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アロエ

年が明けた。
年末年始、手帳を新調したり家族で集まったり初売りへ行ったりと、色々イベントの多い時期だが、私の予定に組み込まれているのは「アロエ」だ。
12月から1月頃にかけて、ダチョウの頭のような形の真っ赤な花をつけるアロエ。
路上でおなじみすぎる植物だけに普段はあまり意識されることもない存在だが、この時期になると急に異彩を放つのだ。

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私がアロエをはじめて意識したのは10年ほど前だろうか。
当時住んでいたアパートの一階で、急に真っ赤でトゲトゲした物体が視界に飛び込んできて、よくよくみてみるとアロエだった。ちょうどこのくらいの時期だったんだと思う。
それまではアパートの前にアロエが生えてることなんて全く気づいていなかった。
「へー、アロエってこんな花が咲くんだ」と驚くと同時に、妙に惹かれたのを覚えている。

アロエの原産地はアフリカ。平常時のアロエはザ・下町園芸でおなじみのイメージだが、開花時のアロエは異国情緒をたっぷり身にまとい、路地にちょっとした異空間を生み出す。
とりわけ大きな株いっぱいに花を携えるアロエの迫力たるや。ダチョウの群れのようなケモノ的な雰囲気だ。
この時期だけの風景に惹かれ、この年末年始もアロエ好きの仲間や家族とともに、アロエの花見をした。

昨年末のアロエ納めは、とあるスナック街。飲み屋がスナックがいっぱい入った雑居ビルの屋上から垂れ下がるように生えているアロエ。気根らしきものがわさわさと垂れ下がっている。

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アロエを下から見ることなんて滅多にない。
スナックの看板、その向こうのアロエ、さらにその向こうにそびえ立つタワマン。
この辺りは結構地形の高低差がある。高台に建てられたタワマンの土台部分には、なぜか神殿風の柱。

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そしてタワマンの上には墓。そこから見渡すスナック街のトタン屋根のパッチワーク(向こうの方の建物の上にアロエが茂っているのが見える)。

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いろんな時間軸がごちゃごちゃと混在した風景には、なんとも言えず惹かれるものがあった。

余談だがアロエを目指してスナック街を歩いていたら、地元のおじちゃんに話しかけられた。写真を生業にしているというおじちゃんは、近所の喫茶店にいったあと、カメラを充電しながらこの辺をぶらぶらお散歩していたらしい。
一緒にアロエを見上げたところ「へえー、俺、よくこの辺で飲むけど全然気づかなかったよ」とおっしゃっていた。確かに夜の時間帯だと、わざわざ建物の上を見上げないだろうし、アロエには目がいかないのもわかる。
夜のネオンに妖しく照らされるアロエ、さぞよかろうな・・・とゾクゾクする。
ぜひとも今度は夜に訪れてみたい。

今年のアロエはじめは、伊豆白浜のアロエ。ここでは毎年アロエの花が咲く時期に「アロエの花まつり」が行われている。下田市と地元のボランティアの方が海岸沿いびっしり植えたというアロエが、真っ青な海をバックに一斉に花を咲かせる光景は、どこか別の国にきたような感覚になる。

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来場者用の駐車場には、周囲をアロエに囲まれた小屋がある。この小屋を密かに「アロエ神社」と称して、ここ数年は毎年元旦に初詣がわりに「アロエ詣」をしている。
本物の神社と違って人が少なく、綺麗な海と満開のアロエに囲まれ、静かにお参りできるのも良い。

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このアロエ神社、台風の影響か半壊していたが、以前は黄色い扉がつき、それはもうカラフルで見事な見た目だった。これをアクリルスタンドにして飾っておきたいと思うものの、トリミングがめちゃくちゃ面倒そうなので躊躇している。

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アロエ好きが高じ、飼い猫にも「アロエ」という名前をつけた。路上でボロボロになっていたところを友だちが保護し、うちにやってきた猫だ。アロエのようにたくましく生き延びて欲しい。

ああアロエ、なんでこんなに惹かれるんだろう。
普段地味なのに開花すると一気にパンチが効いた見た目になるというところに、地味な自分の変身願望を重ねてるのだろうか、とも一瞬思ったが、花がなくたってパンチが効いているのだ。

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どんな場所でも異彩を放つアロエを見習いたいものだ。

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