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マスクの漏れ率を比較してみた

前回の記事に書いた方法で複数の一般マスクやサージカルマスクの漏れ率を測ってみました。

マスクの漏れはフィット状態に左右されます。そしてフィット状態は、マスクが顔の形に合っているかどうかの影響が大きいのです。同じマスクでも漏れは個人毎に異なるので、今回は具体的なマスクの商品名や銘柄に原則触れないことにしました。
なお例によって、一般マスクやサージカルマスクをまとめて「マスク」と呼ぶことにします。

さっそく結果発表

測定方法は前回の記事に記載の通りですが、結果を手作業で集計すると無意識に都合の良い方に寄せがちで、作業も結構タイヘンです。今回は簡単なプログラムを作って集計を半自動化し、全てのマスクを平等に集計できるようにしました。

測定結果の表
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手もとにあったマスク7種類の結果と、参考として N95 相当マスクの呼吸抵抗です。今回の方法では原理的に漏れ率の測定ができないので、N95 相当マスクについては呼吸抵抗だけの測定です。
着用状態「通常1・2」の漏れ率の最大値が大きい順に並べています。また特に言及していないマスクの「フィット感」は「まぁまぁ」と「イマイチ」の間、あまり良くも悪くもない印象です。

測定結果のグラフ
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漏れ率をグラフにししました。マスクにより着用状態ごとのばらつき(最大と最小の差)が結構違うことが分かります。

  • マスク1はばらつきが小さいが、一貫して漏れ率が大きい

  • マスク6は漏れ率の最小値が最も小さいが、ばらつきが一番大きい

  • 上記以外のばらつきはほぼ同じ程度

ばらつきが大きいのは、着用中にフィット状態が悪化しやすい傾向を示していると考えられます。

「ひもを引く」効果
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「ひもを引く」事により漏れ率が減少するかどうか調べたグラフです。プラスの数値が大きいほど漏れ率の減少が大きいことになります。マスク3、4、7では漏れ率が増加してしまう場合があり、これらは全て樹脂製ノーズワイヤーを採用しています。

呼吸抵抗(圧力損失)と漏れ率について

顔とマスクの隙間が同じ場合にマスク素材の抵抗が大きいと漏れ率が大きくなる傾向があると考えられます。

マスク素材の抵抗が大きいと漏れ率が増加する傾向がある
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下図のようにマスクの周囲を押さえて測った「漏れ最小時の抵抗」がマスク素材の抵抗を表します。

マスクの周囲を押さえて漏れを最小化する
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今回の結果では完全に上記の通りとはならず、マスク2および6が逆の傾向を示しました。これは他の要因、つまりフィット状態の良し悪しによる顔とマスクの隙間が違ったことによるのだと考えられます。

なおマスク素材のフィルター性能が高いと抵抗が大きくなる、と言うことはありません。番外1・2に示した N95 相当マスクは国家検定に合格した製品なのでフィルター性能は間違いなく十分で、それでも呼吸抵抗はあまり大きくないことが分かります。

感染防止効果の高いマスクの目安

測定しなくても体感で大体こんな具合なら良いのではないかと言うことが今回測定してみて分かりました。ただしあくまで私の主観です。

通常着用時に呼吸に応じてペコペコする

センターワイヤーなどの無い通常のプリーツ型マスクに関することです。良好にフィットしているとペコペコするくらいが正常の様です。
息を吸ったとき唇に触れるなど、あまり快適ではないのは事実です。 それが気になるならセンターワイヤーのあるもの、あるいはダイヤモンド型やカップ型のマスクで各自の顔の形に良くフィットするものを選ぶことになります。

マスクの周囲を押さえても呼吸抵抗があまり変化しない

漏れ率が低い状態である可能性が高いです。

漏れが最小になるようにしたときの抵抗が小さい

フィット状態、つまり顔とマスクの隙間が同じ程度の場合、抵抗が大きなものより漏れ率が小さくなることが期待できます。

フィット感が良い

「フィット感」は案外あてになることが分かりました。
しかしマスク6と7はフィット感に反して測定結果が逆転してしまいました。これは以下のようなことが原因だったのだと推定しています。

  • マスク6は素材の抵抗が大きい

  • 同時にフィット状態がかなり良いため、通常着用時の呼吸抵抗があまり低下しない

  • 通常着用時の呼吸抵抗が比較的高いため「フィット感良好」と感じた

  • しかし実際の漏れ率の小ささはマスク7に及ばなかった

注意の必要なマスクの特徴

本質的に「感染防止効果の高いマスクの目安」の裏返しの内容が多いですが、まとめると以下のようになります。

通常着用時の抵抗が異常に小さい

呼吸がすごく楽と言うことです。これは大量に漏れていてマスクの効果がほとんど無い恐れがあります。
ものすごく息苦しいのも異常で正常な呼吸を妨げる危険がありますが、マスクが良好にフィットしていればある程度抵抗を感じるのが普通です。

マスクの周囲を押さえると息苦しくなる

前項同様、大量に漏れていてマスクの効果がほとんど無い恐れがあります。

漏れが最小になるようにしたときの抵抗が異常に大きい

通常着用時に大量に漏れていて、マスクの効果がほとんど無い恐れがあります。

フィット感が悪い

繰り返しになりますが、「フィット感」は案外あてになります。また印象の悪いマスクを使っていて好ましくない結果になった場合、心理的なダメージが大きいと思います。

その他、気づいたこと

ひもを引っ張るマスクグッズはフィット状態を悪化させる場合がある

以前の記事にも書きましたが、今回確からしい理由が分かりました。

この様なマスクグッズを使いひもを強く引っ張った場合のことです。ほとんどの一般マスクやサージカルマスクは柔軟な構造なので、強い力をかけると型崩れしてフィット状態が悪化する場合が多い様です。

耳が痛くならない様、少し浮かす程度に軽く引っ張るならあまり影響ないはずです。

まとめ

せっかくマスクを着用するならちゃんと感染防止効果のある様に着用しましょう、と言うことです。

一般マスクまたはサージカルマスクでも自分の顔の形に合っていれば、普通の注意深さでフィットさせると、感染し得る状況で感染せずに済む時間を2倍程度、またはそれ以上に延ばす効果があります。ただし入念にフィットさせても着用中に状態が変化してしまう可能性が高いので、気にし過ぎは意味がありません。各自の顔の形に合ったマスクに巡り合うのが最も重要です。
またウイルス微粒子が手に付着しかえって感染リスクを増す恐れがあるので、着用中にマスクを直すのは避けたいものです。頻繁に直さなければならないマスクは顔の形にあっていない可能性が高いので、もっとフィット感の良いものを探すのが吉です。

しかし列車や航空機で見知らぬ人や久しぶりに会う知人と長時間隣同士になる場合など、一般マスクやサージカルマスクでは感染を防ぎきれない場合があると思います。この様な場合、高価であり、またあまり快適ではありませんが、N95 マスクなどを利用する必要がありそうだと思います。


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