見出し画像

床屋

 床屋が小さい時嫌だった。髪を洗われるのが嫌なのだ。当時まだ顔を水につける事すらできず、家で髪を洗い際は、新製品のシャンプーハットを使ってじゃないと洗えなかった。
 ラジオだけが流れている静かな床屋だった。「ケメ子の歌」が流れていた。面白かったので、一発で歌を憶えた。
 閑話休題。ケメ子って名前、不思議に思いませんか。何処から来た名前なんだろう、ってずーっと思ってました。Wikipediaに載ってました。最初、ケメ子はケメッ子だったらしいのです。それというのも彼女は化学が得意でそれでケミカルからケメッ子になったそうです。それが短縮化されケメ子になったということでした。実際の人物だったのですね。
 床屋も最近は髪を洗わなくなった安い床屋が登場したので、小さい子供でも平気になっただろうと思う。バキュームで切りカスを吸引するのだ。連日満員で商売繁盛しているみたいだ。ただ1000円カットで謳っていたのに、消費税アップや物価高とはいえ、どんどん値上げしていってるのは気に食わない。仕方のない事ではあるけれど。
 牛丼屋が昔、牛丼しかなかったのに、メニューが増えて、従業員の負担が増えた。100円ショップに300円やら500円の商品が並び出した。どれも企業努力の賜物なんだろうが、妙に気に食わない。
 また横道にそれた。床屋の話である。福岡市に住んでいた頃、若い女性の理容師さんばかりで、マッサージまで丁寧にしてくれるところがあった。そこが忘れられない。30数年前の話であるが、頻繁に通うようになった。代金は6000円くらいと標準の床屋よりは高かったが、顔のマッサージや、腕のマッサージなど、若い女の子にしてもらったら、こんなに気持ちのいいことはない。小さい頃嫌だった洗髪も美容院のように仰向けになって洗ってくれるので、水が顔に飛び散ることはない。この洗髪が何とも気持ちよかった。
 北九州に転勤になり、家族が増えると、そんなエクスペンシブな床屋にはとてもいけない。息子の幼稚園の同級生が床屋をやっていたので、そこで切ってもらうことにした。いわゆる標準的な床屋である。ラジオの代わりに有線で音楽を鳴らしていた。ここの奥さんがマッサージに念が入っていて、とても気持ちよかったのだが、旦那の方は腋臭があって、あまり気持ちのいいものではなかった。息子の手前、いつも一緒に床屋に行っていたのだが、客がQBハウスとかにとられたのであろうか、息子が小学生になる頃にたたんでしまった。二日市の方に兄弟が同じく床屋をやっていて、そこへ行くといっていたが、どうしているかわからない。
 今は490円で坊主にしてくれる美容室に通っている。尤もここも値上げして550円になったが。普通のカットもタイムセールで790円、普通で980円である。当然ながら客はいつも満員で1時間くらい待つような次第だが、何処よりも安いので、ここに通っている。だから僕は大概坊主頭である。

いいなと思ったら応援しよう!