名でしている。

今回の曲「さち子」は2014年2月5日に発売された7thアルバム『ゆめ』に収録されている。メジャーデビュー後初のアルバムだ。

ひと夏の思い出を回想している、一見なんとも甘いメロディの下に隠れた複雑な味わい。技巧を感じさせないほどの洗練された楽曲。複雑なコード進行なのに何故こんなにも色鮮やかなサウンドを生み出すことができるのか、不思議でならない。Lampのコードの特徴は過去のポップスの文法を余すところなく扱っている。その中でも特徴的なコード進行についてみてみる。

コードを構成する音の一つが、ド→ド♯ (実音でE→F) と動いている。聴き手は、「この音は何処へ行くんだろう?」とドキッとする。このような内声の一音が動くことをクリシェといわれる。一度聴いたら耳から離れない音で、ド♯の音は不協和で、一瞬、不安や切なさを感じさせる。このコードは、ポップスではめったに聴かれないが、ブラジル音楽の巨匠、トニーニョ・オルタの楽曲で登場する。さち子作曲者の染谷さんは、トニーニョ・オルタを敬愛しており、切なげな甘さをつくっているこのコードからトニーニョ・オルタの音楽が、さち子を生み出した原動力となったのだろうと思う。

サビの最も盛り上がるところで3つのディミニッシュコードが使われている。一般的な感性だと、ディミニッシュコードはワンアクセントで経過的に使うもの、という印象があるが、Lampでは驚くことにメインエンジンになっている。ディミニッシュコードは単体で聴くとお化けでも出そうな変な和音なのだが、さち子ではこれ以上ないくらい感動的な音で響いている。ディミニッシュコードというのは、和音の積み上げ方が特殊なため全部で3パターンしかない。その3パターンがサビのにある。利用できる全てのディミニッシュコードを、たった数十秒のサビの中に余すところなく突っ込んでいる。ディミニッシュから得られる響きを使い尽くすなんともロマンチック発想。2004年に書かれた染谷さんのブログによるとLampのディミニッシュコードへのこだわりはビートルズに端を発するところがあるのだそう。

ノスタルジックな中に感情がゆらゆら揺れる感覚。繊細で叙情的な世界を纏い、聴くたびに夢の世界へ連れ込まれるようだ。

「さち子」は、歌詞を見てみるとアンデルセンの『人魚姫』がその題材となっているように思える。もちろんこの歌には、童話のようなはっきりとした物語が描かれているわけではない。確かなのは、語り手が、かつて付き合っていた女性との一夏の思い出を人魚姫のモティーフに仮託して回想しているということだけだ。海辺の砂浜という舞台を背景に、自分がかつて付き合っていた女性の赤いペディキュアをクローズアップする視線、波の音と恋人のうたう声を結びつける聴覚は、こうして現実の風景とおとぎ話の間に、一致しているような一致していないような、微妙な照応を形作る。「風」に吹き飛ばされる「麦わら帽子」、そして、泡となって消えていく二人の恋の結末は、まさしく童話のエピローグと呼応しているといえよう。

「音」としても、「言葉」としても一点の曇りもなく澄み切っていて、耳に、そして心にスーッと染み入ってくる。

無心で癒されるってこの曲のこと。なにかとこの曲を聴いて心を浄化している。

今日の写真はロッテのキャンディの小春ちゃんあんず味。

Lampのアルバム『ゆめ』のジャケットは小梅ちゃんシリーズのパッケージイラストを手掛けている林静一氏によるイラスト。

これを見て思い出したのが小春ちゃん。

ヨロシクが小学生の頃、友達の家に遊びに行ったときにもらった飴ですごくおいしくて、後日買おうと思ったらスーパーになかったという切ない想い出。

今回の写真を調べる際に期間限定だったということが分かり、あの夏の切ない気持ちが供養されたようで、「さち子」にはお世話になってばかり。

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二軍のプレイリスト



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