EDHで上級者になるために(準備編)

はじめに

統率者戦(以下:EDH)の上級者になるためには何が必要なのか?EDHのデッキ単位の攻略記事は数多くあるが、プレイング指南や総論少ない様に感じる。
好みのデッキを年単位で使う事が多いEDHにおいて、デッキ単位での解説などは書きやすいと思うが、EDHのプレイングについて書く事は何処かおこがましさがあり、書きにくい題材なのだろう。

今回、大それたタイトルで記事を投稿してみようと思ったのは、私自身が考えている事を文章化して整理する目的と、初心者などに教えを乞われた時にまとめた文章を示してあげたいという目的から記事を作成した。

自分なりにEDHを長期間行った上で感じた経験則に加え、ゲームを始めたての初級者や中級者を観察して、どの様な観点が足りずに勝ちを逃しているのか考えた成果ではあるが、この考察が読者の環境に合わなかったり、求めるものと異なる場合には途中でブラウザバックしてもらえばいい。

【過去のEDH大会結果や活動など】
筆者がEDH大会に参加した際にまとめたブログや最近の活動を紹介する。
大会結果などは店舗のHPや他の方のSNSを見れば確認可能なものもいくつかあると思う。大会決勝にはそこそこ行けるが決勝で負ける事が多い人。

第三回統率者選手権+当時の大会での戦歴
バルソーを使用してからの戦歴
統計EDH(仲間内でやっている対戦会の動画)
Lotusさん動画
※コロナ禍で大会参加などが滞っているが、最近はシャーブラズ+ブラーリンやティムナ+クラムなどの共闘ジェネラルを練習中。

【20220312追記分】
コマンダーサミット大阪最強統率者決定戦Top4
統率者神決定戦予選5位通過
上記神決定戦準決勝動画(44:00~)

【準備編】

いわゆるガチ帯(cEDHだったり、デッキのパワーレベルで8や9以上)のデッキを使用している人を観察していて、ゲームを遊ぶ前の前準備が圧倒的に不足しているように感じる。
そこで今回は、ゲームを始める前にどのように準備を行い、どのような心づもりを持てば上手くゲーム運びができて勝ちに近づけるのか【準備編】としてまとめることにする。思うに中級者は自分のデッキの事をあまりにも知らなさすぎる。

自分のカードを覚えよう

まず、自分が使っているデッキのカード100枚位はプレイに支障が出ない程度にはテキストを理解・暗記するべきだ。上級者を目指すため、強いと言われるデッキをコピーしてデッキを用意するのは肯定されるべきだと思うが、実戦でカードの効果を間違ったり、不確実な記憶によるテキストに基づいてゲームをする人も多いと感じる。自分のカードを記憶していく事によりEDHで頻出のカードを理解することができ、相手にカードを使われた時にも瞬時にカード効果を理解できてゲーム上の選択がスムーズに行えるようになるだろう。

自分のデッキの特性を知ろう

自分のデッキがどのようなプロセスを経てゲームに勝利するか分析・理解するべきだ。筆者の経験上ではガチ帯において、ある程度の習熟度のデッキ+プレイヤー同士が集まると、3ターン目にはゲームの大きな転換期を迎える事が多い。
少し解説すると、ガチ帯は3ターン目にゲームが終了させるか他プレイヤーの勝ちの目をなくす動きが行われる可能性が高く、3ターンでゲームが終わって(またはほとんど決して)しまうか、誰かが3キルを止めてその後のゲームが続くかという事になる(時には3キルを止めたプレイヤーが3キルして来る事もあるが)。このようなスピード感だという事を良く理解したうえでどちらの戦略を採用していくかを事前に決めておく必要がある。
このような環境で生き残るため、筆者は以下の要素がデッキに求められると考えている。
※便宜上、解説で【第○要素】と記載した後の言及では省略のため単に①等と記載する。

【第①要素】
「マリガン・プレイ含めて最速を目指した場合、高確率で3ターン目にゲームに勝利する、または他プレイヤーの勝ち目をなくす動きが可能。」

 もちろんカードゲームであるため、高確率と言っても100%である訳ではなく、6-7割程度の確率で仕方ないと思う。最近使われるカード組み合わせとしては、“神託者+デモコン(契約)”のコンボや特定デッキでのむかつき等が挙げられる。
後述する他の要素にも関連するが、EDHでも「攻撃は最大の防御なり」という格言は有効であり、「①に対抗する事が困難であるため、自分が最速で勝利する。」というのも重要な選択である。

 【第②要素】
「最序盤に展開をしながら①に対応できるだけの高水準な妨害が行える。」

①が“攻撃”側の考え方であるならば、②は主として“防御”側の考え方である。当たり前の事だが、EDHはターン制で行われているため3-4番手になってしまうと、1-2番手が3ターン目をむかえてゲームを終わらせにくるにも関わらず、自分たちは2ターン目までのリソースでしか対応できない。
ここを工夫しながら乗り越えるため、2ターン目までの動きを行いながらも妨害できるカードを選択している必要がある。

ここで重要なのは、ただカウンターを採用すれば良いというだけではなく、自分が仕掛ける側になった時に相手の妨害を阻止しやすいか否かの観点や、複数手の動きを一挙に止められるカードの採用も求められる点である。
たとえば、カウンター1枚で阻止出来ないコンボが襲い掛かってくる事が(教示者等で)分かっている場合、カウンター1枚では対処できないが、沈黙では妨害できる。また、自分が仕掛ける場合でも、沈黙が通った後なら安心してコンボを行えるなど、攻守共に優秀なカードもある。
王道のカウンターの中で挙げるなら、テンポ損しにくいようなピッチや低マナカウンターが挙げられるだろう。

【第③要素】
「①と②が妨害し合ったり、牽制し合った時に中~長期戦でアドバンテージを得る事が可能。」

②の働きにより、世界に平和(4ターン目以降)がおとずれました。となった後に、そこから安定してアドバンテージに繋げられるデッキはかなり図太く立ち回れる。そのアドバンテージを得た後は、3ターン目用のコンボを狙っても良いし、中期戦以上の流れでしか狙えないコンボで勝利しても良い。
この要素はジェネラルの要素が特に強く出る特色であり、ドロー機能を内蔵しているジェネラルは③を充足しやすい。

【第④要素】(他の要素に比してかなり付随的な要素)
「対戦相手3人が妨害を持っている状況を崩せる構築を採用している。」

①~③が絡み合い、長期戦になると自分の手札内の有効札よりも相手の妨害札が多くなってくる。そこまで至った場合、④の準備がないと盤面は有利だが勝ち切れずにそのまま相手の④で押しきられた。となりがちである。
④に寄与するカードは複数タイプあると考えている。
ジェネラルの場合はブルースタールやクラムといった高いクロックで殴る事でゲームを動かしていくものになる。多くの場面で自分のすぐ上家を攻撃して上家にコンボをスタートさせる事によって卓内の妨害を消耗させ、その後に少なくなった妨害相手に自分の仕掛け札で勝つという事になる。
コンボを始動した上家の仕掛け札が卓の自分以外の妨害札よりも多かった場合、優先権をパスするとそのままGGとなる事もあるため、どの程度を許容するかはプレイングといったところだろう(④が必要無いゲームでは、殴る先はその他の要因で決めるべきである点も難しい点)。
 
デッキ内のカードとしては、難問の鎮め屋でカードをごり押しする事や、人間指定の魂の洞窟+撤廃者、レインジャー長でそのターンの妨害を排除する事が挙げられる。
また、エムラクールで一人のターンを使って、あわよくば勝ちを狙いながら卓の妨害札を消耗させる事も考えられる。エムラクールの場合は卓内のどの順目のプレイヤーのターンを選ぶかは非常に難しいところであり、上手く使いこなすのは相当の熟練度を要する。
この要素に対抗するため、もみ消し等の起動効果に対する打ち消しも多用されるので過信しすぎないようにしたい。


これら①~④を踏まえてEDHで評価の高いトラシオスを考察すると、統率者ピッチの登場により②を満たすカードであり、かつ、マナ加速をそのまま③に置き換えられる事にくわえ、トラシオス自身が統率者として使用できるので高い評価を得ていることが分かる。また、ブロッカーとしても大変優秀で、森の知恵等の使用回数を増やす点も③に寄与している。

対照的に、一見強力なジェネラルだが上記要素によって勝ちきるのが難しいと感じるデッキにパコ&ハルダンがある(使用者の方すいません)。 
ティムールカラーの共闘でありながら、ジェネラル特性からマナ加速をしても①と言えるだけの動きができない。色や能力から②③が売りになると思いきや“強いプレイヤーから殴り殺す→除外している強カードが使用できなくなる。”という背反している要素を持っており、一人を殴り殺しているのは良くみるが、安定して勝ちきるのはかなり難しいと感じている。

あまりにも現実的な話で申し訳ないが、この①~④というものは、各デッキ毎に100点をそれぞれにステ振りするようなものではなく、ジェネラルや色や構築毎にそれぞれの値には絶対値が与えられ、時には圧倒的な差になる事はご理解頂きたい。もちろん、自分の好きなデッキで勝利を目指す事も大切なフォーマットであるから、現実を直視した上でご自分のジェネラルで勝利を目指せる基本戦略と構築を確立して頂きたい。

キープ基準を確立しよう

自分のデッキの特性が分かった後にその特性に合わせてキープ基準を確立するべきである。キープ基準を検討する場合、自分が1番手~4番手の手番+自分よりも手番が先のプレイヤーのデッキタイプ(①と②どっちに重きを置いているかなど)等、実際のゲームで起こり得る組み合わせを前提として検討して頂きたい。
例:自分が1番手で①を得意とするデッキを使っていて下番に②要素がすくなければ3キルハンドとするべきであるし、4番手+上②①②であれば自身の妨害は少なめであっても生き残れる可能性があるため、手番逆転のために挑戦的なプランを採る、など。

この作業が大切な理由として、自分のデッキのポテンシャルを正確に把握する事が大切だからである。良く見る失敗として、特定のデッキに負けが込み過ぎるとマリガンの基準が厳しく(というよりも極端に)なっていき、そのデッキでは非現実的な初手を求めて自爆しているケースが多い。
こればかりはデッキ構築の段階で決まっているものなので、どのスピード感、プレイスタイルを求めているのか、その基準にデッキが応えてくれるようになっているのかも含めて対戦前の事前準備で十分に検討を行うべきである。

一人回しをしよう

キープ基準を確かめた後はキープの前に決めた手番の前提に基づいて5ターン目位までの回し練習をしてみると更に効果的である。この動きを正確に、かつ、迅速に行おうとする事で、自分が使用しているカードの効果を覚える事にも繋がる。
この助言は対戦時にお互いがロスする時間を咎めている訳ではなく、自分のデッキを余裕を持って回せるようになる事によって他のプレイヤーを観察する余裕が生まれ、その情報から自身に有利なプレイや判断が出来る可能性が上がるからである。テンパっている状態では良い思考が出来るわけがない。
一人回し中に特に意識してほしいのが、自分のデッキの勝利条件を正確に把握する事である。カードAとカードBが揃った時に何マナ浮いていたら、戦闘前メインだったらとか、そういう前提条件は強く意識して覚えて欲しい。せっかくコンボをスタートして他プレイヤーの妨害もなかったのに勝ちきれず、というのは自分も損であるし、ゲームを壊す事になるので最低限覚えておきたい。

状況別でカードの脅威度が変わることを理解しよう

前項までを実践してもらえれば、自分のデッキに対する理解度は格段に上がったと思う。最後の仕上げとして「カードの強さ」というものは状況別に大きく違うという事を理解していただきたい。
極端な例であるが、強力なカードであるネクロポーテンスもライフ1の状態ではセルフロックと変わらないため対処する必要はないが、ライフ40点のプレイヤーがキャストした場合は対処した方が良い事が多いだろう。このような極端な例であれば簡単にご理解いただけると思うが、微妙な差になるとその点が不明瞭となるプレイヤーも多い。
先日見たプレイでは、トラシオス+息詰まる徴税(以下:徴税)に負けたプレイヤーが“徴税=強カード”と思い込み、別のゲームでティムナ+クラムがキャストした徴税をカウンターしていた。もちろん、状況次第でいくらでもカウンターした事を肯定も否定も出来る状況であったが、カウンターした理由を聞いた際の答えは「徴税は強いから」というものであり、マナフラッドを受けられるトラシオスデッキから出てくる徴税と、ティムナ+クラムデッキから出てくる徴税とを同一視して妨害などを当てていては妨害がいくらあっても足りないだろう。使わなくて良い妨害を使わずに見切りをつける事も時には(というか常に)重要なのである。
この考え方が最も役に立つのは妨害時であるが、この考え方を利用して自分のデッキが仕掛ける際に対戦相手からは脅威度が低い様に見える順番でカードをプレイする事で相手の虚をつくプレイを演出する事もできるだろう。

まとめ

以上、色々と挙げているがある程度EDHをやっている人にとっては「当たり前」の事の列挙だっただろう。しかしながら、その「当たり前」を高い錬度で修めておく事が上級者を目指せる唯一の方法ではないだろうか。
筆者自身、EDHというゲームは勝っても負けてもよく、満足のいくゲームができる事が至上であると考えている。この記事の全部または一部が読者のお役に立ち、EDHプレイヤーの裾野が広がってくれれば幸いである。

以上。

※次回はプレイ編を書きたいのですが、今回の記事で疲れすぎたのでしばらくして回復したら書きます。この記事の内容以外にも準備編として追記するべき事やリクエストなどあればコメント欄にお願いいたします。余裕があれば対応します。

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