初心者向け・ピック方針(一般論)


 カルドハイム実装からそろそろ二ヶ月が経過しますが、MTGアリーナにおいては、「新弾のカードはドラフトで集める」というのが定説になっています。

 しかし、その一方で「ドラフトはよくわからないからやらない」「難しそう」「どうせ負ける」などの声も根強く存在します。

 アリーナはテーブルトップのMagicに比べて非常に安上がりなのが特徴ですが、特にドラフトにおいては報酬も考慮すると非常に格安となっています。やらないのはもったいない。

 というわけで、今回はドラフト初心者の方が戸惑いがちなピック方針についてちょっと書いてみようと思います(カルドハイムの攻略ではなく、一般的な話です)。



理想のピックとは

 入口があるならゴールもあるはずだ、ということで、目指すべき最終地点、理想のピックというものについて考えてみます。

 理想のピック像にも色々あるでしょうが、「環境のすべてのカードの効果、能力、強弱、使い方、シナジーなどに精通しており、そこまでのピックと今後流れてきそうなカードから自分のデッキに最も適した一枚をピックできる」というのがひとつの理想ではあろうと思います。

 とはいえ、そこに行き着くには身につけるべき知識とそれを使いこなす経験が膨大に要求されます。もちろん私もそんな域にはいません。いわんや初心者をや、というわけで、ドラフトをあまりやったことがない人が(将来的にはともかく)いきなりその真似をするのは無理があるでしょう。


情報を絞ろう

 初心者と上級者の違いは、なんといっても知識と経験です。そもそもドラフトは構築と比べて使用されうるカードの種類が多いので、要求される知識量も多くなります。ドラフト自体に慣れていればカードを見ただけで大まかな強弱や使い方がわかりますが、はじめのうちはそうもいかないでしょう。

もちろん、何となく良さげなカードを取っていって集まったカードで組めそうなデッキを組んで戦う、というのでも全然問題はありませんし、それがドラフトの本来の姿とも思われます。

 しかし、パック代だけでドラフトする(勝っても負けてもコストが同じ)テーブルトップならともかく、MTGアリーナのドラフトは勝利数に応じて報酬(ジェム、パック)が増量される仕組み、つまり負けるとドラフト代が割高になります。少しでも勝ちたいのが心情というものでしょう。

 情報量の多さが難しさの原因ということは、情報量を絞ることができればピックやプレイ時の選択肢を減らすことができ、ドラフトの難しさを軽減することができます(もちろん、そのぶん柔軟性が失われますが)。

 以下、そのための方法をいくつか紹介します。


色を絞る

 そもそも5色あるからカードが多いのであって、これを2色や3色にしてしまえば情報量を大幅に削ることができます。

 まずは17Landsのようなデータサイトや他の方の攻略記事からそのセットで強いとされる色を調べます。カルドハイムの場合、緑の最強はほぼ確定で2色ではセレズニアカラー(緑白)やボロスカラー(赤白)の勝率が高めです。

 そのようにして強い二色がわかったら、しばらくの間はその二色のカードだけをピックします。選択肢が激減するので、迷うことは減るでしょう。もちろん対戦相手は他の色のカードも使ってくるので、やっているうちに少しずつ他の色のカードも覚えられるでしょう。

 これは俗に決め打ちと言われる手法で、卓の流れが歪むということで嫌うプレイヤーもいます。ただそれはアリーナのドラフトにおいては非常に疑わしい主張で、個人的には初心者が楽なピックをすることに対する難癖に近いものになっていると思われます。

※テーブルトップのドラフトの場合、大抵の場合は顔見知りと卓を囲むことが多くなりますから「あいつは赤白しかやらない奴だ」のような情報が共有されている状態だと周辺のプレイヤーのピックに影響を与え、本来のピックとは異なるものに変化させることになります。というわけで「卓の流れが歪む」は全く無根拠な話というわけではなく、テーブルトップにおいては事実その通りになることもあります。ただし、アリーナのドラフトは状況が全く異なるので当てはまらないという話です。

 ただし、2色決め打ちはいくら何でも選択肢が狭すぎ(強力カードを引いても多くの場合は色が違うので流すことになる)、他の色に逃げられないので上にいるプレイヤー数人と色がかぶったらまともなデッキにならないというリスクも抱えます。また、卓の流れと色の選択というドラフトピックにおける重要な要素を学ぶ機会もほぼありません。

 というわけで、2色決め打ちは数回にとどめ、ドラフトというものの雰囲気を学んだら3色に増やすのがおすすめです。カルドハイムの場合はナヤカラー(白、赤、緑)の三色が無難でしょう。1パック目はこの3色の中から強いカードを選んでいき、そこで比較的よく取れた2色のカードを2パック目以降に取っていきます。こうすることによって卓の流れを見ることや色を選択することを学べますし、強力なカードを3色目としてタッチすることも学べるでしょう。

 実際、上級者でも特定の色はほぼやらないという人は結構いますし(この「ほぼ」が大きな違いだったりもしますが)、特定の2色はやらないという人もいます。

 このようにして、対戦相手のデッキなどからやっていない色のカードについても知識が増えていったらさらに選択肢をもう一色増やし、最終的に5色全部が選択肢に入る頃には中級者にはなれているでしょう。

カードを絞る

 色を絞る以外の手段として、カード自体を絞ってしまうというのもあります。セットのカードを大雑把に「強い」「ふつう」「弱い」に分類してしまい、「弱い」に分類したものは一切ピックしないという手法です。分類の判断は難しいですが、選択肢を減らすのが目的なのでばさばさ切っていってしまいましょう。間違っていても構いません。滅多にデッキに入らないようなカードでも強い瞬間はありますが、それを気にすると結局選択肢が減らせなくなります。

 色を絞るのと並行してこれを行えばピックで迷うことは減るでしょう。そしてプレイしていく中で使ったり使われたりした経験から「普通」や「弱い」の判断が間違っていたと感じたらそこは変更して次回からそれに従います。やっていくうちに「弱い」が減っていって最終的に全カードが選択肢に入ればそれでもよいですし、最後まで「弱い」のままのカードもあってもかまいません。

 また、カードの評価は自分がピックしたカードによっても変化します。カードの選択肢が増えてきたら「これが取れているならこれを優先する」のような考えも少しずつ身に付けていくといいでしょう。ただし、最初からそれをやろうとするとうまくいかないかもしれません。ピックに慣れてきて増えた選択肢に戸惑わなくなってからでもよいでしょう。


 ピックが終わってデッキが組めてしまえばあとはただのMagicであり、プレイの際にリミテッドのみの特殊ルールがあるわけではないので普通にプレイすればよいでしょう。リミテッドならではのプレイングのようなものも全く無いわけではないですが、そういうものは最初からうまくやれるものではないですし、やっていくうちに少しずつ身につきます。ただ、使う色やカードを絞ることで、使うカードについては習熟度のようなものが上がりやすいということはあるかもしれません。


レアピックについて

 アリーナのドラフトでは、ピックしたカードをそのまま手に入れることができます。というわけで、特にカード資産やセットのコンプリートを目的としている場合「レアが流れてきたらとりあえず取る」というピック、通称レアピックがありえます。もちろんデッキに入る強力カードを無視して色の合わないレアや弱いレアを取ることにもなるのでデッキの完成度は下がります。勝率を犠牲にしてレアを確保するようなピックと言えるでしょう。

 ただし、レアはパックを開封すれば必ず一枚は手に入ります。さらに ①実質的にレアの上位互換であるレアワイルドカードになる可能性がある ②神話レア(や神話レアワイルドカード)が出る可能性もある ③ワイルドカードのゲージが進む (④コモンやアンコモンによってvaultも進む) (⑤剥くのが楽しい) という理由により、1パックはピックで手に入る一枚のレアより基本的に価値が高いと言えます。ドラフトで余計に勝てれば報酬のパックも(もちろんジェムも)増えますから、原則的にはデッキの完成度を優先するほうがカード資産的にも得をする可能性が高いです。もちろん特にデッキに入りそうなカードがないなどのときには積極的にレアピックをして問題ないでしょう。

 5枚目のレアがパックから出ないアリーナの仕様上、剥けば剥くほど4枚揃っていないレアが出やすくなり、ドラフトを繰り返してパックがある程度(200前後)貯まると割とレアはあっさりコンプリートされてしまうというのもレアピックを控えめにする理由になるかもしれません。また、この仕様と、ピックした5枚目以降のレアは20ジェムになってしまう仕様上、ドラフトはできるだけレアが揃っていない状態でプレイするほうが得になります。というわけで、パックは剥かずにドラフトを繰り返し、レアコンプができそうなパック数が溜まったら一気に剥くというのがもっとも効率的です。ただし、パックを剥くこと自体もゲームの楽しみであろうと思われるので、剥きたい時に剥いてしまうのもいいだろうと思います。

 神話レアの場合は話が大きく異なり、特にレアコンプが済んでいる場合は神話レア一枚で6~7パック程度の価値があります。コンプリートに要するパック数も多く、開封だけで揃える道程は相当長いです。というわけで、神話レアに関してはレアピック(神話ピック)の優先順位が多少上がるのもやむなしと言えるかもしれません。


各種ドラフトの違いについて

 MTGアリーナのドラフトにはプレミアドラフト、クイックドラフト、マッチ(トラディショナル)ドラフトの三種類がありますが、その違いについても簡単に説明しておきます。他にシールドやイベント限定の特殊なドラフトもありますがここでは割愛します。

・プレミアドラフト

 自分と他のプレイヤー7人の計8人でドラフトをする、「実際の」ドラフトに近い仕様です。回りも人間なのでドラフト傾向は毎回違い、流れてくる色やカードも毎回違うので卓の流れの見極めが大事になってきます。対戦まで卓内で行うわけではない(偶然当たることはある)のでいわゆる「カット」の意味は薄く、基本的には全員が自分のデッキを強くすることだけ考えてピックするので、凄まじい強力デッキが誕生してしまうこともあります。

 また、対人ドラフトなので当然ながらピックの時間制限があります。悩んでいると時間が切れて予定外のカードがピックされてしまうことがあるので、ひとまず第一候補を一度クリックしておいて(時間切れになるとそれがピックされる)から考える癖をつけるとよいでしょう。

 形式はbo1(メイン戦のみ)、ランク戦なのでミシックを目指すときにはこのプレミアドラフトを中心にやっていくことになるでしょう。ただし、当然ながらランクが上がるほど対戦相手が手強くなっていきます。

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 ジェム報酬に関しては2勝と3勝の差が激しいので、3勝を目的にプレイしていくとよいでしょう。パックはそこそこ増えますし、ピック中にも平均3枚のレア(または神話レア)が手に入ります。

 運営側はおそらくプレミアドラフトをメインに考えており、最新セット(今ならカルドハイム)のプレミアドラフトはほぼ常設されています。並行して過去のセットのプレミアドラフトが開催されていることもあります。

・クイックドラフト

 自分一人でピックするドラフトです。残り7人はAI、と言ってもAIがデッキを作っているわけではなく、内部の優先順位に従ってカードが一枚ずつ減っているだけの仕様と思われます。当然ピック傾向の個人差や色の選択などもなく、全く同じパックがあれば全く同じカードが流れてくるでしょう。流れてくるカードの傾向は毎回似通ってくるということで、毎回同じようなデッキを組むこともできます。設定次第では強いカードが遅い順目まで残っていることもあり、解析が進むと自分も対戦相手も皆同じカードを使う似たようなデッキ、などということもあります。プレミアドラフトや現実のドラフトとは相当違っていると言えるでしょう。

 対人ドラフトではないのでピックに時間制限がなく、カードを一枚一枚丁寧に読みながらピックしたり、攻略記事を読みながらピックすることもできます。この点は知らないカードの多いセットなどではありがたいでしょう。また、ピック中の急な電話、来客、尿意、回線落ちなどに耐性があるのもメリットと言えばメリットです。

 プレミアドラフト同様、形式はbo1(メイン戦のみ)のランク戦です。参加費用がプレミアドラフトより安く、設定がおかしい時は強力デッキが簡単に組めるのでラダー(ランク上げ)に向いている時もあります。

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(例えば「1.2パック」は1パック+20%の確率でもう1パック、のような意味です)

 参加費はプレミアドラフトの半額ですが損益分岐点がプレミアドラフトより高く、また7勝時の黒字率も小さいのジェム報酬で継続的にプレイしていくのは困難です。ただし3勝以下の時のジェム支払いはプレミアドラフトよりも小さく、あまり勝てないうちはドラフトやカードに慣れるまでクイックドラフトをするという手もあるでしょう。ただしパック報酬が殊の外しぶく、AIはすぐレアを取ってしまうのでピックでもあまりレアが取れません。カード資産集めには向かないドラフトです。

 クイックドラフトは過去のセットのものが開催されていることが多いですが、プレミアドラフトと並行して最新セットのクイックドラフトが開催されることもあります。


・マッチ(トラディショナル)ドラフト

 日本語版ではマッチ・ドラフトですが、本来の英語ではTraditional Draftです。Match Draftで検索しても海外の情報は当たってこないので注意してください。

 マッチというのは最終的な勝敗となる単位のことで、一つ一つの対戦はゲームといいます。bo1は1マッチ=1ゲームですが、bo3は二本先取なので1マッチ=2~3ゲームということになります。ゲーム単位とマッチ単位が異なるのでマッチドラフトと名付けたのかもしれません。特に競技シーンにおいてMagicはずっと二本先取でやってきたので、Traditionalというのは比較的新しい概念であるbo1と対比した「伝統的スタイル」ということなのでしょう。

 ピックの仕様はプレミアドラフトと同様の対人ドラフトです。形式はbo3(サイドボードありの二本先取)、非ランク戦です。非ランク戦なのでマッチングにランクが考慮されず、自分が何であれブロンズともミシックとも当たります(一部のトラッカーツールを使わない限り相手のランクは見えません)。

 Bo3をやりたい人やミシック内ランキングを下げたくない人、ジェム報酬が極端なので腕に覚えのある人などがプレイするようです…………などと書くと強い人ばかりのようですが、実際の平均はプラチナ下位程度です。勝っても負けても3マッチ(6~9ゲーム)できるということで、経験を積みたい、あるいはまだランク戦に踏み込めない初心者の参戦もあるのだと思います。

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 参加費はプレミアドラフトと同じですが、報酬はかなり極端です。1勝2敗は全敗と同じで0ジェム、2勝すると1000ジェムになってだいぶマシに見えますが、3-0は3000ジェムなので2-1すら3-0よりも0-3に近いという、「3-0してなんぼ」の設定といえます(ごく単純に計算するなら2-1は5-3か6-3に相当するので、プレミアドラフトなら黒字になっているところです)。そのぶん3-0の報酬は大きく、参加費を取り戻した上に次回の参加費まで実質無料になります。ある程度以上の勝率があればプレミアドラフトよりも期待値が大きく、報酬のジェムだけでドラフトを繰り返す「無限ドラフト」がもっともやりやすいイベントでもあります。パックも割と多く手に入ります。

 一方で勝てない時のプライズは厳しく、0-2の時点でリサイン(棄権)してしまうプレイヤーも多いようです。ただし勝敗に関わらず最低6ゲームやれるので経験を積みやすい、bo3のサイド戦をやりたければこのマッチドラフトをやるしかない、二本先取なので事故一回でマッチが終わらず実力が出やすい、(bo1にある)初手の土地補正がない、などの面もあります。

 マッチドラフトもプレミアドラフトと同様、最新セットのものがほぼ常設されています。他のセットでの開催はあまり見かけません。


 それぞれに質的な違いがあるので一概には言えませんが、一般にはクイックドラフト>プレミアドラフト>マッチドラフトの順に初心者向けと考えられているようです。


 だらだらと書いてきましたが、ドラフトをやったことがない方、やってみたいが踏ん切りがつかない方などが一人でも多くドラフトを始めてくれるようになれば幸いです。プレイヤーが増えれば、いつかアリーナ上でもドラフトのプレミアイベントが開催されるかもしれません。


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 私が日頃お世話になっているdiscordのチャンネルです。(主にリミテッド、ときどき構築?)の配信や意見交換が頻繁に行われています。



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