都市の隙間に緑

2月24日から3月3日にかけて、東京・谷根千を舞台に、都市を構成する小さな要素から「まち」を捉えるイベント「トークウィーク・まちがたり」が開催中だ。
その企画の一つである「都市の隙間に緑」というトークイベントに、ゲストとして出演させていただいた。

都市空間には、計画的に植栽された緑がある一方で、身近な場所に目を凝らすと、路地や道のちょっとした空間でも緑を目にすることができる。
路上のスキマに生きる緑を鑑賞し楽しむ私と、路上のスキマで緑を育てる「こちらのゾーン」さん( http://kochirano.jp/ )が、それぞれどうやって都市の緑にアプローチしているかについてプレゼンした。

会場は根津のブックカフェ「緑の本棚」( https://midorinohondana.com/ )。
植物にまつわる本や、植物そのものに囲まれた居心地の良い空間で、まさにこのイベントにぴったりな場所だった。

路上で見られる緑には、出自で大きく分けると、計画的に育てられたものと、育てられたもの、意図せず育ったものがある。
石川初さんはこれを「造園」「園芸」「雑草」と区分されている。
当初の出発点は異なれど、街の緑はそれらが一つの景の中で混ざり合い、時に行き来しているところがユニークだ。
時には個人宅の園芸が街の緑の景観の重要なパーツになる。また時には、誰かが置いた植木鉢や鳥が落とした種から育った木が、いつのまにか街路樹のように大きく成長していたり、道端に置かれた植木鉢から逃げ出した植物があたり一面を覆い尽くしていたりもする。

人間の意図や都合で設置されたものでも、そもそも人間とは違うルールで生きている植物は、その区分を時にやすやすと越境する。
限られた都市空間だからこそ、人の都合と植物の生存戦略とのせめぎ合いは、時に魅惑的な奇景となる。
また植物そのものの佇まいに目をやると、周囲の環境への最適解としての無垢な美を感じる。
そんな感じで、私はこれまで主に「見るだけ園芸」を楽しんできた。

一方「こちらのゾーン」さんは、現在根津を舞台に、街中のスキマに植木鉢に植えた野菜と手入れの道具を設置し、街の人や道行く人に思い思いに野菜を育ててもらう「寄せにわプロジェクト」を実施されている。
特に当番制ではなく、自発的に栽培に関わってもらうそうだ。
小さな行為の積み重ねによって、スキマから街を育てていこう、という試みだ。
軒先園芸が盛んな根津という土地柄か、栽培に関し地元のベテランがアドバイスをくれたり、子どもたち同士で野菜が育つ様子を興味深く見守ったりと、着実に街の中に浸透していっているようだ。

両登壇者は、一見アプローチの仕方は異なっているように見えるが、管理するのではなく自発的な行為が生み出すものに魅力を感じる、という点で共通していた。

コミュニケーションの媒介として、植物は面白いと感じる。
植物が話題のきっかけになると、一気に警戒心がなくなり、垣根が解れることが多々ある。
自分以外の、ややもするとコントロールの効かない存在を肯定する感覚を共有してるから、だろうか。
ご来場いただいた方も、実際に路上園芸をなさっていたり、研究テーマとしてアカデミックに追究されていたりと、それぞれにユニークな視点で植物と付き合う方が多く、思わず終演後のアフタートークに華が咲いた。
緑の本棚さんという磁場もあり、穏やかで心地よい空気が充満した、とても良いひと時だった。

ご来場いただいた皆さま、お声がけいただいた石井公二さんはじめ、「まちがたり」実行委員会の皆さま、こちらのゾーンさん、緑の本棚さん、本当にありがとうございました。

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