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ゲリピーマン(ショートショート)

 よいこのみなさまへ、ごちゅうい。
 このものがたりは、けっしてごはんをたべるまえとか、たべているさいちゅうとか、たべたあととかによんではいけません。このちゅういをまもらなかったばあい、どのようなことがあっても、せきにんはとれませんので、よろしくおねがいいたします。

 怪獣が海から上陸した。港町を破壊しながら都市部へとむかっていく。自衛隊が対応したが、戦闘機も戦車も用をなさない。
「こんな時にTVなら正義のヒーローが現れるのに」
 人々はそういいながら急いで避難した。
 
 下野陽太。24歳。外回り営業のセールスマン。独身。趣味、深酒。今日も二日酔いで顔は青ざめていた。
「ト、トイレ」
 彼の外回り営業にはトイレの位置を把握しておく必要があった。二日酔いでいつも腹具合が悪かったせいである。
「も、もれそうだ」
 公園のトイレまでもうすぐだ。いけない。やばい。彼の腹痛のエネルギーが、頂点に達する時、彼はスーパーヒーローになる。

「げりっぴ」
 怪獣の前に突然現れたヒーローに避難している人々はもちろん、自衛隊、警察、内閣官房室、みんな大喜びだ。
「げりっぴ」
 怪獣は突然現れたヒーローに戸惑いながらも、戦闘を開始した。ヒーローは怪獣に背を向けたかと思うと、いきなり、お尻から大量の下痢便うんちを発射したのであった。
ジュドドドドドドーーーーー
 怪獣の眼や鼻や口にヒーローの下痢便が入って詰まり息が出来なくなってしまい、ついに怪獣はその場に倒れた。
 その場近くにいた避難住民、警察、自衛隊、消防署、みんな拍手喝采だが、あまりの臭さにゲロをするもの、気絶するもの多数現れた。
 ヒーローはいつの間にか消えていた。
 
 下野陽太。24歳。なんとか公園のトイレに間に合い、すかっとした笑顔で今日もセールス営業に回る。 

 保護者の方へ
 もしこれを読み聞かせて、気分が悪くなったお子様がいたら、水を飲ませるなどの処置を施して下さい。その晩、カレーライス等の食事は控えて下さい。

 


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