ストリクスヘイヴン・ミスティカルアーカイブ雑感
あと半月ほどで、MTGアリーナにストリクスヘイヴン(STX)が実装されます。プレビューカードもぼちぼち公開されており、その目玉であるところのミスティカルアーカイブは全カードが公開されました。各パックに一枚封入されており、スタンダードでは使えませんが一部を除いてヒストリックではリーガル、ドラフトでは全カードリーガルのようなので、このカード群を(主に)リミテッド目線で見ていこうと思います。
なお、排出率はアンコモン(67%)、レア(26.4%)、神話レア(6.6%)であり、各希少度の枚数も考慮すると、各アンコモンは3.7%、レアは0.9%、神話レアは0.4%の確率でパックから出ます。特定のカード一枚の出やすさで言うと、ミスティカルアーカイブのアンコモンは通常のレアの2倍程度、ミスティカルアーカイブのレアは通常の神話レアと同程度、ミスティカルアーカイブの神話レアはそのさらに半分弱の頻度で出現すると考えられます。
つまり、STXのドラフトで相手が《ショック/Shock》を打ってくる可能性は、カルドハイムのドラフトで相手が《傷頭のアーニ/Arni Brokenbrow》を出してくる確率の2倍程度、《稲妻/Lightning Bolt》を打ってくる可能性は《黄金架のドラゴン/Goldspan Dragon》を出してくる確率と同程度ではないか、と推測されるということです。
では、ここから個別にカードを見ていきます。
白・アンコモン
《果敢な一撃/Defiant Strike》
登場はタルキール覇王譚、その後灯争対戦やM21にも再録されたキャントリップ呪文です。効果は微々たるものですが軽量で対象を取るキャントリップインスタントというのが重要で、英雄的デッキやボロスフェザーなどで活躍しました。
STXにも魔技/Magicraftという「インスタントやソーサリーを唱える度に」何らかのボーナスを得るメカニズムがあるようなので、おそらくそれなりに便利な一枚になりそうです。もちろんコンバットトリックとして役立つ場面もあるでしょう。
《活力回復/Revitalize》
M19で登場、M21とKHMで再録されたキャントリップつきのライフ回復呪文です。カード一枚は3ライフより嬉しいことが多いので、ライフ回復つきのキャントリップ呪文という方が正確かもしれません。
3点回復はライフレースの終盤などでは割と重要な意味を持ちますが、それ(延命)目的で採用されることは少なく、主にライフゲインシナジー(M19、M21)や呪文を唱えたという実績(KHM)を手札を減らさず達成できるという点が買われます。STXには上述の魔技があるので後者の目的で採用されることがあるかもしれません。
《神聖なる計略/Divine Gambit》
KHMで登場したばかりのリスクつき汎用追放除去です。相手の手札がない時に打てば強いのですが、序盤はリスクが高すぎて打ちづらいのでせっかくの軽量コストにもあまり意味が薄く、結果的にあまり採用されないカードとなっています。特殊な事情がなければSTXでも同様でしょう。現時点ではミスティカルアーカイブの「外れ枠」の一つに見えます。
白・レア
《神々の思し召し/Gods Willing》
テーロス、M20で収録されたプロテクション付与呪文です。キャントリップこそありませんが占術1のおまけがあります。
除去の回避に使うのが主目的になりそうですが、コンバットトリックや疑似除去オーラ外し、(相手の場によっては)とどめのアタックをねじ込むのに使ったりすることもできます。残念ながら相手のクリーチャーについた強化オーラをはずすことはできません。
小回りの効く便利なカードで、魔技の存在も考慮するとそこそこ重宝しそうです。
《剣を鍬に/Swords to Plowshares》
アルファ版から第4版までの基本セットに収録され、アイスエイジにも再録された白の基本除去…………もとい、Magic最強除去との呼び声も高い強力カードです。
私は本当にこれが基本除去だった時代からタイムシフトしてきたプレイヤーなのでピンとこない部分もあるのですが、どうやら現代の構築に存在してはいけないカードパワーという扱いらしく、(ミスティカルアーカイブが使用可能な)ヒステリックでも最初から使用禁止が決定されているカードのうちのひとつです。
リミテッドにおいては、どんなに強いと言っても所詮は1対1交換が基本の使い切りクリーチャー除去なので、一枚で勝ってしまうボムのようなカードではありません。しかし1マナでどのようなクリーチャーも追放してしまうのはテンポ面の恩恵が非常に大きいので色が合っていたらまず間違いなくピックするカードでしょう。初手でも取るレベルかもしれません。
ライフゲインがあるので自軍のクリーチャーに打つこともあります。単なる延命だと大抵そのまま負けるだけですが、ライフレースがヒートアップしているような局面だと勝ちにつながることも珍しくはありませんでした。今回は排出率の関係でこのカードを見る機会自体が少ないと思われるのでそういう局面に遭遇する確率は高くなさそうですが、当時はアンコモンだったので割とよくある光景でした。
《土地の寄進/Gift of Estates》
黎明期のブロークンカード(のくせになぜか第4版に再録されてしまった)《土地税/Land Tax》の調整版である《税収/Tithe》のさらなる調整版。サーチ枚数は初代に並びますが、条件を満たしていないと何もしない、1マナ重い、ソーサリーである(フェッチの起動に割り込めない)など、どちらかと言うと二代目よりも弱体化しています。
それでも比較的ゆるい条件で2マナソーサリーが手札を2枚増やすのは破格で、さらにヒストリックには平地であるトライオームやアモンケットの2色サイクリングランドもあるので実際のドローに変換することもできます。
更に困ったことに、ミスティカルアーカイブには狙ったかのように《渦まく知識/Brainstorm》が再録されており、昔懐かしい(そしてげんなりする)光景をまた見せられることになるのかもしれません。
リミテッドでは構築ほどの悪用はできませんが、2マナで手札が2枚増えるのは魅力です。マナ基盤の安定に貢献するほか、ルーターとの併用なども強力でしょう。後手なら土地を置く前に打てばたいてい条件が満たされています。
《儚い存在/Ephemerate》
モダンホライゾンから再録されたブリンクカード。反復があるので2回使えますが、二回目はタイミングが限定されるので多少使い勝手が落ちます。
インスタントのブリンクは非常に器用な効果で、除去回避(ヨーリオンなどと違って即座に帰ってくるので全体除去は避けられません)、オーラ剥がし、疑似警戒、ETBの使いまわし等、用途は多岐にわたります。2回目もETBの使い回しなどには使えるので、リミテッドでも十分に採用できるでしょう。一枚で魔技を2回誘発させられるのもポイントになりそうです。
《マナの税収/Mana Tithe》
(英語版カード画像が見当たらず。以下類例あり)
次元の混乱で白にタイムシフトした《魔力の乱れ/Force Spike》です。土地で置いたりサイクリングしたりできる現代の亜種と比べると潰しが効きませんが、本家同様1マナで打てるのは魅力です。白にはレーデインやサリアのようなマナ拘束系ヘイトベアーも多いので、そのようなクリーチャーを満載した白ビートダウンなら採用されるかもしれません。ただし、本家と違って青くないので中盤以降《意志の力/Force of Will》の弾として有効活用できないのはマイナスポイントです(肝心のFoWももちろん無い)。
リミテッドでは影響力が小さいですが、昨今のリミテッドはテンポ重視でマナを使い切ることも多いので序~中盤は刺さる瞬間があるかもしれません。ただ中盤以降は腐りやすいのでルーティング手段などがほしいところです。
白・神話レア
《副陽の接近/Approach of the Second Sun》
アモンケットの勝利条件カードです。7マナのソーサリーを唱え、ライフ回復があるとはいえそこから7ターン生き延びる必要があるのでどの程度現実的であるかは不明です。防御力はあるが場を更地にする手段も強力なフィニッシャーもない、というようなデッキなら活きるかもしれません。
二度目を打ち消されるとだめですが、一度目は唱えてさえいれば打ち消されていてもよいので、同じくミスティカルアーカイブに収録されている《記憶の欠落/Memory Lapse》で自分からカウンターすることで二度目までの時間を大幅に短縮できます。もちろん現実的ではないでしょう。
《審判の日/Day of Judgment》
ゼンディカー初出、その後基本セットにも再録されたカードです。《神の怒り/Wrath of God》の亜種ですが、MTGアリーナ環境に限れば再生が存在しないので実質的な同型再版です。ラスなのでリミテッドにおいては当然強いでしょう。多くの亜種に比べて軽いのもポイント。
《テフェリーの防御/Teferi's Protection》
統率者2017からの再録で、1ターンの間自分と自軍がほぼ完全防御状態になります。すべての効果が意味を持つことは稀でしょうが、全体除去も含めた除去回避、コンバットの無効化、(対象を取るなら)手札破壊や直接火力のカウンターなど、対戦相手が仕掛けてきた行動をほぼ無効化することができます。ミスティカルアーカイブの神話レアなのでケアされることもまず無いでしょう。
ものすごく大雑把には「《英雄的介入/Heroic Intervention》+《濃霧/Fog》」のようなカードで、それぞれ限定的ながらも刺さった時の効果が大きいので、ピックできたら入れてみてもよいでしょう。
青・アンコモン
《選択/Opt》
初出はインベイジョン、そこから約17年後のイクサランで再録されて以降、多くのセットに再録され現在の青の基本1マナドローの地位を築いているカードです。軽量ドロー、かつインスタントということで赤青スペルのようなデッキの定番で、STXでは魔技との相性がよいでしょう。リミテッドにおいてもその目的で採用されるでしょう。もちろんデッキの潤滑油という本来の効果も優秀です。
《旋風のごとき否定/Whirlwind Denial》
テーロス還魂記で登場した、スタック上の呪文や能力をまとめてカウンターする呪文です。狙ったようにストーム呪文と一緒に収録されています。
リミテッドにおいては、魔技とそれを誘発させた呪文を同時にカウンターできる点などが評価されそうです。
《巧みな軍略/Strategic Planning》
ポータル三国志、破滅の刻、カルドハイムと収録されてきたカードです。この手のドロー呪文としてのほかとの違いは選ばなかったカードが墓地に落ちる点で、序盤から墓地を肥やす動機があるセットなら使いみちもあるでしょう。
墓地利用の手段がない場合、ほぼ《予期/Anticipate》の下位互換に過ぎないカードということになるのであまり採用されないでしょう。KHMでもドラフトデッキでの採用率は低めで、さほど弱くはないですが枠がなくて抜ける感じです。
《否認/Negate》
初登場はモーニングタイドとMagicの歴史では中盤あたりですが、再録を繰り返してすっかり定番のカードとなっています。
構築ではサイドボードによく見られ、メタによってはメインでの採用もある有力カードですが、リミテッドでの採用率はあまり高い方ではありません。ただ、STXには魔技がある関係で非クリーチャースペルの比率が高くなる可能性があり、このカードの採用率も少し高くなるかもしれません。このカード自身も魔技を誘発させることができます。
青・レア
《渦まく知識/Brainstorm》
初出はアイスエイジ、その後第5版やメルカディアン・マスクスにも再録された青の基本軽量ドローカードでしたが、月日がたってカードプールが広まった現代ではなんとヴィンテージの制限カードです。
私と同世代のプレイヤーは「え、確かに便利だけど、そこまでか?」と思うかもしれません。しかしフェッチランドの普及と環境の高速化、カードプールが広まったことによるライブラリ操作の有効性上昇などによりスタンダード当時より遥かに危険なカードになっているようです。
しかし、それでいてこのカードはヒストリックの禁止リストに入っていません。現在のヒストリックのカードプールならそこまで危険でないという判断なのかもしれませんが、ヒストリックにはローテーションがないのでカードプールは広まる一方です。いずれ禁止されるかもしれません。
強力カードの呼び声高い一枚ですが、実は単体で使うとただのドローの前借りです。とりあえず打ってみて、意外と地味な働きにがっかりする人もいるかもしれません。戻したカードを引かない(占術、そのターン中に殺すコンボ、シャッフル)手段があってこそのカードでもあります。また、手札破壊から重要カードを逃がすこともできるのでヒストリックでは《思考囲い/Thoughtseize》や《コジレックの審問/Inquisition of Kozilek》に対応して打たれる光景を見かけることになるでしょう。
リミテッドの場合、シャッフル手段がそこまで豊富ではないので前述の通りただの「ドローの前借り」になる可能性が高いですが、1マナでライブラリを3枚掘れるので初手にあるとキープ基準が大幅に緩みます。軽いドローなので魔技とも相性がよく、便利なカードではあるでしょう。占術はリミテッドでもそこそこ機会が多いと思われるので組み合わせるとより良さそう。
《記憶の欠落/Memory Lapse》
初出は弱小セットと名高いホームランド。当時はこのカードも「まあホームランドのカードって感じだよね」という扱いでしたが、その後のコンボデッキの隆盛などもあって採用率が徐々に高まっていきました(コンボはする側もされる側もそのターンさえカウンターできればよいので)。シングルシンボル2マナで(少なくともその場では)確実にカウンターできるのはやはり強く、環境が高速化して1ターンの後先が生死を分けやすくなった現代ではより強力でしょう。
リミテッドにおいては漫然と打ってももう一度打ち直されるだけですが、前述の通り生死を分けるターンならばハード・カウンター同然ですし、優勢時には「どうでもいいカードをカウンターしてドローを腐らせる」というプレイも可能です。また、コンバットトリックのような「タイミングが重要で、かつ見えていると効果が薄い」カードに対しても有効に働きます。ミスティカルアーカイブのレアなので見る機会は少ないでしょうが、すごく強くはないがさほど悪くもない、といったカードです。
《強迫的な研究/Compulsive Research》
英語の方の顔がきもい。
ラヴニカ:ギルドの都(初代ラヴニカ)で登場したカードです。そのままだと手札が増えませんが、土地を捨てればルーティングしつつ手札も増やせます。《土地の寄進/Gift of Estates》と一緒に使えと言わんばかりです。
リミテッドにおいてはいらない土地を捨てられるルーティングカードはマナフラッド受けに最適で、さらに手札を増やせるこのカードは非常にありがたい存在になりえます。リミテッドの土地構成なら、手札に土地がなくても三枚も引けば土地が混じっている確率も高いのもポイントです。色が合っていればピックしていいカードでしょう。ソーサリーなのが若干気になりますが、インスタントだったら強すぎるということでしょう。
《対抗呪文/Counterspell》
言わずと知れた、元祖にして強力なカウンター呪文です(ただし上位互換も存在するため最強ではない。おそらくランキング的には三番目くらい)。禁止リストの7枚に入っているので、残念ながらヒストリックで見ることはできません。
非常にシンプルな性能で欠点らしきものはダブルシンボルくらいですが、リミテッドの場合はこのダブルシンボルが意外と曲者です。また、どこまでいってもただのカウンターでしかなく、盤面を一変させたり速やかにゲームを終わらせたりする力もありません。しかし2マナの確定カウンターは当然強力で、折角だから使いたいという欲求も加味すると早めのピックになりそうです。
《テゼレットの計略/Tezzeret's Gambit》
ヴォリンクレックスの次はファイレクシア・マナが帰ってきました。
青のカードですが、実質的には色を選ばないライフロスつき《予言/Divination》+αなので、どのデッキにも採用されうるカードです。現時点で発表されているカードにも+1/+1カウンター関連が結構見受けられるので、増殖が活かせそうならピックの優先順位が上がるでしょう。
青・神話レア
《青の太陽の頂点/Blue Sun's Zenith》
ミラディン包囲戦の頂点サイクルの一枚で、色拘束が強く解決時にライブラリに戻る《天才のひらめき/Stroke of Genius》です。
構築では色々悪さができそうですが、リミテッドにおいては「素直な」使い方になるでしょう。ただしトリプルシンボルがきついのでデッキを相応に選びます。ライブラリに戻るので中盤に適当に打ってもまた引ける可能性があるのは嬉しいですが、リミテッドのライブラリ枚数だと何度も打つのは危険かもしれません。同様の理由で、終盤に巨大なXで相手に打つという使い方になることも多そうです(排出率の関係で、「多い」というほど見る機会があるかは疑問)。
《時間のねじれ/Time Warp》
《Time Walk》の調整版ですが、《Time Walk》は論外すぎるので、実質的には追加ターン系カードの土台になったカードと言えるでしょう。その後の亜種のマナコストはこのカードより重めに調整され、再利用を防ぐため墓地に落ちないものも複数あります。
しかし、それらの調整前のこのカードがヒストリックに来てしまいました(禁止リストには入っていません)。しかも《新たな芽吹き/Regrowth》が同時収録されていて、カラデシュリマスターには《途方もない夢/Wildest Dreams》が入っていました。環境にはコピー手段も豊富にあります。ちょっと危険な匂いがしますね。
リミテッドにおいてはそのような悪用はできないので単に追加ターンを一度得るために使うことになります。もちろん、それだけで十分強力です。
《精神の願望/Mind's Desire》
トーナメントリーガルになると同時にタイプ1(ヴィンテージ)で制限、タイプ1.5(レガシー)で禁止になった、もはや伝説の域にある凶悪カードです。ある意味ではアーカイブにふさわしいカードですが、ヒストリック禁止リストの7枚には入っていません。
軽量マナアーティファクトのないヒストリックならばそこまで危険ではないという判断かもしれませんが、チェーンコンボのような動きができるカードはそれなりにあり、青には1マナドローも複数あり、同じく代表的ストーム呪文の《苦悶の触手/Tendrils of Agony》が同時収録されており、と危険な匂いはします。そもそもストームというメカニズムが危険極まりないものであるため、今後カードプールが広がっていけばいつまでもリーガルのままではいられない気がします。
リミテッドでは重いランダムカードに過ぎない(土地や、タイミング的に使えないカードがめくれる確率もそれなりにある)のでそこまで危険ではなく、ストームによるコピーができなければむしろ弱いのではないかと思いますが、引いたら使ってみたくなってピックしてしまいそうです。
黒・アンコモン
《強迫/Duress》
ウルザズ・サーガで登場した元祖1マナ手札破壊。コンボ・コントロール・パーミッション相手のサイド(時にメイン)カードとして活躍しました。
その後、ヒストリックで活躍中の《思考囲い/Thoughtseize》や同時収録の《コジレックの審問/Inquisition of Kozilek》など多くの亜種が登場するとともに自身も再録を繰り返し、現在でもスタンダードリーガルのカードです。
リミテッドにおいてはクリーチャーを抜けないのが厳しく、M21ドラフトなどでもそうであったようにあまり優先度の高いカードではありません。今回は魔技があるので相対的に価値が上がりそうですが、それでも微妙なラインと思われます。
《苦悶の悔恨/Agonizing Remorse》
テーロス還魂記で登場したカードです。そのためヒストリックへの影響はありません。
土地でなければ何でも抜けるのでリミテッドでも強力な部類の手札破壊です。一般的に手札破壊は相手の手札が枯渇すると腐りますが、このカードの場合は墓地のカードも抜けるので、STXが墓地利用の多いセットであればより強力でしょう(初出のテーロス還魂記には脱出がありました)。
《取り除き/Eliminate》
M21で登場したばかりの軽量除去です。構築でも活躍中。
リミテッドでも3マナ以下のクリーチャーは10体前後入っていることも多いので、それらをインスタントの2マナで確定除去できるのは強力です。アグロデッキが打ってきたコンバットトリックに合わせられたらほぼ勝ちでしょう。ミスティカルアーカイブのカードなのでケアされづらい(かもしれない)のも好材料です。
今のところ二人だけですが3マナのPWも確認されているので、PWに打てるのも全く無意味ではないかもしれません。
《村の儀式/Village Rites》
M21で登場したカードですが、早くも三度目の収録です。色の役割をよく表し、ゲーム的にもバランスの取れた好カードと認識されているのかもしれません。構築ではサクリファイス系のデッキで活躍中。
リミテッドでも、死にそうなクリーチャーやいらないクリーチャーなどをドローに変換でき、生け贄手段がほしいときにも役立ちます。無条件で入るわけではありませんが、なかなか渋い働きをする燻し銀のカードです。
黒・レア
《暗黒の儀式/Dark Ritual》
黎明期から長く黒を支えていたマナ加速呪文。私がアリーナでマジックに復帰した時に「スタンダードに無い」と知って驚いたカードの一つです(が、今見るとそりゃだめだよなって感じです)。禁止7枚のうちのひとつなのでヒストリックでは使えません。
もちろん強力なカードなのですがあくまで使い捨てのマナ源であり、単体では何もしない(終盤でトップデッキした時の価値は土地以下)、基本的にカード・アドバンテージを失う、という欠点があります(1Tヒッピーを除去で落とされるとその時点でだいぶ不利でした)。
ドラフトで引いた場合、上記の問題を差し引いてもテンポ面の恩恵が大きいのでデッキには概ね入りそうですが、ピックのタイミングは難しいところでしょう。
《苦悶の触手/Tendrils of Agony》
こちらもストーム呪文の代名詞のようなカードです。黒特有の大量ドロー手段から軽量マナアーティファクトやそれを回収する手段、上記の暗黒の儀式や《ヨーグモスの意志/Yawgmoth's Will》などで呪文回数を稼いでからこれを打てばあっさり人が死にます。仮に死ななくても16点や18点のドレインが当たっていればあとは時間の問題でしょう。
ヴィンテージ最強カードの一角と呼ばれるパワーカードで、比べれば遥かにプールの狭いヒストリックと言えども《精神の願望/Mind's Desire》同様に危険な匂いしかしないカードですが、リミテッドではそのような構築は不可能なので、良くて4点、まれに6点の本体限定ドレイン呪文といったところでしょう。あまり積極的にピックするカードではないかもしれません(希少度の問題でピックされそうですが)。
《コジレックの審問/Inquisition of Kozilek》
エルドラージ覚醒で登場した1マナの手札破壊です。マナ・コストに制限がある代わりにカードタイプに制限がありません。
1ターン目に打って外れることはほぼなく、《Duress/強迫》と比べてクリーチャーが抜け、《思考囲い/Thoughtseize》と比べてライフが減らないのでアグロに対して効果的とも言えます。もちろんカウンターの多くや単体除去も抜けるのでコントロールにも効果があります。ヒストリックではすでに思考囲いが活躍していますが、手札を見られることで相互に恩恵があるので併用も考えられます。
リミテッドの場合、1ターン目のアクションとしては優秀ですが腐り始めるターンも早く、無条件で投入できるカードではなさそうです。
《血の署名/Sign in Blood》
基本セットに度々収録された黒のドロー呪文です。
シンボルがきついのが玉に瑕ですが、ライフロスを考慮しても2マナ2ドローは強力です。黒の濃いデッキには普通に採用できるでしょう。対戦相手に打つこともできるのでトドメの一撃にもなります(凌がれると大ピンチですが)。
《破滅の刃/Doom Blade》
黒の基本除去であった《恐怖/Terror》の系譜に連なるカード。「黒いことは除去耐性である」という、現代では何のことやらわからないフレーズの由来となったカード群の最後の一枚です。
黒に打てないのはもちろんマイナス要因ですが、それ以外全く制約のないシングルシンボル2マナインスタント除去は強力です。リミテッドではもちろん、ヒストリックでも見かけるようになるかもしれません。
リミテッドにおいては、STXはラヴニカのようなマルチカラーの多い環境のようなので黒いクリーチャーの比率が1/5より多い可能性がありますが、それでも十分強力でしょう。
黒・神話レア
《悪魔の教示者/Demonic Tutor》
和風イラストがかっこいい。人気出そう
あらゆるサーチカードの元祖。「教示者/Tutor」がマジックにおいてサーチカードを意味する言葉となった由来でもあります。
わずか2マナであらゆるカードをサーチでき、しかも手札に入るのでアドバンテージ損をしない汎用性がとにかく強力で、(4枚積まれると制限カードの概念がほぼ有名無実化するので)ヴィンテージでは制限、レガシーでは禁止カードです。当然ヒストリックの禁止リストにも入っています。
リミテッドでも当然強力で、最序盤やライブラリが残り一枚などでなければいつ打っても強く(最悪2ターン目に土地を探してくることもできる)、ボムレアの類がデッキにあればなお強力です。色が合っていれば確実にデッキに入るでしょう。今回に関しては魔技が誘発するのでよりお得です。
《命運の核心/Crux of Fate》
運命再編のカード。タルキールブロックらしくドラゴンを参照します。
基本的には二番目のモードで黒いラス(《滅び/Damnation》)のように使うことになるでしょう。一番目のモードも、構築で活躍する《黄金架のドラゴン/Goldspan Dragon》に宝物を出させず除去できるのが役立つことがあるかもしれません。
リミテッドではほぼ二番目のモードでラスとして使われることになるでしょう。自分がドラゴンを出していればもちろんより強力です。ドラゴンは大抵エンドカードなので、それを除去するために一番目のモードで打つこともありえます。
《汚れた契約/Tainted Pact》
オデッセイのかなり変則的なサーチカードです。あまり引っ張るとカードがかぶって何も得られず終了という、我欲を戒める寓話のようなカードです。
基本土地がかぶっても終了なので構築では工夫が必要で、同様の理由でリミテッドでは採用がためらわれるカードです。土地も含めてハイランダー構成のデッキならライブラリを一発で空にできるので、そのような用法で使われるかもしれません。
赤・アンコモン
《初子さらい/Claim the Firstborn》
エルドレイン産の一時コントロール奪取呪文。構築でも活躍中です。
リミテッドでも的がないことはまず無いでしょうが、ただ取っただけだといくらかのダメージを与えて終わりなのでやはり何かしらの処分方法がほしいところです。環境にいわゆるサクり台がどのくらいあるのかは不明ですが、実用的かつ低レアリティのものがあるならこのカードの価値も上がるでしょう。
自軍のクリーチャーに打って速攻付与やアンタップによってタップ能力を複数回起動、という使い方もできます。構築でたまに見かける小技ですが、リミテッドでも役立つ瞬間はあるかもしれません。
《ショック/Shock》
《稲妻/Lightning Bolt》の調整版にして、現代の火力の基本となっているカードです。そのご先祖様(もちろん上位互換)と同じセットに同居しているのは少し気の毒ですが、双方ともアーカイブに値するカードということなのでしょう。
いかにも基本セットというような顔をしたカードですが、初出はストロングホールドというテンペストブロックの小型エキスパンションです。出た当初は「え~2点しか入らないの~?」という感じでしたが、その後普通に使われるようになりました。
どこにでも打てる汎用性もいかにも「基本カード」といった感じですが、最近の火力はクリーチャー(とPW)限定のものが増えているので、本体に打てることは相対的に特徴の一つとなってきているかもしれません。
リミテッドでも1マナ2点のインスタント火力は便利でデッキにも大抵入りますが、パックから出てきたら「どうせならライトニングがよかったなあ」と思ってしまいそうです。
《胸躍る可能性/Thrill of Possibility》
エルドレインの王権で登場したルーティング(かき回し)カードです。赤の基本ルーティングカードであった《苦しめる声/Tormenting Voice》がインスタントになった上位互換で、その後テーロス還魂記やM21にも再録されこちらが基本になっていくのかと思いきや、ゼンディカーの夜明けには苦しめる声が収録されていました。エルドレイン、テーロス、M21はローテーションで同期しているので揃えただけで、やはり基本は苦しめる声のほうなのかもしれません。
リミテッドではいらない土地を捨てるマナフラッド受け、兼、困ったときには土地を探しに行ける潤滑油という位置づけですが、「カードを引くこと」「カードを捨てること」が何らかのシナジーに使われることもありえます。STXにそのようなメカニズムがあるのかはわかりませんが、とりあえず魔技を誘発させ、次の誘発材を引きに行くことが可能です。軽く使いやすいので、マナフラッド受けが確保できていないデッキなら一枚くらいデッキに入れておきたいところです。ただ、実際のところ地味なカードで、ほとんどのセットに類似品がコモンで収録されているので、ミスティカルアーカイブ枠からこれが出てきたらちょっとがっかりするかもしれません。
《立腹/Infuriate》
M20で登場した赤いコンバットトリック。何かと制限やおまけが付きがちな赤のコンバットトリックには比較的珍しいシンプルな性能です。
対象やタイミングの制限がない1マナインスタントとしては十分な修正値で、コンバットトリックとしても、火力やマイナス修正への防御としても、本体火力としても及第点の性能です。癖がなく使いやすいカードと言えるでしょう。1マナで魔技を誘発させられるのもポイントになるかもしれません。
赤・レア
ついに帰ってきた基本土地破壊。これも、私がアリーナでマジックに復帰した時に「スタンダードに無い」と知って驚いたカードの一つです。
マナ拘束系カードはR&Dによって徹底的にスタンダードから排除されているようですが(nonlandって書いてあるカード多すぎ)、下環境の一種(になっていくと思われる)ヒストリックでは解禁されるということかもしれません。KHMにも重いとはいえ土地破壊がいくつか収録されており、あるいは方針の変更があったのかもしれません。
ヒストリックには《ラノワールのエルフ/Llanowar Elves》やグルールカラーの軽量アタッカーもいる(カラデシュリマスターで《忍び寄るカビ/Creeping Mold》も帰ってきている)ので、あるいは昔懐かしいランデスステロイドが見られるかもしれません。《略奪/Pillage》のかわりが《大当たり/Smashing Success》なのはちょっと寂しいですが。
土地破壊は多くの人に愛された(そして憎まれた)アーキタイプなので、おそらくこの復帰を祝いで、序盤からこのカードや大当たりでマナを縛りつつ《トロールの喚起/Waking the Trolls》や《ノットヴォルドの眠り塚/Gnottvold Slumbermound》でフィニッシュする(この両者にはシナジーもある)デッキを(強さはさておき)試みる人が出てくるでしょう。現代のデッキの多くはマナ基盤への攻撃を想定していないので、ローグデッキであるうちは意外と厄介かもしれません。2ターン目に土地が壊せないと厳しいので、《極楽鳥/Biirds of Paradise》と《Ice Storm》の復帰にも期待しましょう。
リミテッドでは、土地しか壊せないこのカードは(クリーチャー化する土地のサイクルがコモンにあるとかでなければ)基本的にデッキに入りません。リミテッド的には外れ枠でしょう。
《稲妻/Lightning Bolt》
黎明期からしばらく赤の基本火力の座を恣にしてきた強力火力で、スタンダードを去って久しい今もマジックを代表するカードの一つです。当然のアーカイブ入りと言えるでしょう。
強力とはいえただの3点火力でもあり、クリーチャーの大型化もあって存在が許されうるカードとして一時期基本セットに戻ってきていたようですが、その後また消えたままで今回もヒストリックの禁止リストに入っていることを考えると、もうスタンダードに戻ってくることはないということなのでしょう。寂しい。
リミテッドにおいては当然強力で、1マナ立っているだけでタフネス3のクリーチャーが即死する可能性をケアするのは大変です。アグロがブロッカーをどかしながら後続を追加するのも容易で、また3点となると本体火力としても馬鹿になりません(再録されない理由はこちらの可能性もある)。ミスティカルアーカイブのレアなのでそうそう見ることはないでしょうが、見たらピックしていいカードです。ヒストリックで禁止な以上、リミテッドで打つしかないというのもあります(?)
《ウルザの激怒/Urza's Rage》
渋い和風ウルザ。
元祖「打ち消されない」火力で、当時の青の天敵でした。登場したインベイジョン当時のスタンダードではよく使われたカードで同セットのトップレアでしたが、クリーチャーが大型化しメガパーミッションが絶滅した現代に蘇って活躍できるかは不明です。癖がなくおまけも付いたインスタント3点火力ではありますが、3マナは重いような気がします。
リミテッドでは3マナインスタント3点火力は十分に強力で、普通に火力としてピックされ使われるでしょう。まれにキッカーされてプレイヤーが突然死するかもしれません。
《信仰無き物あさり/Faithless Looting》
闇の隆盛のフラッシュバックつきルーティングカードです。赤のルーティングには珍しく、捨ててから引く(かき回し)ではなく引いてから捨てます。捨てるカードの選択は重要なので、この違いは大きい。
引く枚数と捨てる枚数が同じなので、このカードを使ったぶん手札が減ってアドバンテージを失います。フラッシュバック時はその限りではありませんが、失った分を取り戻せるわけではありません。
ただし、1マナでカードを2枚引いて墓地を2枚肥やせる、しかも(多少重くなりますが十分に軽いコストの)フラッシュバックでそれをもう一度できるというのは非常に強力です。あらゆる墓地利用と相性がいいほか、ソーサリーを打った実績も作りやすく、《若き紅蓮術士/Young Pyromancer》《弧光のフェニックス/Arclight Phoenix》などとの相性も抜群です。
イゼット・フェニックスやラクドス・アルカニストのようなデッキでの採用が考えられるほか、先日のヒストリック・アンソロジー4に《虚ろな者/Hollow One》が収録されていたのでホロウ・ワンを組む人も出てくるでしょう。発掘や《復讐蔦/Vengevine》がヒストリックにあったらこのカードも禁止リストに入っていたかもしれません(実際、モダンでは禁止です)。
リミテッドにおいては最大4枚のルーティングができるのでマナフラッド受けとしては最高クラスの一枚ですが、前述の通りアドバンテージを失うのが難点です。ただ、現時点でもSTXには墓地利用カードがちらほら見られる上、フラッシュバックと相性のいい魔技というメカニズムもあるので概ねデッキに入れてよさそうです。高速でライブラリを掘るので、他のドローも使う場合はライブラリアウトに注意。
《ぶどう弾/Grapeshot》
ストーム呪文第三段です。前述の《苦悶の触手/Tendrils of Agony》に比べるとワンショットには倍(以上)のストームが必要ですが、他のダメージ手段と併用すれば5~6程度のストームでも十分に致命的です。実質的に割り振り火力になるのも大きい。
赤には現時点でも《語りの神、ビルギ/Birgi, God of Storytelling》(及び《豊潤の角杯、ハーンフェル/Harnfel, Horn of Bounty》)や《遁走する蒸気族/Runaway Steam-Kin》、《舞台照らし/Light Up the Stage》、《実験の狂乱/Experimental Frenzy》のようなストームと相性のいいカードがあり、STXには《にやにや笑いのイグナス/Grinning Ignus》が再録されるようです。現時点で非常に危険な匂いがしていると言えるでしょう。
リミテッドにおいてはそこまでのストームを稼ぐのは難しく、《チャンドラの螺旋炎/Chandra's Pyrohelix》をソーサリーにしてダメージを不安定にしたもの、くらいの評価になりそうです。
赤・神話レア
《混沌のねじれ/Chaos Warp》
統率者のカードです。時代柄か土地にも触れる万能パーマネント除去ですが、そのオーナーがライブラリトップをめくってパーマネントならそれを場に出すというリスクを抱えます。
3マナインスタントの万能除去、加えて墓地に落とさないので脱出持ちなどにも強い、というのは魅力ですがリスクが不確定なのが問題です。とんでもないものが降ってくる危険性もあるので、気軽には使えません。土地以外のパーマネントがほとんど入っていないデッキに対しては追加の土地破壊として使えるかもしれませんが、現代にそのようなデッキがあるかは不明です。
自分のパーマネントに打つこともできますが、めくる前にシャッフルするので積み込みからの踏み倒しは難しそうです。
リミテッドでもやはり博打的なカードですが、大型クリーチャーや厄介な置物に打てばそれよりまずいものが出てくる確率は低く、それなりに使えそうなカードではあります。よりランダム性の強い《神聖な計略/Divine Gambit》という感じかもしれません。
リミテッドでは非パーマネント呪文と土地が合計20枚以上入っている場合が多いので、相手が「外れ」を引く確率は1/2よりも大きそうです。また、STX環境はインスタントとソーサリーが多く積まれそうなので、他のセットより少しだけリスクが小さい可能性もあります。
《高まる復讐心/Increasing Vengeance》
古の《Fork》に連なる、(R)(R)のコピー呪文シリーズの一枚です。フラッシュバックがついている代わりに、自分の呪文しかコピーできなくなりました。フラッシュバック時(あるいは、別の手段で墓地から打った場合)は2回もコピーできますが、5マナ必要なので重い呪文をコピーするのは難しいかもしれません。
リミテッドの場合、コピー対象が限定的なこと、コピー元の呪文に加えて(R)(R)を用意しなければならないことなどから使いづらさもあります。ただ、重いとはいえフラッシュバックもあるのは便利で、採用を検討して良いレベルにも思えます。このカード一枚で魔技を最大5回誘発させられるというのも魅力です(魔技はコピーでも誘発するので、この呪文2回+コピー3回の計5回)。
《ミジックスの熟達/Mizzix's Mastery》
統率者2015のカードです。墓地のインスタントやソーサリーを一枚ただで唱えられる効果ですが、超過コストで唱えると墓地のインスタントやソーサリーすべてをただで唱えられるようになります。
踏み倒しカードの一種なので、墓地に根本原理のような重いソーサリーを落としてそれを打つリアニメイトのような使い方が思い浮かびます。十分に墓地を肥やしてから超過で打てば瞬殺も可能でしょう。いずれにせよ専用の構築が必要なタイプのカードと思われます。
リミテッドにおいては除去の使い回しなどが主な用途になるでしょう。魔技が2回誘発するのも見逃せません。デッキの他のインスタントやソーサリー次第であり序盤は腐ることも予想されますが、悪くないカードのように思えます。
緑・アンコモン
《耕作/Cultivate》
M11で登場した、緑の定番である土地サーチ呪文。その後M21に再録され、現在もスタンダードやヒストリックのランプ戦略を支えています。
3マナは若干重いですが、単純に一枚分のアドバンテージが取れ、片方は場に出るのでマナ加速にもなる、バランスの取れた好カードです。
リミテッドの場合、構築ほどきっちりとした計算のもとにデッキを組むのは難しいですが、これ一枚で好きな色の土地2枚を確保できる安定性は魅力です。タッチカラーのあるデッキは当然、そうでなくても採用が検討できるでしょう。3マナ域のアクションが少ないデッキなら尚更です。
《蛇皮のヴェール/Snakeskin Veil》
カルドハイムで登場したばかりのカードがアーカイブ入りです。
クリーチャーを除去から守り、コンバットトリックにもなり、その後恒久的に強化される便利なカードです。緑には格闘除去があるのでサイズの調整は戦闘以外でも重要な意味を帯びてきます。強化呪文の常としてクリーチャーがいないと腐るので枚数には考慮が必要ですが、基本的にデッキに入るカードです。STXの場合は1マナで魔技が誘発するのもポイントになるかもしれません。
《冒険の衝動/Adventurous Impulse》
ドミナリアで登場、イコリアで再録されたカードです。
コストが軽く序盤の安定に貢献してくれるカードです。リミテッドで「外れ」になる確率は低いでしょう。終盤はクリーチャーになる(かもしれない)&魔技を誘発させられる土地、という枠で採用することができます。土地がほしいときに土地がめくれないリスクもありますが、その場合もライブラリを3枚掘って土地に近づいた(放っておけば3ターン土地を引けなかった)と考えれば悪くはないでしょう。ただ、素直に土地にしておけばよかったと思う瞬間はあるかもしれません。
緑・レア
《嵐の乗り切り/Weather the Storm》
緑のストーム呪文です。ライフを得るだけなので他のストーム呪文のようにエンドカードにはなりませんが、インスタントなので相手のストーム呪文に対応して打てば「嵐の乗り切り」の名の通りそれを乗り切ることができます。ストームデッキが環境に登場するようならサイドボードに挿されるかもしれません。
リミテッドではあまり出番がなさそうです。
《新たな芽吹き/Regrowth》
タイプを選ばない墓地回収カード。初版のカードということもあり、現代の亜種と違い追放されません。
かつてはタイプ1(ヴィンテージ)で制限、タイプ1.5(レガシー)で禁止となっていたカードで、《太陽の指輪/Sol Ring》《悪魔の教示者/Demonic Tutor》と並んでリバイズドの強力アンコモンの一角と見なされていました。その後墓地利用の選択肢が増えたこともあって制限・禁止は解除されましたが、コストの軽さと汎用性の高さは健在で、十分実用に耐えるカードでしょう。追放されないので、同じカードを何度も使い回すタイプのデッキに利用されることも考えられます。
リミテッドでも便利なカードで、軽いので拾ったカードをそのまま使うのも比較的容易です。魔技も誘発します。
《クローサの掌握/Krosan Grip》
刹那のついた《帰化/Naturalize》です。置物除去としての確実性はかなり高く、カウンターなどで守らせないのみならず、《大釜の使い魔/Cauldron Familiar》を生け贄に捧げる暇を与えず《魔女のかまど/Witch's Oven》を割ったり、能力を起動させることなく《命の恵みのアルセイド/Alseid of Life's Bounty》を除去したりできます。
リミテッドの場合、基本的にはただの置物除去ですが刹那が活きることもあるでしょう。
《調和/Harmonize》
構図が似ているが、これはタイムシフトの元になった《集中/Concentrate》よりも《瞑想/Meditate》が思い浮かぶ
《集中/Concentrate》が次元の混乱で緑にタイムシフトしたカードです。もとが青のカードだけあって、ソーサリーながら4マナ3ドローの高効率を誇ります。リミテッドではおそらく強力で、緑はマナを用意するのが得意なので構築でも使われるかもしれません。
《豊穣な収穫/Abundant Harvest》
「設定上は」モダンホライズン2で新録されるカードで、未来予知タイムシフト同様「未来からの再録」となるカードです(我々の時系列ではもちろん今回が新録です)。
前述の《冒険の衝動/Adventurous Impulse》系のカードですが、カードタイプを選べるので利便性は向上していると思われます。ただ、「クリーチャー」でなく「土地以外」なので不安定性もあります。
土地が一枚だけ、あるいは土地以外が一枚だけという構築をすればそのカードが確実に手に入りますが、そのような構築が可能であるのかはわかりません。
リミテッドでも、序盤の土地を安定させ、土地が並んだ後は呪文を持ってこられる(ついでに魔技も誘発する)便利な呪文のように思われます。
緑・神話レア
《自然の秩序/Natural Order》
ビジョンズ出身の強力カードです。大抵がろくなことにならない「サーチ&踏み倒し」系のカードで、サーチの中では比較的害が少ないとされるクリーチャー、しかも色の限定もついているということで下環境での制限・禁止は免れていますが、レガシーのレベルでも活躍しているパワーカードです。ヒストリックにあれば3ターン目に《星界の大蛇、コーマ/Koma, Cosmos Serpent》が飛び出してくるところが見られたはずですが、残念ながらというか当然ながらというか、禁止リストの7枚に名を連ねています。
疑いようもなく強力なカードですが、基本的に2枚のカードを1枚のカードに変える効果なので、適当に使うと損をするだけです。サーチ&踏み倒し系はカードプールが広いほど強く、ある意味最もプールが狭いリミテッドでは、それこそコーマのようなクリーチャーが取れているのでなければ使い所が難しいカードになります。ただ、いらないクリーチャーをコモンのファッティに変えるだけでも強い瞬間はあります。
《原初の命令/Primal Command》
ローウィンの命令サイクルの緑です。モードを選ぶ呪文ですが、2つのモードを選べるのがこのサイクルの特徴です。
カードアドバンテージにつながるのは2番目と4番目ですが、残りも大きめのライフゲインに墓地対策と、必要なときにはありがたい効果です。モードを選べる呪文、それも複数選べるということで様々な状況に対応できる融通性の高いカードです。コントロールやミッドレンジ系の緑デッキならば採用が検討できるでしょう。
融通性の高さはリミテッドでもおそらく同様で、(マナがなく打てないなどでなければ)腐る状況が考えづらい強力カードです。
《チャネル/Channel》
チャネルボールで有名な、緑のマナ加速カード。適当なクリーチャーを出しつつ3ターン目にX=19の《原初の力/Primal Might》を打つだけでゲームが終わってしまうので、当然禁止リストの一員となっています。当時のスタンダードでも制限・禁止になりましたが、なぜか第四版まで生き残りました。
かなり特殊なカードで、存在はかなり有名でこうしてアーカイブにも入っていながら現代に至るまで亜種と呼べるようなカードが作られていません。
リミテッドの場合、色拘束のきつさから意外と使いづらいカードです。無色の重いカードや不特定マナ部分が大きいカードと一緒に引かないと旨味が小さく、恩恵を最大限に受けるには緑のダブルシンボルに加えてそのカードの色マナが早い段階で確保できている必要があります。さらに、基本的にアドバンテージを失う上にライフも失うので唱えたカードをカウンターや除去などで処理されるとかなり厳しく、エルドラージのようなカードやX火力が取れているのでなければリミテッドでは結構微妙な一枚です。
多色・レア
《灯の燼滅/Despark》
マナ総量4以上という制限がある代わりに、カードタイプを問わない(現代のカードにしては珍しく「土地以外」と書かれていませんが、書く必要もない)追放除去です。灯争対戦のカードなので新たにヒストリックに与える影響はありません。
リミテッドにおいてマナ総量4以上のパーマネントが出てこないデッキはあまり多くはなく、出てきた場合は脅威になる可能性も高いので、それを2マナインスタントで追放できるのは便利です。数を積みたいカードではありませんが、そもそも二枚ピックできることは稀でしょう。
《電解/Electrolyze》
ギルドパクトのカード。《火/Fire》(あるいは《双雷弾/Twin Bolt》または《チャンドラの螺旋炎/Chandra's Pyrohelix》)に青マナを足したらキャントリップがつきました。
最大二枚分のアドバンテージが取れるのが魅力で、タフネス1を多く見かけえる環境ならヒストリックでもメインやサイドに積まれるかもしれません。
リミテッドではより強力です。単純に3マナ2点火力としてタフネス2を焼きつつドローするだけでも十分で、トークンなどでないタフネス1を2体除去したらほぼ勝ちと言えるかもしれません。手札を減らさず魔技を誘発させられるのも魅力です。
《化膿/Putrefy》
初代ラヴニカで登場した汎用除去です。黒緑には汎用除去が数多くありますが、単体除去としてはその先駆けと言えるカードです。アーカイブらしい一枚と言えるでしょう。
ヒストリックにはすでに《大渦の脈動/Maelstrom Pulse》があるのでこのカードが採用される可能性は低そうですが、インスタントであることに意味がある環境ならばあるいは出番があるかもしれません。
3マナインスタントの無条件クリーチャー除去、かつ必要ならばアーティファクトも割れるということで、リミテッドでは言うまでもなく強力です。色が合っていたらピックしない理由はほぼ無いでしょう。
《稲妻のらせん/Lightning Helix》
初代ラヴニカの名カード。やっていることはドレインですが、あくまで「赤の火力と白のライフゲインの組み合わせ」です。これがあるなら(U)(B)で黒3マナを出しつつ3枚ドローするカードがあってもいいはず(よくない)。
特にアグロに対して効果的なカードで、ヒストリックでもメインあるいはサイドに採用されるかもしれません。ショックランドやZNRの神話裏面土地でライフがガンガン減っていくデッキならばメイン採用の動機が増すでしょう。
リミテッドではインスタントでどこにでも打てる2マナ3点火力の時点で及第以上の性能です。ライフゲインが光るときもあるでしょう。
《成長のらせん/Growth Spiral》
「らせん(螺旋)」は上のHelixのほうが近く、Spiralは蚊取り線香のような平面の渦巻を表します。
ラヴニカの献身で登場し、以来緑青を含むランプデッキでは定番となっているカードです。ヒストリックでも活躍中。
ヒストリックにはすでに存在するカードなのでリミテッドについて考えると、2マナインスタントで手札を減らさず魔技を誘発でき、序盤に打てればマナ加速にもなりうる、とそこそこ便利なカードに見えます。神話レアなみの排出率のカードでやることかというと微妙ですが、色が合っていれば採用できるでしょう。
ミスティカルアーカイブは以上です。次は白。
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