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自衛官と性病:予防法を叩きこめ!!

割引あり

自衛隊病院で外来をやっていると患者が少女のようにモジモジしながら相談してくることがある。
『実はあそこが痛くて…』
『先輩と風俗に行ってから股間に違和感が….』
自衛隊では性病が結構多いんだ。

自衛隊は若い男性が多く、その性欲をぶつける場所がないのでしょうがないだろう。これは何もおかしな事ではない。
スポーツで性欲を発散できるなどというのは体育教師の妄言だ。
性欲は射精することでしか発散できない。

自衛隊のみならず旧軍でも隊員の性欲と性病のコントロールには苦慮していたみたいだ。過去の資料を漁ると軍医たちの苦悩がよく分かる。
それはテクノロジーが発展した現代でも変わらない。
『人は過ちを繰り返す』とは全く言い得て妙だろう。
21世紀になってスマートになったのは電話だけで、男の脳みそはスマートにはなっていない。(むしろスマホ脳でバカになってすらいるかもしれない


今回は自衛隊と性病に関して書いていくよ。


性病ってなに?

まず性病とは性行為で感染る病気全般だ。
生物である限り性行為は絶対に必要な行動だ。
ただ今回説明する性病は主に性風俗で貰ってくることが多い。
そして患者は圧倒的に男性が多い(自衛官に男性が多いのもあるし、症状が出やすいから。もちろん風俗に行くことも多いことも関係している)
そんな性病にはさまざまな種類があるが、いくつか代表的なものを挙げていこう。

クラミジア

クラミジアはもっとも多い性病で、厄介なことに症状が出づらい。
そのため感染していることに気づかずに他人にうつしてしまう可能性がある性病だ。

症状として男性は軽い尿道の違和感程度。性行為から数週間で症状が出ることから、症状から原因が想起できないことがある。
5割が無症状であるともされている。

女性も症状がほとんど出ないことから気づかれにくい。
ただ放置しておくと不妊症につながることもある。

治療は抗生剤投与によって行う。

淋病

淋病とは淋菌という細菌が感染して起こる性病で、クラミジアに続いて2番目に多い。
この淋病は男性においては尿道炎を起こし、性行為1週間程度したのちに排尿時に激しい痛みが出たり、尿道から膿が出ることで感染に気づかれることが多いんだ。
男性はその激しい症状で早期に気づいて受診してくるぞ。

ただ女性に関しては症状が軽度で気づかれにくい。
症状があまりないからといっても、慢性的に感染が持続することで不妊などになる可能性がある。
そのためパートナーが淋病であることが発覚したら、女性も婦人科に受診することが重要だ。
私の外来でも必ずパートナーに伝えるように指導していた。

治療は抗生剤投与だが、最近は薬剤耐性の淋菌が問題になっている。
これは不適切な抗生剤使用(予防目的に抗生剤を乱用するなど)が原因の一つだと考えられている。

梅毒

梅毒は以前は国民病とも言われるくらいの性病であった。
ただ戦後は公衆衛生の努力もあり、数を減らしていき年間500例程の希少疾患だった。

しかしながら梅毒は現在若年者層で急激に増えている。
原因は不明だが、感染者の4割近くで直近の性風俗の利用または従事歴があるとの報告がある。
梅毒はまた国民病になりつつあるのかもしれない。

そんな梅毒は自衛隊でもたまにみる。
梅毒はさまざまな全身症状が経過ごとに現れることが特徴で、その診断は結構難しい。
採血すれば分かるけど、梅毒を疑わないとその採血を行うことがないからだ。

良く自覚症状として受診するのは発疹だ。
梅毒の発疹は薔薇のような鮮やかな発疹で全身のいろんなところに出る。
この症状で内科または皮膚科に受診することで梅毒が発覚することが多い。
ただこの発疹は自然経過で消えてしまう。
そうなると患者は安心して病院に来なくなってしまうんだ。

あと股間のリンパ節の腫れや陰部の潰瘍で受診する患者もいた。
この場合は風俗歴などから梅毒を想起できるかどうかが診断の鍵となる。

また偶然梅毒が発見されることもある。
他の手術の際に事前に梅毒などの感染症の検査を行う。
その時に梅毒が偶然発見されるラッキーなケースもある。

梅毒は進行すると脳にまで至ることがある怖い病気だ。
この病気が流行していることは自衛隊のみならず皆危機感を持つべきだと思っている。

治療は抗生剤治療なんだけど、上述の通り進行した梅毒の場合は抗生剤が効かないことがある。
全ての性病に言えることだけど、まずは予防が第一なんだ。

大雑把に性病を説明したが他にもたくさんある。
ただ全て説明すると長くなるし、自衛官に全て教育する必要はない。
その理由は後で説明する。

なぜ自衛官に性病が多いの?

さて性病に関していくつか説明してきたが、なぜ自衛官に性病が多いのだろうか?
まず自衛隊に若い男性が多いからだ。
性病は性的活動が活発な若年層に圧倒的に多い。
そして駐屯地暮らしで出会いがないと風俗に行く可能性がどうしても高くなる。別にこれは悪いことではない。

また海上自衛官などは遠洋航海の寄港地で現地の風俗に行くことがある。
これは古今東西同じであり、昔の文献を見ても各国海軍は寄港地での性病に関して苦労している。
船乗りが性病になった場合に受診できる各国の病院一覧と、法律をまとめた本も昔から存在していた。

海員花柳病問題より引用

なので自衛隊に限らず各国の軍事組織では、精力旺盛な若い男性が多いことから性病は切っても切れない関係なんだ。
しかしだからと言って性病を放置することは軍の能力を大きく下げてしまう。
ではどうすればいいのか?

性病に関する正しい知識を教育する医官

ここで活躍するのが医官だ。
医官はその医療知識を用いて性病に関する教育を自衛隊員に行なっている。先ほど述べたほとんどの性病は基本的に予防可能だ。
それは正しい避妊具の使用によって予防を行う。
しかし自衛隊員への性病教育の指導方法は注意点がいくつかある。

「風俗に行くな」という指導はなんの役にも立たない

「性病にかからないようにするには風俗に行かなければいい」
こう考える人もいるだろう。そしてそう教育する医官もいる。
だがこの考えはなんの役にも立たない。
性欲とは本能だからだ。
「燃えたくないなら、ろうそくの火に飛び込まなきゃいいじゃん」と虫に説教するようなものだ。

若い男性自衛官は夜のネオンの光に虫のように引き寄せられ、風俗に行ってしまう。そして股間に火傷を負う生き物なんだ。
行くなと言っても行ってしまう。
そんな彼らには実現可能な対策を叩き込む必要がある。

ただ病気の説明なぞ自衛官は聞いていない

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