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湯に包まる夜の日

指先の頬にポケットの温かさが届いてくる。
あれは坂が転がっていくところ、
球体の斜面につかめないでいる。
背中の防衛本能は使い果たし場所を探している。
爪の奥の奥の奥まったところに淡い片鱗が裾を隠そうと
見透かして海底の泡が鼓膜に塞がる。
もう一方にはふれてみせた。
片方でこれからどこへ向かおうか。


幻と噂の糸屑を拾いこんで枕の上に飾っておく。
天井にぶらさがる洗濯物のあいだから壁の穴の黒ずみが
うぶ声を上げて湯につかる。
もう離さないでおくように手放す。
少し開いた窓からくる風にはどこの風が含まれているのだろう。

なにもかもまきこまないで ただ
あの景色から臨んで髪を霞む汀が
隣にいてほしい。


・汀の指先・



たそがれて そっぽを向く

ぼわっと 光る目

水しぶきをあびて ぬれてしまう勢いで

刻まれた 毛並み

こっちに呼んでは 来ない冬

壁にひっかく 目出し帽

迷い子の 背中を 前にして

背は いつまでも 後ろ向き用

しびれて つめたい指先を 横に

こっちを向いて と 寝そべってみる


・だれかと だれかのめ・


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