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「LOOP」製作メモ

着想

 着想は、雀荘狂い時代によく聞いた「良い席」「悪い席」論から来ています(私はかつて麻雀にハマり狂っていた時期がありました)。
 麻雀をガッツリやった人なら共感してもらえると思うのですが、長時間やっていると、特定の席がやたら運が良く、簡単に高い手であがれたり何を切っても振り込まない一方で、何しても裏目に出る・あがれない席が見えてくることがあります。普通に考えればそれはプレイヤーに依存するもの、あるいは単なる偶然の結果で席は関係ない…と思うところですが、席替えを
して別の人が座っても相変わらず運が良い席に着いた人が勝ち、運が悪い席に着いた人が負ける…という現象が起きます。プレイヤー視点だとそれはより鮮明で、その椅子に座った瞬間、視界がパッと明るくなって「なんか勝てる気がする…!」と感じたり、座った瞬間どんよりした気分になって勝てる気がしなくなったり。いずれにせよ麻雀をしていると確固とした概念として「良い席」「悪い席」論が語られています。「席替えする大富豪」はそれをヒントに生まれました。

手札を配り直さない大富豪

 「LOOP」は最初から、好評を博した「OPEN」のシリーズものとして作り始めました。そういうわけで大富豪系(=ゴーアウト系)なワケですが、手札を配り直さず席替えを続けるというコンセプトがそもそも成立するのか?という疑問が最初はありました。が、すぐに最初のテストプレイでその疑問は払拭しました。

 1ラウンド目はほんとに普通の、素直な富豪です。が2ラウンド目、席替えをした瞬間、「あっ、こういう手札だったんだ」「これでよく1位取れましたね」といった様々な感想が飛び交い、新鮮な驚きがありました。またプレイ中も、前回のプレイを正確に覚えているわけではないですが、要所要所覚えていて「このカードを出したらAさんが切って同じ展開になるから…」など前回の記憶をヒントに戦えるところがループものっぽい感じがしたので、名前を「LOOP」にしました。

 ちなみに、同じ手法をトリックテイキングにも適用したらどうだろう?ということも少しだけ検討しました。まず、獲得トリック数を各自ビッドして個人目標達成に向けてプレイするタイプのトリテ。これは1ラウンド目が終わった時点で解がわかってしまうため、2ラウンド目は1ラウンド目の結果通りにビッドすればよく、まったく向いてないと思いました。次に、切り札を巡って獲得トリックor目標点をビッドするタイプのトリテ。こちらは一応成立しそうな気がしますが、記憶をどう活かすかがゴーアウトよりも難しいのでは?と思ってやめました(試してません)。

大富豪や前作OPENからの変化(味付け)

 ということで「大富豪系」というところまでは決定しましたが、せっかくなら手札を配り直さないことがより活きるカード構成、ルールを追加したいものです。狙いとしては以下を目指していじりました。
a) 同じ手札でも人によって違う出し方になるといい
 … 誰がやっても同じ出し方にしかならないとつまらない
b) 強い手札の人が強過ぎとならないようにしたい
 … 誰がどうやっても絶対1位にしかならないようだとつまらない

 最初にOPENでは使ってなかった階段出し(連番)を入れました。手札に556とあった時に55で使うか56で使うかによって変化し、これは要件(a)を満たします。しかし一方で数字が連続していれば手札を一気に出すことができるようにもなり、これは要件(b)と相反します。そこで連番は、スート(色)が一致してるもののみという制限を加えました。またスートの数を3つにすることで、ペアになる確率と連番の確率が同じくらいになるようにしました(緑5とペアになるカードは赤5紫5の2枚、緑5と連番になるのは緑4緑6の2枚)。

連番が作れるのは同色のみ

 また最初に2枚伏せる(=捨てる)というルールも(a)を誘発するために入れました。

「8」をキーカードに

さらに8を特別なカードにしました。これは「どういうルールを加えたらもっと面白くなるだろう?」と考えていた時に、テストプレイ仲間のK君が「大富豪のローカルルールでは8切りが一番好き」と言っていたのを受けて入れてみたところから始まり、その8を最初に伏せておいて手番に公開することで革命(どんでん)を起こすことができるという2重の効果を持たせました。大富豪の「革命」は起きるとドカンと盛り上がるイベントでありつつ、他のカードゲームではお目にかからない特殊なルールです。その革命をカジュアルに起こせるようにしました。というのも革命はループものと相性が良いと思ったからです。また先ほどの要件(a)と要件(b)を両方同時に満たすことができます。

8を特別なカードとしたことで、カードを1~15にして8がちょうど真ん中の数字になるようにしたり、8のデザインを∞にしたりしました。

何回繰り返すか問題

開発中ずっと悩んだいたのは「手札を配り直さないまま何ラウンド繰り返すか?」でした。手札が明らかに強過ぎて1ターンキルになってしまったり、最適解が見えてしまって順位が変わらないと感じた時にさらに繰り返すのはキツいだろう…と。で、(1) 配るラウンド(ノーマルラウンド)と配らないラウンド(ループラウンド)を交互に繰り返してみたり、(2)1ラウンド終わるごとにリピートするかしないかを投票して決めたり等、いろいろ変遷しました(投票はラウンドカードを「せいの」で同時出ししておこないます。もしくは「ループ!」と言いながら指でLマークを作って出しますw)。

実は長らく投票スタイルでテストしてたのですが、最終的には「ずっと繰り返す」としました。その代わり終了条件を下げて2~4回繰り返せば終わるくらいにしました(最速2回で終わります)。

理由としては、投票の仕方などを説明するのが意外と面倒でスマートではないと感じたのと、ゲームマーケットという戦場においては尖らせた方が良いと思ったからです。「このゲームではカードを配り直しません!」と説明するのと「投票の結果で配り直したり配り直さなかったりします」とではインパクトが違うのです。

アートワーク

アートワークは「OPEN」に引き続きQURAGEさんにお願いしました。と言うよりもむしろ、QURAGEさんに描いてもらうことがルールよりも先に、一番最初に決まっていました。

キーカード「8」のデザイン候補

箱絵は、最初に出されたものは全然違うものでした。それは非常に強いインパクトの絵だったのですが、ゲームの内容に対して尖り過ぎてる感じがしたので、もう少し手心を加えてもらったのがこれです。無表情なところがループしてる人っぽさを感じさせて、とても良いと思います。(気に入り過ぎてTシャツまで作ってしまいました😅)


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