Kanako.N
心の闇に踏み込んだディープなエッセイです。
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「私小説を書いてみたら?」 きっかけは、かかりつけの歯科院長のひと言だった。 御歳80とはおもえない集中力で治療をしながら、あなたは相当情熱的な人生を送ってきたでしょう?などと妙にのんびりした調子で話しかけられてこられるユニークなお爺ちゃまの他愛ない言葉が、わたしには妙に響いた。 なにか意味がある、直感的にそう思った。
そこは駅からほど近いマンションの一室にあった。エレベーターに乗って10階でおりて、インターホンで名前を告げる。ほどなくしてドアがひらく、玄関からふわっといい香り。