ばあちゃんと介護士見習いの日々
①ばあちゃんが介護保険を受けるまで
私はとある施設で介護の仕事をしながら祖母の介護をしていた者です。(今は施設に入所中です)現在、介護に悩んでいる方、結構多いと思います。若い方でも将来が不安になったりするでしょう。私の体験が少しでも同じような境遇の方たちに届くといいなと願いながら、祖母の介護の様子や私の愚痴も聞いていただけるとありがたいです。
現在祖母は78歳です。今年79になります。そうです、介護を受ける年齢としては「まだ若いのに」と言われる部類なんです。でも覚えておいてください。介護に年齢は関係ありません。若かろうが何だろうが、介護はやってきます。事前準備はできるだけ早めにしましょう。我が家は平屋の一戸建て(昔の家でボロい)・私が隠居で祖母と同居・両親と弟が本家に住んでいる、という感じです。(同じ敷地の同じ住所です)ちなみに祖父は私が7歳の時に亡くなっています。なので祖母は何十年も隠居にひとりで住んでいました。食事も別ですが私たちが学生の頃は誕生日や年末年始、学校行事は一緒に参加していました。まずはそんな祖母が介護を受けることになるまでをお話ししたいと思います。
私は退職後なかなか再就職先が決まらず、母の知人の薬剤師さんにそれとなく「求人を募集していないか」と尋ねたところ、その薬剤師さんが「うちの病院は介護スタッフが常に足りない、更に今は事務も足りなくててんてこ舞いなので是非来てほしい。先生には話をしておくから」と言われ、次の日に面接を受けるとその場で合格が出るくらい緩い感じで再就職しました。ちなみにそれまで医療・介護には就いたことがありません。普通に接客業とか一般事務みたいなことしてました。一時期歯科助手もしましたが不向きだったので半年で辞めました。そんな私はまず医療事務の資格を取るべく事務の仕事を覚えつつ、片手間にヘルプとして行っていたのが『通所リハビリテーション』です。しかし資格を持った事務員さんが産休明けで復帰し(1カ月もなかった)、もう必要ないということで通所に左遷されました。(辞めるときに契約と違うとゴネました)そこで初めて出会ったのが今でいう「認知症」の利用者さんです。病院は来る方を患者さんといいますが介護はサービス事業所なので利用者さんと呼びます。
ひとくちに認知症といっても進行具合やその人本人の性格・暮らし方も様々なので症状もいろいろあります。本当にいろいろです。本当に認知症なのかと疑いたくなるほどしっかりして見える方もいらっしゃれば、誰から見ても明らかにそうと分かる方まで。うちの祖母はどちらかといえば前者です。……人前では。
まあそれはさておき、認知症の方のひとつの特徴として「すり足」があります。これは後に地元にある大きな病院の物忘れ専門外来でPTOTさん(理学・作業療法士)に聞いた話ですが、認知症の方は注意力が散漫になりやすいので段差などが分かりません。足が上がっていないのもわからないので歩くとき「すり足」になりやすいのだそうです。私の祖母も歩くときはすり足でした。
通所で働き始めてしばらくして、祖母が何もないところで躓くようになり、ふと祖母の足元を見て「あ。うちの重度の認知症の利用者さんと同じ歩き方してる」と何となく思い、母にそのことを話すと、母が思いがけずこんなことを教えてくれました。
「そういえば最近、野菜の袋詰めを間違えるのよね…数が多かったり少なかったりするの。前からちょくちょくあったんだけど、最近特にひどくって」
なんということでしょう。うちは農家をしていたのですが、生産は両親と祖母・梱包や出荷は母と祖母(たまに私や弟)でやっていたのですが、今まで感覚でちゃんとできていたことが出来なくなったというのです。これを聞いた瞬間「今だ!」と思いました。何がって申請です。準備です。介護を受けるための。まず介護保険制度を使うには、その市町村にある地域包括支援センターに申請をしなくてはいけません。大事なのは早めに申請をしておくことです。じゃないと申請してから許可(介護認定)が下りるまでかなり時間がかかるからです。どうにもならなくなってから申請しても遅いんです。申請の流れはググればいっぱい出てくるので割愛しますが、まず包括に行けば間違いないです。市町村の介護を扱う窓口でも構わないと思います。色々教えてもらえると思うので。包括に行かなくちゃいけないのは変わらないんですけどね。あと申請するといろんな人が家を訪ねてきます。勿論アポも取ってくれます。本人と家族がいないと意味ないので。家の掃除はちゃんとしておきましょうね。マジで。結構見られてますよ。写真も一部撮られます。資料として必要なので。介護保険の認定が下りれば住宅改修の補助もでるので手すりなんかも簡単に付けてもらえますし安いです。あと早い。主に玄関、浴室、トイレになると思いますがこれも追々。
そんなわけで「すり足」から大事な情報を引き出せた我が家はまだ取り返しがつかなくなる前に介護保険を受けられ、サービスも受けることになりました。本当に良かった。これだけは。
ひとつ世の中の誤解を解くのなら、認知症って記憶喪失じゃない、ってとこでしょうか。認知症とは短期記憶がもたなくなることです。つまり昔のことはよく覚えています。最近のこと…進んでいるとほんの数秒前のことも覚えていません。今の祖母の状態だと二日前を覚えていれば拍手ものです。なので昼夜逆転したりお金の計算ができなくなったりします。
あと、これも知り合いの看護師さんに聞いたのですが、鼻が利かなくなるそうです。においが分からなくなるんです。つまり味も分かりにくくなります。だから食べた気がしなくてご飯食べたっけ?ってなるのかもしれませんね。うちの祖母は食べたことは覚えていますが味が分かりにくいからか、たまに人が冷蔵庫に入れていたお菓子なんかを黙って食べたりします。割と高いやつばっかり食べられるのでくっっっっそ腹が立ちます。よりによってそれかよ!?他にもあるのに??!!!ってなります。へこみますし腹が立つしでストレス待ったなしです。そして勝手に盗ったくせに「●●さんにもらった」とか「前に買って冷蔵庫に入れておいた」とか言います。もらってないし買ったのは私です。一日の終わりの楽しみなのに!と思いますが我慢します。言われたことは覚えてないですが、認知症の方でも「何か言われて嫌な気分になった」ことは覚えてるので出来るだけ言わないようにしています。これが介護の辛いところですね。言っても伝わらないし本人覚えてないのに嫌われる、みたいな。私は嫌われても別にいいと思っているので言うときは言いますが、母にその役目が回ってくると申し訳ないし可哀そうな気持ちになるので出来る限り私が対応しています。
ちなみに父は介護にはノータッチです。自分の母親が履いているリハビリパンツの種類も知りません。男の人なんてそんなもんだとよく言われますが、勿論そうじゃない方も知っています。だって奥さんが認知症になったら介護しているのは旦那さんなんですから。介護は女性だけがするものではありません。誰にでも等しく理不尽に訪れるのが介護問題です。
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