♯101 しょっぱい夢
薄暗い部屋の隅で目が覚めた。昨日は帰りが遅く、娘の顔を見れていない。
まだ15の子供だというのに、高校には行かず自分も働くと言って喧嘩をしたままだった
娘には高校に行ってほしい。娘の為になら仕事も頑張れる。親子2人でも十分幸せだぞ、と言ってやるんだ。
重い体を起こして台所に行くと、小さくて丸いお結びが置いてあった。娘の姿はどこにもない。1つ手に取り口にすると、口いっぱいに広がる甘ったるい味。
「あいつ、塩と砂糖を間違えてら」
吐き出す為に流しに向かい電気をつける。カチ、カチカチ。
「何だ? 電気が切れてるのか……」
それに気がつくと、吐き出すのはヤメた。電気も変えれないほどの貧しさにあの子は一言も文句は言っていない。電気もない、薄暗いこの台所で自分の為に作ってくれたこのお結びを捨ててはいけないと飲み込んだ。もう一口。やっぱり甘い。
しかし、途中からしょっぱさが加わってくる。流れる涙を止めることなんてできなかった。
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ドミノとシイナは、風の子・マロンから「塩味の夢のカケラ(egg)」を受け取りました。
「こ、これ、本当はどんな味なのかな……」
シイナは、涙と一緒におにぎりを食べ続ける人影に目を向け鼻をすすりました。
「お互いの思いが詰まった、素敵な味には違いありませんよ」
ドミノは小さく笑って、そう答えました。
BOX SPACE:夢現
風の子と契約を結んでいるコントラの「ドミノ」と「シイナ」。
ドミノ達は夢の向こう側(現実)から迷い込んだ迷人(まよいびと)の夢に入り「夢のカケラ」を集める役目がある。 かつて世界を守っていた8人の王達の墓には眠人(ねむりびと)が『墓の鍵』を眠りながら守っている。眠人(ねむりびと)の眠りを安定させる為に夢のカケラは必要なのであった。
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