#91 浜辺の夢

習いたてのギターを片手にお気に入りの場所へ。俺はそこで歌うって決めてたんだ。

うまく張れない弦にチューニングなんて関係ない。ただ、ギターを担いだ姿を、いつも黒い犬を散歩させてるあの子に見てもらいたかったんだ。

波打ち際に続く僕の足跡は、何故か波が寄せても消えやしない。より濃く、より深く。

ふと、足元に小さい頃飼っていた小さな白い仔猫が鳴いていた。
やぁ、君か。
俺はその場に座り、ギターを鳴らす。

僕の歪な歌声は、寄せては返す波音に消されあの子には届いて無いようだった。

____________________

ドミノは、歪んだ音の「夢のカケラ」（egg）をシロイトから受け取りました。

「す、好きだったんだね、あの子の事が」

シイナは、浜辺で歌う青年を見つめて目を細めました。

「まだ、諦めてないみたいですよ」

ドミノとシイナは、再び立ち上がり浜辺を歩いていく青年の後ろ姿をいつまでも見つめていました。

BOX SPACE:夢現
風の子と契約を結んでいるコントラの「ドミノ」と「シイナ」。　
ドミノ達は、夢の向こう側（現実）から迷い込んだ迷人（まよいびと）の夢に入り「夢のカケラ」を集める役目がある。　
　かつて世界を守っていた8人の王達の墓には、眠人（ねむりびと）が『墓の鍵』を眠りながら守っている。眠人（ねむりびと）の眠りを安定させる為に夢のカケラは必要なのであった。