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コロナ襲来。その時僕は

僕はこの一連のコロナによる影響を少し甘く見ていた。

政府の緊急事態宣言を受けて、4月11日から5月31日までの約1ヶ月半、店の営業を休んだ。

仮に営業してもお客さんはほぼゼロだし、何より僕とウチの店長2人は皆既婚者で、家族と暮らしている。

既婚者にとっての仕事は家族の支えがあってこそだ。

その家族にとって安心して日々送り出せる職場でないといけないと思った。

当然お金の心配はあったが、あの時点で国や都からの休業補償や諸々の助成金等の話も出ていたので、ザックリ計算し、秋頃までなら耐えられるだろうと判断した。

そして始まった自粛期間生活。実際僕は毎日それなりに楽しんでいた。

引越ししたばかりということもあり、新居と家族団欒を満喫していた。

平日の日中、妻は自宅でリモートワークをし、僕は3才半の娘の遊び相手と家事。土日は終日家族でのんびり。

幸い妻の収入は安定していたので、こんな生活もしばらくは悪くないとさえ思っていた。

もちろんそんな日々の中でも思考の大部分では仕事のことを考えていた。

一緒にやってきた仲間とその家族、愛着のある店とそれを応援してくれている全ての人たちのためにも、このままという訳にはいかないという想いだけは常にあった。

ちょうどこの頃、以前から気になっていたキングコングの西野亮廣オンラインサロンに入ってみた。

お笑い芸人でありながら、マーケティングなどのビジネス系の能力に彼が長けている事はなんとなく知っていた。

1日の大部分を3歳児とのおままごとや絵本読みなどに費やしていたので、脳みそが刺激のある情報と今までの自分にはない新しいアイデアなどを欲していたのかもしれない。

実際、毎日配信されるサロン記事は情報として面白く、即自分の状況にも置き換えられる話しも多かった。月額1,000円は正直雑誌や新聞、大抵のビジネス書と比べてコスパ最強だと思う。

他にもホリエモンやオリラジ中田のYou Tubeなども好んで観ていた。

今思えば行動が制限され、同じような日々の暮らしの中で、今まで知らない情報をたくさん浴びる事で余計な不安を紛らわせていたような気がする。

月日は流れて6月になり、ようやく店を通常通り営業再開することにした。

ある程度の覚悟はしていたが、店を取り巻く街の様相は一変していた。

店のすぐ目の前にある慶應大学は完全に休校な上に、周りの企業の多くがリモート勤務をしているからなのか、街の人口は体感だと1/20くらいに減っている。

お客さんに話を聞くと、「出社は週1日で後は自宅勤務」だと言う。

もちろん会社や部署によっては完全にしばらく自宅勤務という人も多いそうだ。

最近少しずつ出社する人が増えて来た感はあるが、聞けば飲酒を伴う会食はまだ控えるようにと会社からお達しが出ているそうで、会社近くの店には入らず、地元で飲んでいるのだとか。

オフィス街の飲食店にとって、まだまだ見通しは明るくない。

不安と焦る気持ちを抱えながら、毎日サロンに投稿される西野さんの記事を仕事の合間に読み込んだ。

「機能検索から人検索へ」「SNSは搾取ではなく与えるチャンス」「商品の意味を変える」「キャッシュポイント」「ストーリー」

いろんな言葉が脳と心を刺激した。なるほどと本気で思うことも多かった。

だが理解できる事と実行できる事は大抵の場合別の話だ。バットの振り方、ボールが飛ぶ角度なんかを頭で理解しただけではホームランは打てない。

このままではダメだ。何かすぐに手を打たなければ。でも何をやったらいいんだ。でもきっと裏技や近道なんてない。

今までより数こそ少ないが、それでも来店してくれるお客さんに対し、僕はマスク越しに今まで以上に話しかけ、感謝の気持ちを伝えた。

こんな中でも来てくれたこの人にとっての「知ってる馴染みの店」になろう。

お客さんが少ないからこそできる事がある。

いや。正直に言うと、あの時はそれしかできる事がなかった。

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次回は「差し込んだ一筋の光」です。

今回も最後までありがとうございました!


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