小心者育児休暇日誌~取得編①~

 妻の妊娠が明示的にわかったのは年明けで、そのときにはもう育児休暇を取得するつもりでいた。

 育児休暇を取得しようと思った動機・理由というものはたくさんあるけれども、それをひとつひとつあげていくつもりはない。というよりも、むしろ理由の提示が必要とされることに違和感を覚える。
 当たり前なことに理由は求められることはない。より強い根拠なり理由が求められるのは、それが当たり前でなく、イレギュラーなことだからだ。
 実際、現状の男性の育児休暇については、世間一般平均で当たり前なことではないだろう。
 私の職場は、男性の育児休暇取得について表面的には「推進的」であり、実際のところは、とったりとらなかったり、とっても1日2日だったりという感じなのだが、それでも世間水準でみれば、十分に「推進的」な立ち位置なのかもしれない。
 職場以外の知り合いに、何度「育休とれるんだあ」と驚かれたことか。(男性が育児休暇を取得できるというのは、プレミアムフライデーを取得できることくらい、幻の存在に思う人も、多いのかもしれない)

 直属の上司(中ボス)に、妻の懐妊と育児休暇を1ヶ月程度取得したいと申し出たのは、妻が安定期に入った3月になってからだった。
 中ボスからはその場でOKが出た。で、そのあとは大ボスに伝えるつもりが、世間的状況の悪化などもあって、大ボスに伝えるのは5月になってしまった。(にもかかわらず、快くOKしてもらえた)

 快くOKしてもらえたのには、さまざまな要素があるのだが、小心者の私をして、1ヶ月の休暇をあまり遠慮せずに伝えられたのは、
・私が2年近くその部署にいて、中ボス、大ボスともに2年間の付き合いがあったこと。
・中ボス、大ボスともに私の妻と面識があり、家庭の状況(実家との距離や家事分担の実際)なども把握していたこと。
・それとなく育児休暇をとりたいことは匂わせていたこと。
・大ボスも中ボスもいろいろな面で理解のある人格者であること。
・私自身が2年間部署にいて、部署の業務に(それなりに)通暁し、閑散期ならば、1人抜けても十分フォローできる状態であることを把握できていたこと。
・周囲と持ちつ持たれつの関係を築けていたこと(私が錯覚しているだけかもしれないが)。

 と、業務の理解度や人間関係の深さを、不器用なりに長い時間(といっても、1年、2年という時間だが)をかけて生み出せてきたことが大きかったと思う。(もちろん、自助努力以前に、取りやすい部署にたまたま身をおいていた、という運の良さ、みたいなものが前提としてある)

 だからこそ、世の中の緊張状態も緩和され、妻のお腹も大きくなってきた6月中旬に、他部署への異動を告げられた時は、頭が真っ白になった。

(続く)