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#109 ドングリの夢

おーい、と呼ばれて私たちは先生の元まで駆け足で戻って来た。

「皆沢山集めましたか?これからクッキーを作ります」

笑顔の先生に比べて私たちの眉間にはシワが寄り首を傾げる。

「どうやって作るんですか? こんな外で」

私たちの手には山ほどのドングリ。クッキーを作るには不釣り合いな場所での発言に騒めきが伝染していく。

「材料はみんな集めて来ましたよね。それを使います」

私は手の平いっぱいのどんぐりを鼻に近づけ、食べ物か確認する。

「昔の人は食べてたんですよ」

その言葉に、私はこっそり小さなドングリを口に含んで噛んでみた。

「ヴ」

口いっぱいに広がる苦さに、私はどんな恐ろしいクッキーができるのか怖くて仕方なくなった。
___________

ドミノはドングリを吐き出す少女を見つめクスリと笑いました。

「苦いでしょうね。熱湯の中で渋さを取らなければ……」

「た、食べた事あるの?」

シイナは、戻って来た風の子・マロンから「渋いドングリ味の夢のカケラ(egg)」を受け取りました。

「墓守の時のいい思い出です」

シイナは、ドミノも渋いドングリを食べてああやって顔を歪ませたのかな、と想像すると可笑しくて笑ってしまいました。

BOX SPACE:夢現
風の子と契約を結んでいるコントラの「ドミノ」と「シイナ」。 
ドミノ達は、夢の向こう側(現実)から迷い込んだ迷人(まよいびと)の夢に入り「夢のカケラ」を集める役目がある。 かつて世界を守っていた8人の王達の墓には、眠人(ねむりびと)が『墓の鍵』を眠りながら守っている。眠人(ねむりびと)の眠りを安定させる為に夢のカケラは必要なのであった。

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