非日常の楽しさ


少し不謹慎な部分があるかもしれないが、誤解を恐れず書いていきたい。

例えば、台風とか停電とか、非日常的なことが起こると、不安になるのはもちろんだが、ある程度の安全性が確保されていることが確認できれば、むしろその状況を「楽しい」とさえ思っている人は、少なくないと思う。

先日の台風による千葉の被害や、3.11の大震災および津波の被害のことを考えると、表現として非常に難しいところではあるが、あくまで今回の話は「ある程度の安全が確保できている」という前提を置くことで、ご容赦願いたい。

強風で電車が乱れたとき、「仕事に間に合わないじゃないか、ふざけるな!」と思う人も多いだろうし、実際そういうtweetがタイムラインを埋め尽くす。

けど「[誰がどう見ても遅刻・欠勤(欠席)しても仕方のない状態]になったらどうなるだろう?」と思う気持ちは止められないし、そう思った途端、そうなることを願っている自分はもはや否定できないと思う。

もし、それを否定できる人がいるとすれば「それが滞ると本当に人生の何かがマズイ人」か「滞るとかどうでもよくて、とにかくその先にある何かを心底楽しみにしている人」のどちらかだろう。

仮に「心のメーター」のようなものがあるとして、何か変化が起きたとき、そのメーターが振れる訳だが、そういった矛盾した心理的現象を考えると、大きくマイナスに振れているときでも、実はプラス側にも振れている、ということが言えると思う。

電車の乱れはその事例とも言えるし、逆のケースでいうと、「ずっと楽しみにしていたイベントなんだけど、いざ行くとなると若干めんどくさくなってきた」みたいなケースもあるかもしれない。

そして、このメーターの「逆振れ現象」は、恒常的にメーターがどちらかに偏っているような人ほど、逆振れ感度が高くなるのではないか、と考えている。

正しく言うと、恒常的に振れているせいで片方の感度が下がってしまい、相対的に逆側の感度が高い状態、ということかと思う。

つまり、日々の生活に不満を抱えたり、日常がつまらないと感じている人ほど、非日常によるプラス感度が相対的に高くなって、災害時でも「ワクワク」感が出てしまうのではないか。

逆に、日々に満足している人は、変化が起きるメリットがないから、変化によるワクワクよりも不安や不満が高まる。

このような現象を「メーターの逆ブレ現象」として考えると、世の中の一見不合理な行動を取る人の心理状態を理解できるのではなかろうか。

そして、なぜこんなことを言い出したのかと言うと、なんとなく「慢性的に不満状態」の人が世の中すごく多くない?と思ったから。

この理論を少し広めに適用して考えたときに、駅で喧嘩しちゃう人とか、一方的な正義を振りかざしてtwitter炎上させようとする人なんかは、意識的ではないにせよ、「自ら変化を作り出している」と言えると思う。

駅で喧嘩始める人なんか、予定は狂うし、周りには変な目で見られるし、イライラが溜まってしまうし、いいことなんかないはずなのに、逆振れ感度が高くなりすぎて、変化があることによるメリットが異常に高くなってしまい、結果的にデメリットの方を上回って、そういう行動に移ってしまうんだろうなと。

もちろん、「我慢強さが足りない」とか「倫理観がそもそも狂ってる」などの問題も絡むとは思う。

しかし、大小問わずそういった問題行動を取る人全員が、精神的に未熟か狂った倫理感を持っている、とも言い切れないのではないか。

そもそも、慢性的に不満状態でなければ、多少我慢が苦手でも、倫理観に乏しくても、「人に迷惑かける」とか「自分の人生が終わる」みたいなことはしないはず。

では、なぜ慢性的に不満状態の人が溢れかえっているのか、という話になるわけだが、それには社会の仕組みに大きな要因があると考えていて、それはまたじっくり考えを整理していきたい。

ただ、社会のせいはあるにせよ、少なくとも「自分がそうはならないようにするにはどうしたらいいか?」という努力は怠ってはならないと思う。

「それは、どうするのか?」というと、正直優等生的な回答しかなくて、マイナスの変化もプラスに変換させるなどの、事象が自らに与える影響への積極的な関与が必要だろう。

要するに、口だけ開けて与えられるがままになんでも食っちゃうんじゃなくて、生で食べられないものはちゃんと料理して食べましょうよ、ということ。

駅で酔っ払って絡んできたおっさんに対して、「この人は家庭を持っているが、子供が思春期で冷たく、奥さんにもATM扱いされてストレスが溜まっているんだなあ」などワンクッション挟めば少しはこちらのイライラも収まるだろうか。

じゃあ自分が実践できているかというと、やはり日々料理しない人がいきなり上手には作れないのと一緒で、そう簡単にできるようになるものではない。
日々、精進である。

というわけで、(この原稿書いた当時)台風の影響で会社への到達が困難になり、打ち合わせがWEB会議で良くなったため、台風一過の晴れ空の下、途中下車した駅の近くで一杯引っ掛けながら外で仕事をしていたことは、上記の理論により正当化されるよね、っていう話でした。
(昼からお酒を飲むデメリットに対する感度が低くなっていることには、気づかないふりをしつつ。。。)

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