USCPA受験記録
※有料部分がありますが、投げ銭用に作っただけなのですべて無料で読めます。
FAR、AUD、BECと3科目を何とか受かり、2023年10月30日に最後の科目(になる予定)のREGを受験し、一息ついた11月。久々にゲームをやってだらりとした戦間期を過ごしている。長い間勉強し続けてきたのでだらけるのも長く続かず、何かしなければいけないと、落ちていた時のことを検討していると、自分の都合しか考えていない勝手ヨミからとんでもないミスをしていたことに気が付く。仮に今回の試験で落ちていると、私は窮地に陥る。自分のほかにもプレイヤーがいて、その動きも頭に入れなければいけなかったのに。
こうなるとどうしても今回の受験で受かっていなければいけない。 合格発表される11月8日10:00(JST)までしばらく緊張の糸がほぐれることはなさそうだ。
USCPAとは
米国の公認会計士資格のことである。難関資格に思われがちだが、試験内容が大きく異なり、日本の公認会計士資格ほど難しくはない。
米国らしく、州ごとに州会計委員会協会が会計士のライセンス管理を行っている。出願やライセンス取得の条件に学歴や職務経歴、単位数が細かく定められており、州ごとに異なっている。
ただし、どの州も「試験に合格する」ことが求められ、その試験は同じものを受験する。どこで出願、ライセンスを取得しようともその価値に違いはない。
試験内容(2024年から新制度に変更予定)は、FAR(会計)REG(税法・商法)AUD(監査論)BEC(ビジネス環境)の四科目で、これらすべてに合格すると晴れて合格となる。それぞれ、試験時間は4時間、内容は4択問題、資料から回答を導くTBS問題、ライティングコミュニケーション(BECのみ)である。なお、1科目合格すると有効期限が18か月ある。その18か月以内にすべて合格しないと合格実績がexpireして、もう一度合格しなければならない仕組みとなっている。
1科目あたり受験料が約250ドル、日本で受ける場合にはinternational fee390ドルが加算され、円安も相まって財布に厳しい資格である。
なお、米国の資格なので当然日本で何か独占的に業務を行えるわけではないので、実際に何かの役に立つかと言われると少々疑問符がつく。
出会い
米国公認会計士という資格を知ったのは大学3年生の冬である。当時私は就職活動をしていた。洋服の青山で購入した真っ黒なリクルートスーツに身を包み、東京に住んでいてもそれまではめったに出ていかなかった都心に頻繁に出向いて、いろんな大人の話を聞いていた。民主党政権下の就職活動で、身の回りでも5人に1人くらいは就職留年や就職先を決めずに卒業する人がいる、そんな時代だった。 某大手鉄鋼メーカーのグループ面接で、学生時代に頑張ったことを聞かれた。私はお決まりのテンプレとして何度もしゃべった部活の話をした。うんうん、と中年の面接官が目線を動かさずにうなづく。メモをさっと取る音が会議室に響く。「じゃあ次の人…」と次の学生に話がふられる。彼は、「学生時代に頑張ったことは米国公認会計士の試験です」と言った。
それが、私が米国公認会計士という資格の存在を知った瞬間であった。
「いやあ、まだ受かってませんし、そもそもそんなに難しい資格じゃないですよ」
グループ面接後になんとなく面接のメンバーで駅まで歩いたときに、彼はそう言った。のちにそれは事実であることを知るのだが、当時の私からすればただの謙遜にしか聞こえなかった。
私の友人の中でも公認会計士を目指している人が多く、周りでも7,8人が公認会計士を目指してO原にダブルスクールしていたが、1人を除いて皆ドロップアウトしてしまっていた。公認会計士が何をする仕事かはよくわかっていなかったけれど、それくらいの難関科目であると認識していた。だから、そんな会計士の資格、それも海外のものを英語で受けるというのは、TOEIC550点の学生の目線では、非常に難しいものに見えたのだ。
とはいえ、就活が喫緊の問題だったので、都心でご飯を食べて寝て起きたら、すっかりと忘れてしまった。
海外駐在
次に米国公認会計士の資格を意識したのは、仕事で海外に住んでいた2016年だ。独身で現地に友人もいなかったので、土日と平日夜を持て余していた。そういう時間は、ジムに行くか、映画を見るか、酒を飲むか、ネトゲをするかの4択だったので、もう少し生産的な時間の過ごし方をすべきであろうと考えていたのだ。それでふと米国公認会計士を調べてみることにした。
米国公認会計士は日本の会計士科目ほど難しいわけではなく、人並みの英語力(その頃は730点くらいだった)があれば十分対応可能で、会計初学者でも合格できるというのがインターネット上の情報であった。今思えばこれも受験予備校のアフィリエイトサイトからの情報で、ハードルを低く見せて受験者を集めてひと稼ぎしようという予備校のプロパガンダの一角なのだろうと思う。実際、予備校の最低限のゴールは合格させることではなくて数十万の口座を受講させて、入金すればよいのである。2016年2月、プロパガンダにうまく乗せられた私は、アフィリエイトサイトに誘導されるようにA社から資料を日本から取り寄せた。ちゃんと製本された立派なパンフレットであり、USCPAは未来へのパスポートのようなキラキラしたものに感じられた。結局、私が受験資格を満たすためには会計とビジネスの単位を取得するのに結構なお金がかかること、帰国のタイミングが重なったことから受講せずとの結論に至った。
唐突に合格して転職するUSCPAホルダー
3回目の転機は帰国してすぐの2017年だった。同じ経理の先輩と後輩が近い時期にUSCPAを取得してFASに転職したのである。彼らが人知れずUSCPAを受験していたことも驚きであったし、実際に合格して転職した事実は、私に大きな心理的影響を与えた。二人とも高学歴で部署のエース格だったので社内にも痛手だった。
「ただのプロパガンダだと思ってたけど、USCPAを取って転職って出来るもんなのだなぁ。彼らにできたのだから私にもできそうじゃないか」
そんな思いが頭をよぎった。当時は地方都市に住んでいて、転職して東京に戻りたいという強いモチベーションがあり、またUSCPAの取得を検討することになる。まあ、後にそれは大いなる勘違いだとわかる。そもそも、転職するのにUSCPAがなくても普通に転職できるのだ。
フォロワーと一緒に受験決定
同じ時期に、TwitterのフォロワーさんにM姉さんという方がいらっしゃった。M姉さんも仕事で海外に在住しており、海外出稼ぎ民という属性に親近感がわいてやり取りするようになった。住んでいる国は違ったがそんなに距離があったわけでもなかったので、「いつかオフ会できればいいですね」というくらいの関係であった。
M姉さんもUSCPAを取ることになった。上記の通り私も取得を検討していたので、勝手に背中を押されるような気持になって受験を決意した。
当時、USCPA予備校は主に4社あった。A社、O社、T社、プロアクティブ(以下P社)である。A社とP社について簡単に説明しておくと、A社は主にUSCPAをメインにしている会社で、インターネットの記事や個人ブログを見ているとこの予備校推しが多い。アフィリエイトな気がするけど。P社は代表者の佐々木氏の強烈な個性で引っ張っているクセの強い予備校である。佐々木氏のクセの強さは彼のYoutubeチャンネルでも確認できるので暇なら見てほしい。(https://www.youtube.com/@uscpa)
結論から言うと、私はP社と契約した。理由は理論上の総取得費用が安かったからである。(ライセンス取得まで考えたらA社のほうが安いので、もしかしたら最初はライセンスを取るつもりはなかったのかもしれない) プロアクティブ 受講費20万円 単位3単位あたり30,000円 アビタス 受講費75万円 単位費用は受講費に含まれる TAC 覚えてないけど100万円くらい 大原 覚えてないけど100万円くらい
予備校の役目は、試験の情報、学習の教材、単位取得のこの3点であった。特に私は受験資格を得るために単位を取得しなければならなかったので、この取得費用が安いことは必須だった。
P社は良くも悪くも佐々木氏の個性が強すぎるので、合うか合わないかの差が激しいと書かれていた。講義やテキストの質が低いという受講者の感想もあった。ただ、私は根拠のない自身があった(世の中をなめていた)ので、教材の質がどうだろうと、最低限の質があって過去問があれば十分対応可能と考えてしまったのだ。ちなみに同じ職場でUSCPAを取得した同僚は商学部卒で単位がそろっていたため、予備校なしでWileyのテキストだけで合格していた。
最終的に2017年7月にP社から資料を取り寄せ、デモ講義を視聴して契約した。海外時代に資料請求していたアビタスのデモ講義も受講したが、先生の説明がかったるくて視聴する気になれなかった。
受講費の20万円はクレジットカードで支払った。職場の人はもちろん、ほかの誰にも受講を始めたことは伝えなかった。
M姉さんも佐々木氏推しでP社と契約したらしい。M姉さんとは17年の年末に渋谷のソバ屋で初めてお会いして、「実は私もP社でUSCPAを取ることに決めたのです」と伝えたら、「そうなんだ!一緒に頑張ろう!」とおっしゃっていたことを覚えている。のちに私は衝動的にTwitterのアカウントを消した。M姉さんもそのあと垢消ししたらしく、今となっては連絡も取れずじまいである。
こうして、私は今日まで続く長く苦しい道のりを歩むことになった。
2017年7月勉強開始
そうして私は意気揚々と勉強を始めた。
出願州は、受験に必要な単位数が12単位と少ないニューヨーク州に決めた。ライセンスが欲しくなったら単位を後付けしてワシントン州でライセンスを取得するのだ。 受験資格を満たすために先に単位を取らなくてはならない。 根拠のない自信があり完璧主義者な私は以下の手順で1年ちょっとで合格する作戦を立てた。
すべての範囲(FAR、AUD、REG、BEC)を一通りすべて勉強(6か月)
単位試験を受験(1か月) [BA300]Intermediate Accounting I(Upper財務会計) [BA304]Income Taxation(Upper税法) [BA305]Cost and Managerial Accounting(Upper管理会計) [BA403]Auditing(Upper監査)
学歴審査(1か月)
受験(6か月)
受験したことがある人であればわかると思うが、普通に無理なスケジュールである。
思った以上に使いづらいP社教材
進捗は芳しくなかった。 6か月ですべての学習範囲をサラッと終わらせるはずだったにもかかわらず、FARだけで半年近い時間がかかった。
その原因の一つがP社教材との相性の悪さだ。
私の基本的な学習スタイルは、テキストを手元に置きつつ講義ビデオを視聴して内容を理解し、そのあと過去問MCQ(4択問題)を解いて解説を聞く。
P社の教材で困ったのは以下の3点である。
視聴したいところを選ぶのに時間がかかる講義ビデオ
限りなくレジュメに近いテキスト
操作性が悪い過去問MCQ
そう、すべてなのである。
最初の講義ビデオ視聴で躓く。内容が頭の中に全く入ってこない。佐々木氏の話が面白いから聞けているものの、講義を聞いてみたけど内容の理解はさっぱり、ということもざらだった。講義内での解説と言ってもたいていはレジュメに記載された文章をそのままなぞるだけであって、各単元の全体像や、トピック間のつながりがほとんど説明されない。解説されるトピックはまだましで、試験に頻出のトピックだけを解説するので、テキストに記載されていても「あっコレは出ないからいい」ととばされることも多い。さらに、講義ビデオは佐々木氏が実際に教室で行った2時間ほどの講義を収録したものなので、ビデオの内容がトピックごとに細分化されていないのである。ピンポイントで自分が知りたい単元の講義を聞こうとしてもそこにたどり着くまでに時間がかかってしまう。2時間近い抗議の適当に再生しつつ、自分の見たい部分を探さなくてはならないのだ。最近のYoutubeでは動画がパラグラフごとに分かれていて、閲覧したい部分にジャンプしやすくなっているが、P社の講義動画においてそういう種類の配慮は皆無だったのである。
テキストは穴埋め方式ですべて英語で書かれているのだが、その実態はテキストというよりもレジュメに近い。重要な単語と簡単な単語解説、計算例が書かれているが、中身を理解させる説明などはほとんどない。つまり、テキストだけ読んでいても全く理解できないので、内容を理解するためには講義ビデオの視聴が必ずセットになる。
過去問MCQも私にとってはかなり使いづらいものだった。システムを簡単に説明する。受講生サイトから問題演習をクリックすると、学習単元が表示される。自分が学習したい学習単元をクリックするとポップアップウィンドウが開く。ウィンドウ中央に解説動画があり、問題文と解答選択肢がその下に記載されている。回答は「アンサー」ボタンにカーソルを合わせると正しい選択肢が表示される仕組みである。画面右側に問題番号が上から下に記載されており、次の問題番号をクリックする。
問題が一覧表示されていないので、上から順にガンガン問題を解いて行って後から回答解説を確認しようとすると、いちいち問題番号をクリックして次の問題に遷移するのが面倒である。解説については佐々木氏の解説動画でしか説明されないので、まとまりがない口頭説明を理解しなければならず、構造化された文章と比較すると結構なタイムロスになるのである。解説内容も結構なムラがあり、きちんと理解できるように解説してくれるものもあれば、「こんなの読めばわかるよね!BだからB!以上!」という”””解説”””もあるので、そういう時は諦めた。たまに解説の前に「コレ間違えちゃヤバいでしょ」とか余計なことも言うので、それも逐一イライラさせられた。(後述するが、このMCQ周りの不満はのちに25%くらい改善される)
2018年7月単位取得
そんなこんなでかなり苦労はしたが、何とか4科目を一通り学び2018年7月には単位申請に至った。1科目3単位で30,000円×4科目で120,000円の出費である。P社と提携するグアム大学が提供する単位で、講義や教材などはなく、オンラインテストを受けて合格点に至れば単位が発行される。テストの内容はP社のMCQが何問かそのまま出題されるので(つまりCPA試験の過去問)、MCQを回していれば問題なくとれる単位だった。
当然私も無事に1回で単位を取得した。単位をカネで買うとはこういうことかと、初めて理解した。
成績表は2枚発行され、1枚が学歴審査機関へ、1枚が手元に届いた。これにて学歴審査も無事にパスし、受験資格が整った。
2018年10月スーパー舐めプ出願
単位を取得し、準備は整ったと判断した2018年10月に、早速出願した。出願するたびに100ドルの出願料がかかるので、これを避けるために4科目まとめて出願した。
AUD 2018年12月10日 FAR 2019年1月6日 REG 2019年3月3日 BEC 2019年3月10日
今思えば本当にくるってるんですよねこの出願。すべての科目を勉強した前提とはいえ、AUDとFAR、REGとBECでほとんど間隔があいてないので、この間に合格レベルまでもっていくのはかなりハードルが高い。受験制度の関係でこのようなスケジュールにしたのだと思うのだが、普通の人はやらない選択だろう。
2018年12月10日AUD
そして迎えた初回の試験。緊張して大阪の中津にあるプロメトリックへと向かった。P社が出しているMCQの過去問を何度も繰り返し、P社が出しているSUPER直前という教材でTBSをちょこっと対策していた。佐々木氏は「MCQがきちんとできればTBSは対策しなくていい」というスタンスの方で、私もそれを信じていた。
受験後、手ごたえはこれまで私が受けた試験の中で最低だった。
Reserch問題が出た瞬間に問題の意味を理解できずに固まってしまった。Reserch問題とは、問題文に書かれた状況を解決するための会計規則や税法、監査基準を検索して探し出す問題である。P社からの教材でこのReserch問題に関する教材どころか、存在に言及していなかった。
私は、今までやってきたことが大体間違っていたこと、この先もヤバいことを認識した。
2019年1月06日FAR
これはやばいと感じてFARを必死で仕上げて試験会場へと向かった。AUDほどの絶望感はなかったが、だめだろう、ということはわかった。
2019年1月23日やり方を変えてWileyテキスト購入
結局、AUDが59点、FARが69点で不合格だった(合格点は75点)。P社の教材では無理だと薄々感じていたが、それが確信に変わった。残り2科目だけでもなんとか合格して次につなげるため、WileyのテキストをAmazonで購入した。お値段約48000円。これは勤務先の同僚が独学で合格した際に使っていた洋書テキストだったので、何とかこれで状況の改善をと藁にも縋る気持であった。
折れた心ーUSCPA損切
Wileyの洋書を使ってBECとREGの勉強を始めたが、思うようにスコアが上がらない。MCQを解いていても手ごたえがなかなかつかめない。試験日は決まっているので焦る。P社の教材や動画を視聴しても理解は深まらない。絶望感が心をどんどん侵食していく。
2月のある日、いつものように勉強していたが、勉強部屋である実質リビングで妻が普通にテレビを見始めたことで、唐突に心のひもがぷつりとちぎれてしまった。勉強の仕上がり的にただでさえ合格は難しい、予備校にも頼れない、そんな中でも家族は普通にテレビを見ている。
あれ、私、どうしてこんなに苦しいことをやってるんだろう。最終的にはお金が欲しくって、そのために転職の選択肢を手にしておきたくてやっているのだけれど、私の幸せにつながるんだろうか?お金を手にすることや転職って、USCPAがなければできないことなんだろうか?
そう考え始めるともう止まらなかった。
「もうやめた!!!」と罵声を飛ばし、WileyとP社のテキストをすべてゴミ箱に突っ込んだ。Wileyはメルカリで売れると思いなおして回収した。
もうそれ以降USCPAの勉強をすることはなかった。
P社への怨念を除けば、心はとても晴れやかな気分だった。
損切後
3月のREGとBECは試験会場に行かなかった。受験のサイトにはNo Showと記載されていた。これで15万円近くをどぶに捨てたわけだが、もう勉強しなくてよい気持ちよさのほうがはるかに上だった。
USCPAを損切りしてから、私の生活は大きく変わった。いい意味で普通の人生を過ごし始めたのだ。子供も生まれ、2020年になると世界はコロナの影響に包まれた。
そういえばUSCPA受験後のTOEICでは740→840とスコアがアップしていた。60万円かけてUSCPAを勉強した価値はこのTOEICだけであった。
子供の世話や仕事、そもそも日々生きていくのに必死で、USCPAのことを思い出すことはほとんどなかった。そうして月日は流れていく。
一本の電話
USCPAの勉強再開のきっかけは、職場に届いた上司宛の一本の電話だった。電話の主はUSCPAを取って転職していったA氏だった。なんでも、弊社から転職後に紆余曲折あってアメリカで働くことになったため、ビザの申請のために昔の上司からのレターが必要だとのことであった。
それを聞いた上司は私に「ぼっちめしくんと同じ大学卒だけど、彼はすごいね。アメリカで働くんだって」と言った。A氏はUSCPAをきっかけに転職して、そこでもさらに努力してさらなるキャリアアップの切符をつかんだのだ。USCPAすら満足に取れなかった自分が異様に恥ずかしくなった。
2022年精神的借金返済の開始
これをきっかけに2022年5月からUSCPAの勉強を再開した。これは損得ではなくて、自分の精神的借金を返すためなのだ。
おそらく、現実的なメリットはほとんどないだろう。転職してキャリアアップするには時間を無為に過ごしすぎた私は、仮にUSCPAを取ったとしても監査法人やFAS、コンサルなどには進めない(進んでも賃金は上がらない)。
さらに課金で費やすお金と労力を考えたら絶対にマイナスである。そんな時間があれば株をやる、もしくはバイトでもしていたほうがはるかにましである。
理屈ではいまいちな意思決定だと理解しているが、USCPA断念という黒歴史ないしは後悔をぶっ壊すには、成功で上書きするしかないのも事実なのだ。
妻にも許可を取った。「1年くらいで終わらせようと思うが、その間家庭関係で負荷をかけること人る。挑戦してもよいだろうか」と。子供のこともあるので難しいかと思ったが、意外と二つ返事でオーケーいただいた。
こうしてまさかの延長戦を始めた。
リベンジFAR
前と同じ方法では合格できないことだけは理解していたので、今回はやり方を変えた。メイン教材はP社テキストを使いつつ、問題演習はWeily Test Bankを購入した。これはMCQとTBS、さらには模擬試験を本番に近い環境で実施できるソフトウェアで、だいたい一科目15,000円から20,000円で販売されている。P社講義とテキストで基礎を固めて、Test Bankをひたすら回して実践力を高める方法である。P社の問題はMCQの演習が非効率な部分に最も不満を感じていたため、この形にすることにした。テキストは講義動画とセットで頑張れば基本的な理解はできると判断して残した。メルカリでA社テキストを買う手段もあったが、分量が多すぎるのとメルカリでも数万円するのであきらめた。
P社に関しては、契約が5年間で、2017年7月にスタートした私は2022年7月に契約が切れることになっていた。ただし、1年11,000円で何度でもサポート延長可能とのことだったので、これでサポート延長をした。教材の質に不満はあったことは確かだが、少しずつ改善されていること、試験制度の情報入手や質問への回答はスピーディーであることから、契約延長に値すると考えた。
前回受験時と比較して英語能力が若干向上(TOEIC740点→840点)している、以前学習した経験があるということで、比較的順調に進んで6,7月でおおむね受験体制を整えた。Test Bankも細かい誤植や解説の不備はあるが、コンピューターでサクサク進めることができるのでMCQを回すのも効率的になった。うれしい誤算としては、P社の問題演習が改善されていたことで、単元ごとのMCQ問題リストをPDFでダウンロードできるようになっていて、英語での文字解説も新たに追加されていた(そこはわざわざ英語にしなくていいのだが)。そういうこともあって、P社の問題演習機能も使った。前回はノートに回答を書いていくだけだったが、今回はエクセルに回答と正誤を記載して、間違えた問題を把握し、記録を取って管理できるようにした。
この辺がうまくかみ合い、いけると考え、2022年8月28日に受験した。 今回は万全を期すために大阪で前泊することにした。宿はドーミーイン難波である。ドーミーインはいいぞと周りから聞いていたので宿泊した。余談だが、数百円の夜鳴きそばと大浴場、アイス、朝食の顔を作ることでほかのビジホと差別化していいお値段を成立させてるのはすごいと思う。晩御飯はミナミのよくわからない中華料理屋で食べた。隣の席では医者の女の子と胡散臭いおっさんが飯を食ってた。この後セックスるのかなぁ、するんだろうなぁと思いつつ、私は部屋に戻ってしこしこ追い込みの勉強をした。
FARは78点で見事に一発でパスできた。
前回は一度も経験できなかったPASSにほっとしたとともに、協力してくれた家族に対して成功を見せられたことに一番ほっとした。実質的に、妻と子供が私のスポンサーなのだと心から理解できた瞬間である。
沼AUD
AUDは通常沼と呼ばれる。日本人受験生はこのAUDで躓き、撤退してしまう人も多いらしい。なぜこうなるかというと、AUD(監査論)は高度な英語能力が求められるのと、そもそも大量の英文を読むスピードが求められること、MCQであいまいな回答が多いためである。例えば、会計や税法であれば計算問題が多く、内容を理解していれば100%正しい回答の数値を4択で選ぶことができる。しかしながら、監査論でははっきり白黒つけられない回答が多いのである。正解はAという選択肢だけど、Bという選択肢も40%くらいは間違っていない…という感じで、はっきり決めきるのが難しいのだ。解説を読んでも理解が深まらないことも多い。
例にもれず私も沼にはまる。
こちらもFARと同様にTest Bankを利用したが、MCQの正答率がなかなか上がらない。理解が大切な分野なので講義視聴やテキスト精読も繰り返したが、いまいち点数につながらない。特に前述のMCQで白黒はっきりつけられない問題が苦しかった。
2022年10月に初回のAUDを受験した。今回は妻のおすすめ三交イン淀屋橋に宿泊した。宿は値段の割にすごくよかったが、日曜日の夜となると周りに飲食店がやってないのが痛かった。夕食ホテル近くのお好み焼き屋で撮ったのだが、気取って値段が高い割には味も量も満足感が少なかった。試験結果は71点でfailであった。2018年の59点と比較すれば大きな進歩だが、failには変わらない。カネがかかるのもそうだが、再びAUDをやらなくてはならないのはショックであった。
2022年12月25日に2回目(計3回目)の受験。前回は宿泊して失敗したので、もう高い金はかけられないと早朝に起床して名古屋から日帰り受験だった。しかし、何とこれも71点でfail。合格発表が朝の9時なので会社のトイレで確認した。前回と同じ点数なので、まだ発表されていないと思ったのだが、よくよく見ると日付は2回目の受験日だったので、また同じ点数でfailしたとわかって下半身からさっと力が抜けるのが分かった。
さすがに2回落ちるとメンタルがボロボロになってきていた。沼すぎて一生受からないのではないかと思った。これ以上やっても無駄だろう、ということで次の3回目受験を最後にすることにした。落ち続けて家族に迷惑をかけられない。
特に勉強方法を変えることはしなかったが、2023年2月末の3回目の受験でようやくPassできた。驚いたのはTBSにて、1回目と2回目で同じ問題が2,3問出てきたことだ。2回目の受験でも見たことある問題があったので、TBSのバリエーションは意外と少ないのかもしれない、などと思った。まあ確かにあんな問題をいくつもいくつも作っていられないという事情は理解できる。
中だるみBEC
沼ったAUDをパスすると、後は比較的分量の少ないBECとREGを残すのみということで心がだいぶ軽くなった。親戚のリゾート痕が相次いで4月と5月に沖縄や軽井沢を訪れたこと、コロナの制限が本格的になくなり飲みに遊びに忙しくなったこともあって、だいぶ現況がおろそかになった。2023年3月に勉強を始めて5月末くらいには受験しようかなと考えていたのだが、中だるみがあって結局2023年7月22日受験となった。
BECだけはWriting Communiationと言ってお題に対してエッセイを書く課題がある。お題は経営の指標や業績管理、内部統制などとさまざまでこれが3問出題される。英語ネイティブではない日本人にとっては結構大変なもので、AUD、FARの次に沼るとしたらここと言われていた。内容面、英文面で自身のエッセイを採点してくれる人がいないのが特に難しい。ここに関しては私はGPT-4 を活用した。GPT-4に採点基準を伝えて、100点満点で採点することと内容と英文でおかしな点を指摘すること、改善点と改善案を記載することを指示する。その後、問題文と自分の回答を投げると見事に採点し、添削までしてくれるのである。GPT-4がある現代にこの科目を勉強していて本当に良かった。ありがとうサムアルトマン。
BECは2023年7月22日に受験した。エッセイではカイゼンに関する問題も出題され、トヨタピラミッドの最下層に位置する私はトヨタ式生産方式について熱く語りすぎてしまい、最後のWC問題(内部統制だったので配転高め)に時間が足りず適当な回答になってしまうというトラブルはありつつも、無事に83点でパスした。
P社 脱落
BEC受験後に問題が発生する。
P社のサポート延長中止である。
勉強するにあたってP社教材はもうほとんど使っていなかったわけだが、質問や受験手続のこと、制度変更への情報収集としては引き続き利用していた。さらに、全科目合格後はライセンス取得のために不足単位数を取る必要があったので、P社サービスを引き続き利用する必要があったので、さらに1年間サポート延長を利用するつもりでいた。
昨年は期限が切れる1,2か月前に「サポートが切れるので延長を考えている人はここで手続してください」とメール連絡が来たのだが、今年は7月になってもなしのつぶてなので、こちらからサポート延長の手続き方法を確認した。
ところがこの返信である。
・・・
は?
理由を聞いても答えてもらえず、サポートは終了ですの一点張り。最長10年まで延長できるといってたのにこれはないよなとかなり憤慨した。でも、これからUSCPAを受験しようと思った人がP社を使うことはなくなるだろうか、社会全体にとってはよいことなのかもしれないなどと思った。
最後の戦いREG
向こうが契約しないといっているものを無理やり契約することもできないので、REGの勉強を始めた。契約が残っている間に講義ビデオはすべて視聴した(あまり意味はなかった)。
とはいえ、暗記科目であるREGで良質なテキストが必要ということで、インプット教材にはA社のテキストをメルカリで入手した。4500円と安かったが、その分細かい税率などが古く、苦労した。A社のテキストを読んで感動した。なんと、テキストを読んできちんと頭に内容が入ってくるのである。もっと早くこっちに来ればよかった。
問題演習はいつものWiley Test bankを利用。ほかの科目でも思ったけど、FAR以外はTBSの問題数が異様に少ないのが不満である。REGに関しては税率や制度変更がほかの科目と比較して多いからだろうが、税率が変わるたびに税法の問題が削除されるので、少なめであった。
受験日は2023年10月30日とした。現行の試験制度は12月15日で終わってしまうので、これについては何とか今年中に合格しなければならない。来年に持ち越すと試験の制度や問題のスタイル、税法が変わるので非常に苦労することが見込まれる。これを加味して、仮に落ちてももう一度受ける時間的余裕がある10月末が受験日なのだ。今ではそわそわしながら合格発表を待っている。
受験コスト
気になっている人もいるであろう受験コストは、現時点で¥1,380,637である。
予備校代金 ¥211,000 単位取得代金 ¥130,000 テキスト代 ¥86,439 受験準備費用 ¥24,750 受験料 ¥352,178 international fee ¥478,950 交通費 ¥75,000 宿泊費 ¥22,320
計10回受験しているので、受験料とinternational feeで80万円越えととんでもないことになっている。この後ライセンスも取ろうとすると少なくとも50万円見込まれるので恐怖の200万円越えが見えてくる。転職して年収が100万円200万円上がるとかであればアリな投資だけど、私の場合はそういうわけじゃないのでもう完全に趣味。
これから受験しようとするのであれば、A社を使ってすべて1回で合格しても120万円くらいかかるのではなかろうか。A社が80万円、受験料とinternational feeで1回10万円かかるので。昔は1回6万円くらいだったのだが…円安とインフレ怖い。
今後について
こうして、2023年11月4日現在、FAR、AUD、BECをPassしてREGの結果待ちというステータスである。
最後に、現在抱えている2つ問題に言及して締めたいと思う。
1つ目が、冒頭で述べたようにこの試験スケジュールで大きなミスをしていたこと。2024年に新試験に切り替わる関係で原稿の試験の最後の受験は12月15日までとなっている。REGの結果発表が11月8日安良で、結果待ちのREGが落ちた場合でも、もう一度受験できる余裕があると高をくくっていたが、ほかの受験生たちはラスト一か月に受験予約を詰め込んでいた。通常であれば1か月前に申し込めば予約できるにもかかわらず、11月以降の予約はすべて埋まってしまっているのだ。物理的に受験できないので、仮にREGがfailしていた場合の選択肢は以下の2つ。
➀来年の新試験でREGを受けなおす
②グアム受験
内容的にもモチベーション的にも2023年中にけりをつけたいので、グアム受験しようかと考えている。調べたところ、グアム受験は12月もガラガラなのである。グアムの人口を考えれば受験者も少ないく当然といったことであろう。ネックは受験費用が高額になることだが、背に腹は代えられない。金に関しては困ってないし、損得勘定の話ではないのだ。家族を連れてリゾート込みで訪問するのもいいなぁと思っている。
2つ目の問題はライセンスである。
当初私は受験資格が楽なニューヨーク州で受験し、合格結果をワシントン州に移して、P社のサービスで足りない単位を取得してライセンスを取得しようと考えていた。しかしながら、P社が延長サポートを打ち切ってしまったため、不足単位の追加とライセンスサポートの実施可否が不透明になっているのだ。
本来であればここもきちんとP社に確認すべきなのだろうが、だめと言われたときに受験モチベーションにGoing concernが生まれるのであえてうやむやにしている。
どうなるかわからないが、何とか2023年中にこの資格試験はクローズしたい。
そして、もう資格試験は二度と受けないだろう。お金にならないから…
私はとても苦労したけれど(6年かけてやる人は普通はいない)、もっとうまくやる手段はあったと思う。USCPAを検討しているとは他山の石としてほしい。
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