ファイティングポーズ

全く知らない人のボクシングに胸を衝かれた。

ボクシングにのめり込み過ぎないように、後楽園ホールでボクシングを観るのは知り合いだけ、と基準を設けていたため、滅多にない感動だ。

今回も例の如く、友人2人が出場していた興行だった。

しかし、仕事の都合で2人の試合は観戦できず、メインイベントのライト級トリプルタイトルマッチだけを観戦しに行った。

状況上、数時間前から友人らの試合は観られないと分かっていたので、今夜の後楽園ホールは断念してもよかったのだが、久しぶりの後楽園ホールに足を運びたかったのだ。

あいにく今年は新型コロナウィルスの影響で、大学リーグ戦も中止になり、プロボクサーの友人達の試合も一向に決まらず、後楽園ホールに行くチャンスに恵まれていなかった。

(後楽園ホールという聖地に関する記述はまたの機会に。)

だから今日こそは後楽園ホールに行って生で試合を観戦するのだ、と意気込んでいたのだ。一週間前の目的は友人たちを応援する、だったにも関わらず、本日昼頃には、9ヶ月ぶりの後楽園ホールに行くという目的にすり替わっていた。


満を辞して訪れた後楽園ホールは新型コロナウィルスの影響をあまり感じられなかった。違いといえば、名前と電話番号を観戦チケットに記入することと、検温とエレベーターの収容人数の制限くらい。

私が到着した時には、既にファーストラウンドが始まっていた。2人とも有名な選手で名前は聞いたことがあった一方で、中量級に興味がなかった私はこの場で初めて2人の経歴や戦績を調べた。

チャンピオンはアマチュア100戦のボクシングエリート28歳。
チャレンジャーは26歳でボクシングのキャリアをスタートさせた38歳。

10歳差とは言え、中高時代からボクシングをしている選手との差は確実にあるだろう。

実際チャンピオンの試合運びは手練れており、パンチをもらっても余裕そうな構えな上に、技巧的なパンチのまとめ方。アマチュアエリートの典型的なボクシングスタイルの一つだった。

スキルは一枚上手だし、おそらくこの試合チャンピオンが持っていくなぁと思っていた。

一方で、チャレンジャーは序盤からガードを高くして相手に攻め込み、どんなにパンチを外されたとしても諦めずに姿勢を変えない。最終ラウンドを迎えるまで目を離せなかった。

なぜなら、チャレンジャーに自分を重ねてしまったからだ。対戦相手は長年の経験を積んでいるエリート。一方、私もまた会社で、モンスタークラスの頭の良さを持ち得、更には行動力も抜群の人間達を相手に議論し戦っている。(中途半端に勉強してきた自分を毎日恥じている。)

だからこそファイティングポーズを取り続ける彼に、美しさを感じてしまった。

彼は判定で負けてしまったが、38歳というボクサーにしては高年齢である中で、これからもファイティングポーズを取り続けてくれるらしい。

あと3年は続けていただき、私にモチベーションを与え続けてほしい。

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