Best Partner of Music 〈2024.8〉
Creator's Voice④:Matsu4512(ChainBeeT)
前号でレビューした「シンプルで難しい」音ゲーの『ChainBeeT』が、今月ついに8周年を迎えた。なお、8周年と言われてもピンとこない人は多いかもしれないが、8年はスマホ音ゲーとしては実に長い期間だ。ChainBeeTのリリース年が2016年の一方、特に知名度の高い音ゲーの一つであるPhigrosは2019年、同じく人気の伸びているTAKUMI³は2020年。今ではアーケードの大物と肩を並べるほどのスマホ音ゲーであるArcaeaですら、2017年とChainBeeTよりも1年若いというのだから驚きである。
色々な音ゲーが数年で市場を去る中、どうやって8年間もサービスを続けられたのだろうか?そもそも、どういったきっかけでスマホ音ゲーを作ろうと思ったのだろうか?今回、2人組のChainBeeT開発チーム「カエル組」のうち企画・プログラミング・譜面制作を担当したMatsu4512氏を通じて、『ChainBeeT』の裏側を見てみよう。
Kiry*:最初に音ゲーを作りたいと思ったのはいつ頃ですか?そのきっかけは何ですか?
Matsu4512:かなり前のことなので曖昧ですが音ゲーを初めて作ってみようと思ったのは2012年頃で、当時はブラウザで遊べる簡単な音ゲーを作っていました。
音ゲーはその頃から好きでゲーム作りの練習を兼ねて挑戦していました。
ChainBeeTの場合、作ろうと思ったのは2015年の後半です。
きっかけは、当時自分好みのスマホ音ゲーがあまりなかったので、理想の音ゲーを作ってしまおうと思い立ちました。
Kiry*:『ChainBeeT』を作る上でで1番大変だったことはなんですか?
Matsu4512:一番大変だったのは譜面制作です。
リリース当時は譜面エディタの機能が貧弱で譜面作りにも慣れていなかったので、1曲4譜面制作するのに10時間ほどかかっていました。
現在ではある程度の自動化や機能改善で2時間程度まで短縮することが出来ています。
今思うとリリース前にしっかり譜面エディタ作っておくべきだったなと思います。
Kiry*:作り始めた頃に1番大変だったことは何ですか?
Matsu4512:開発を始めた時に大変だったことは特になかった気がします。
強いて言うならスマホゲーム作りは初めてだったのでゲームエンジンに慣れるのに少し時間がかかったことくらいで、開発開始からリリースまで大きな問題はなく順調だったと思います。
Kiry*:『ChainBeeT』を作る上で大切にしたことは何ですか?
Matsu4512:主に以下の4点を意識して開発、運営を続けています。
・直感的に操作方法を理解できるシンプルなデザインを心がける
・動作をなるべく軽くし、古い端末でも出来るだけ60fpsを維持できるような設計をする
・二本指でプレイした場合に楽しくプレイできるような譜面を目指す (全ての譜面ではないですが、二本指プレイ時の運指をある程度考慮しながら作っています)
・運営にかかる手間をなるべく抑える (可能な限り自動化する、手間が増えるような機能を作らない)
Kiry*:『ChainBeeT』という音ゲーのスタイルはどのように決めましたか?
Matsu4512:ChainBeeTは自分の理想の音ゲーを作るというコンセプトのもとに作成を始めたので、基本的に自分の好みをそのままゲームに落とし込みました。
具体的には開発の初期段階から以下の要素は必ず満たすようにしようと決めていました。
・二本指でプレイできる
・高難易度
・ギミックやエフェクトは最小限
UIやノーツの形などは何パターンかプロトタイプを作って一番良いと感じたものを選んでいます。
Kiry*:『ChainBeeT』に登場するノーツは開発段階からタップ、ロング、ドラッグの3種類に限定されていたのですか?現在フリックや独自ノーツが無いのはそれに起因するものなのですか?
Matsu4512:ノーツの種類は開発初期段階から決めていました。
フリックに関しては、私自身が音ゲーでのフリック操作があまり好きではないので導入していません。
Kiry*:様々な音ゲーが数年で音信不通(=サービス終了)に追い込まれていく中で、『ChainBeeT』の開発を8年間続けることができた理由は何ですか?
Matsu4512:まずは単純に音ゲーとゲーム制作が好きで、譜面作りやプログラミングはやっていて楽しいです。
次に運営に必要な作業を可能な限り自動化し、手間を減らして無理なく続けられるようにしているからだと思います。
いくら好きでも作業量が膨大だと続かないと思うので。
Kiry*:『ChainBeeT』の最大の強みは何だと思いますか?
Matsu4512:最大の強みは収録曲と譜面の多さだと思います。
これからもどんどん追加していくのでお楽しみに!
ちなみに2024年7月27日時点で891曲、3779譜面収録されています。
Kiry*:過去8年で一番のハイライトはどの場面ですか?
Matsu4512:楽曲公募を始めた時です。
当時はダウンロード数がかなり少なく無名のゲームだったので、楽曲が集まるか不安でした。
しかし、ありがたいことにたくさんのご応募を頂けて開発の大きな励みになりました。
これにより様々なジャンルの楽曲が増え、ChainBeeTがより楽しくなったと思います。
また、ユーザー数もここから一気に増えていきました。今も運営が続いている理由の一つは、公募のおかげだと思います。
Kiry*:『ChainBeeT』の将来の展望/目標は何ですか?
Matsu4512:あまり大きな目標は設けずに、のんびりと続けていきたいと考えています。
とりあえず直近の目標は収録曲1000曲達成です。
Kiry*:新たに音ゲーを作りたい開発者たちに、ひとことアドバイスをお願いします!
Matsu4512:譜面エディタは妥協せずに高機能なものを目指しましょう。
音ゲーにおいて譜面制作は必須であり時間がかなりかかるものなので、長く運営を続けるつもりなら最初から作り込んだ方がよいと思います!
「個人制作スマホ音ゲーの先駆者」と言っても過言ではないChainBeeT。その広い収録曲の海を航海しながら、8年間の長い歴史を感じてみてはいかがだろうか。
(ライター:yscity インタビュアー:Kiry*)
音ゲーに収録されている名曲をピックアップ!
5月号ぶりの名曲ピックアップでございます。以前と変わらず
①多機種に収録されている
②音ゲーマーに人気
の2点からピックアップしていきます。
全体で3曲紹介させていただきます。
まず1曲目。
title:Stasis
artist:Maozon
公式音源は上がっておりません。
初出はLanota、BPMは180、ジャンルはDrumstep/Techcoreです。
収録タイトルはOverRapid、Arcaea、Phigros、Rotaeno、Paradigm:Rebootです。多いとは言えませんがコラボでは大体引っ張り出されている印象です。
氏は他にもmaimaiやⅡDXなどにも楽曲を提供しています。そして音ゲー以外のゲームにも楽曲を提供しています。この曲はラスサビの疾走感がとても良いので聞いた事が無い方も1度聞いてみてください。
続いて2曲目。
title:Halcyon
artist:xi
初出はBOF2010 BPMは191、ジャンルはRenaissance Hardcoreです。
収録タイトルはCytus、GROOVE COASTER、CHUNITHM、STELIGHTS、SDVX、Arcaea、オンゲキ、TAPSONIC TOP、Muse Dash、TAPSONIC BOLD、maimai、SEVEN's CODE、Cytus Ⅱ、Pump It Upです。意外と多いですね。
氏は他にも「FREEDOM DiVE」「Aragami」「ANiMA」等を制作しています。「FREEDOM DiVE」はどの音ゲーをやっていても1回は聞いた事があるのでは無いのでしょうか。
氏は先程上げた3曲以外にも沢山曲を作っているので、ぜひ調べてみてください。
最後に3曲目。
title:Alep-0
artist:LeaF
初出はBOFU2016、BPMは35~400、ジャンルはMUSICです。
収録タイトルはCHUNITHM、太鼓の達人、ChainBeeT、Orzmic、DanceRail3、Phigros、Arcaea、Muse Dashです。
氏は他にも「MARENOL」「もぺもぺ」「I」等を制作しています。
この曲は初登場から6年間商業音ゲーには収録されませんでした。その理由は氏が「BMSでプレイして欲しい」という想いがあり商業音ゲーへの依頼を全て断ってきました。しかし色々あったらしく収録に踏み切ったようです。
氏はこの曲以外にも沢山曲を作っているので、ぜひ調べて聞いてみてください。
今回の楽曲紹介は以上となります。次回の開催をお楽しみに。
(ライター:ぐだりあ)
音ゲーで学力up!
みなさんは音ゲー収録曲を選んだり聞いたりしている時に聞き馴染みのない歌詞、あるいは知らない言語を聞いたり見たりした経験はありませんか?
ということで今回は言語についてみていきましょう。
1 『Solstånd』など
まずはRigёl Theatre 氏の曲をみていきましょう。
彼のX(旧Twitter)には「天使、妖精、星をテーマにした民族音楽(Nordic Folk,Celticなど)を書く同人音楽屋」とあるように曲およびBGAに天使が多く存在しています。
そこで着目したいのが曲目です。
『Äventyr』『Solstånd』『Ljusa Stjärnan』の3曲についてみていきます。
まずこの3曲および作曲者の名義で使われている言語は「スウェーデン語」となります。
その名の通りスウェーデンのみならずフィンランドでも公用語として用いられています。
では早速曲名の意味についてみていきましょう。
Äventyr→冒険
Solstånd→夏至
Ljusa Stjärnan→輝く星
ということでどれもテーマにあっている歌詞というのが見て取れます。
聞いたことない人もぜひ聴いてみてください。
2 『QUATTUORUX』
先日maimaiに収録され多すぎるブレイクで人々を驚かせたこちらの楽曲についてみていきましょう。
こちらの楽曲はエイプリルフールに公開されたにも関わらず、それにしては豪華すぎるコンポーザーたちで作られた神曲超ネタMVということでかなり話題になった曲ですが、その中の歌詞に着目してみましょう。
この曲の歌詞は英語および「ラテン語」が用いられています。
ラテン語は後のイタリア語、フランス語等に派生したことで有名ですが、現在公用語としてはバチカン市国でのみ用いられています。
まずはこちらの歌詞
"Fatis finis", si vis scire quod.
"Falsa finis", insania veniet.
上の文を訳すと
「運命の結末」、それを知りたいのならば
「偽りの終焉」、狂気はそこに訪れる。
というようになります。
その他の歌詞についてもみていきましょう。
comus, furiae, give us more power.
これの
comus→一般
furiae→怒りの
ということなので日本語に訳すと
「大抵の場合、怒りは私たちに力を加える。」
MVで言うとからめる猫が殴ったシーンなのでMVにも準拠してると言えます。
このような感じで英語の歌詞にラテン語が混ざっている超ネタ曲の『QUATTUORUX』ぜひ聴いてみてください。
3 『sølips』
最後はこの曲です。
maimaiには14+(14.9) というかなりのボス曲、CHUNITHMにはmaimaiから初の15として移植されたrintaro soma氏による楽曲です。
そもそも曲名自体が英語のsolipsism、あるいはドイツ語のsolipsismusから来ていると言われています。
和訳すると「唯我論」ということになります。
そもそも唯我論とは「真に実在するものは自我とその意識内容だけであって,他我や物の実在を確実視することはできないという立場。」ということです。(出典 コトバンク)
今回着目して欲しい点は次の動画の1:52付近です。
ここで出てくる「Ich hab' mein Sach' auf Nichts gestellt.」
これはドイツの哲学者マックス・シュテイルナー氏の言葉で、これを訳すと「私の事柄を、無の上に、私をすえた。」という意味になります。
これはまさしく彼が「唯我論」を信仰することが伺えます。
このことを踏まえるとBGAの見え方も変わるのではないでしょうか?
まとめ
今回は3言語が使われている楽曲達を解説しました。
このほかにも多数の言語が使われている楽曲が多々あるので是非調べてみてはいかがでしょうか。
(追記)
私 R3404は今回のBPMの編集をもって受験のため一時的にBPMの編集を休止します。
短い期間でしたが記事を見てくださった皆様ありがとうございました。
(ライター:R3404)
譜面ガチ解説:『Phigros』Cuvism³(AT)
今回はPhigros×TAKUMI³コラボにてPhigrosに移植された『Cuvism³』のAT譜面について解説していきます。
BPMは194、曲の読み方は「キュービズム キュービック」です。
つい先日Phigros×TAKUMI³コラボが実現し、移植されました。
AT譜面総コンボ数は1088、難所は主に4つです。早速解説へ。
①難所
ここの指拘束地帯が特に難しいのですが、スロー再生を使いながら譜面研究をしてみるとあらびっくり、裏のリズムに合わせてかなり単純な譜面で構成されていることが分かります。
それでも意識すべきはやはり同時押しのタイミングです。どこが同時押しか、どこで指が遠くにいくのかを整理して挑みましょう。
②難所
ここは難所というよりかは巻き込みやすい箇所ですね。Phigrosという音ゲーはノーツの横判定がかなり広く設定されているため、この速度でだんだん重なっていった時に巻き込みが起こりやすいんです。この譜面においてはノーツがだんだん右へと寄っていくので、若干左側を叩くことで巻き込みを回避することができます。
③難所
ここに関しては4kの地力が問われる場所です。
最後の部分に関しては
・左側2右側2で分ける方法
・外側2内側2で分ける方法
の2つがあります。後者に関しては4kが苦手な方におすすめしますが、やはり安定という面では厳しい部分があるので、他の譜面で積極的に4kの(人差し指・中指の2本を動かす)練習をしていきましょう。
④難所
脳トレ地帯がやってきました、やってきてしまいました。しかし、縦になっている判定線(5kのラインを示している線)のうち、1本だけ他の3本より光っています。これは僕も最初のうちは気づかなかったのですが、左手右手でそれぞれ何本の指で処理すれば良いかを示してくれています。
このように、譜面をよく知ることで譜面が簡単になるのはよくある例です。他の譜面にも応用が効きますね。
今回はCuvism³を解説していきました。僕個人的には非常に作り込まれた譜面で、かつ分かると非常に楽しい譜面だったので楽しく詰めることができました。
次回のガチ解説もお楽しみに。
(ライター:Kiry*)
音ゲーパズル
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