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ヒーロー

 幼稚園の時の僕のヒーローは間違いなく誰が何といっても「仮面の忍者赤影」であった。やられた、と思った瞬間、不死鳥のように傷一つ負わずに現れる。「赤影参上」である。かっこいい。思えばのちの特撮ドラマ、仮面ライダーとか、ウルトラマンでもそうだが、戦いに結構苦労している。それに比べれば、赤影は不死身で、満身創痍の姿を見せない。(記憶違いでなければ)
 当時住んでいた団地の棟の入り口に生えていたヤツデを茎から抜いて、葉を足で踏んづけて、茎だけにして、それを刀代わりに使う。赤影ごっこが始まる。誰が赤影で誰が悪役かはわからない。チャンバラが始まる。
 ああ思えば一番幸せな時であったかもしれない。何も悩みがなく、きつい思いもしていないで、日々、遊んでばかりで許される年頃である。もっとも今、同じように遊ぶことはできないだろうけれども。
 小学校のヒーローは高学年になると中日ドラゴンズの星野仙一や高木守道になる。小学校の時、高木守道が好きで、セカンドを守りたかったのだが、下手すぎて守らせてもらえなかった。
 中学生のヒーローはビートルズである。既に解散して5年以上経っている。ギターを始める。
 高校、大学、社会人と、特別ヒーローはいなかった。というより自分がヒーローになろうとしていたのかもしれない。何を畏れ多い、とは思わなかった。最終的には僕は妻だけのたった一人のヒーローになることができた。
 僕のヒーローから、僕はヒーローになった。現在歳を取りそれも遠い昔のような気がするが、いまだに妻のヒーローであり続けたいと思っている。
 

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