自衛隊と過換気症候群:新隊員にはつきもの
過換気症候群(過呼吸)を見たことある人は結構いるんじゃないだろうか?
若い女性が息苦しそうにパニックを起こしている状態を思い出して欲しい。
よく医療漫画などでも取り上げられることがあるね。
この過換気症候群は自衛隊でもかなり見る。
ただ部隊によって全く出なかったり、逆に多い部隊があったりする。
この理由はなんなんだろうか?
考察も含めて説明していくよ。
過換気症候群(過呼吸)ってなに?
まず過換気症候群とは「体と心に異常がある病気ではない」。
過換気症候群は呼吸を激しく繰り返すことで、血液の酸塩基のバランス(酸塩基平衡)が崩れることで起こる病態だ。
血液は呼吸と腎臓によりほぼ中性に保たれている。
レモンを食べても血液が酸性になったりしない。
腎臓からは不揮発酸を尿中に排出し、呼吸では揮発酸(二酸化炭素)を排出しており、この二つでバランスを取り合っている。
(正確にはもっと細かいし、上述の説明は全く不足している。もっと詳しく知りたい人はこちらを参考に勉強してね)
過換気症候群はこのバランスが破綻することで起こる。
まず心理的に緊張すると人は息が荒くなる。ここまでは普通だ。
そして不安が酷くなると息苦しさまで感じるようになり、さらに呼吸が荒くなっていく。
この息苦しさはたくさん呼吸しても収まらない、むしろ悪化していく。
「息をたくさんしても苦しい」、この状態が陸で溺れた人のように必死の過度な呼吸となり、最終的に過換気症候群に繋がる。
なぜ呼吸をするほど苦しくなるのか?
呼吸をすることで酸素は十分すぎるほどに取り込めている。
なので窒息のように息が出来ていない訳ではない。
これは呼吸により二酸化炭素が排出され過ぎていることが原因だ。
血液を中性に維持させる呼吸は、過剰になると逆に血液を塩基性に近づける。(アルカローシスという)
このアルカローシスにより体内の電解質の異常や脳血流減少が起こり様々な症状を引き起こす。
具体的には呼吸困難の他に、手足の痺れや四肢の硬直が起こる。
想像してみて欲しい、息ができず体も思うように動かなくなっていく恐怖を。
過換気症候群はパニックがパニックを生むスパイラルで悪化するんだ。
自衛官の患者には特徴がある
過換気発作の簡単な説明をしてきた。
器質的な病気ではなく、メンタルが大きく関わることは分かってもらえたと思う。
過換気発作はなりやすい人が決まっている。
思春期の女性に特に多いんだ。
女性というだけで男性より最大7倍も過換気発作になりやすいとされている。(私も男性の過換気は一例しか見たことがない)
そのため過換気発作で運ばれてくる自衛官はほとんどが若い女性、特に新隊員教育を受けている女性が大多数だ。(体感7割)
それは仕方ないことだろう。これは精神が弱いとかそういう問題ではない。
自衛隊は今までの生活と比べて過度にストレスがかかる。
元自衛官なら痛いほど分かるだろう。
また新隊員では体力もまだ不十分であることが多い。
そんな中キャパシティを超える激しい運動と精神的な負荷がかかったら、過換気発作を起こしてしまうのも仕方がないことだ。
頑張って訓練して過換気になる人は何人もいた。
なので部隊側も過換気発作にはある程度慣れている。
部隊の救急車で運ばれてくる際は事前に過換気と伝えられてくる。
若い女性で訓練や説教の後に起こる症状は過換気であることがほとんどだ。
(これがおじさんの呼吸困難だと話が変わってくるから注意が必要だ)
過換気の治療:紙バックはもう使わない!!
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