カルドハイム、役に立たないドラフト攻略のようなもの(1)

※この記事は「こうすると勝てる」というようなものではありません。そういうものをお求めの方はお読みになるとがっかりするかもしれません。


 どうも、マッチドラしかやってないマンです。

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MTGアリーナにおけるカルドハイムの実装から約一週間が経過しました。その間に私もドラフトを11回ほど回しまして、戦績はこのような感じです。勝率75.8%は悪くない気もしますが、2-1ばかりでトロフィーが少ないのがいやんな感じ。


 マッチしかやっていないのは、

①個人的にbo3のほうが面白い 

②リミテッドで権利取っても予選本選とも構築なのでミシックに行くインセンティブが私にない(ラダーをする理由がない) 

 といった理由です。

 前回の予選、ジョインだけして寝たら寝過ごしてそのままドロップとなったのですが、全然がっかりしていないどころかどこかで「面倒なことから開放された」のような安心感を得ている自分がいまして、「ああ、私は要するに構築の大会に出たくないんだな」と実感した次第です。今後リミテッドレギュレーションの予選本選が開催されるまでランクマッチはやらない気がします。

 で、カルドハイム。

 アーキタイプがどう、各色トップコモンが何、のような真っ当な攻略記事は私よりももっと著名な方がたくさん書くだろうと思うので、私はちょっと別の方面から考えてみます。

 前回のZNRが2色10種から選ぶタイプの環境だとすれば、今回は1色5種から2つ選ぶタイプの環境だ、というのが現時点での所感です。

 例えばZNRのドラフトにおいて1-5(1パック目の5手目)に《生命の絆の僧侶/Cleric of Life's Bond》が流れてきたら上四人は白黒クレリックをやっていない確率が高いと判断できますし、白黒クレリックのコモンパーツであり他のアーキタイプにとっては優先順位の下がる《コーの祝賀者/Kor Celebrant》や《略奪する破戒僧/Marauding Blight-Priest》なども流れてくる可能性が高いでしょう。

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 一方、今回はコモンに上記のZNRの例のような「特定の二色専用」に近いカードが少ないようです。例えば《圧死/Squash》は青赤巨人で強いですが、インスタント5マナ6点除去なので他の赤でも十分強く、青赤専用というには程遠くなっています。

 例えば1-5に《氷結する火炎、エーガー/Aegar, the Freezing Flame》が流れてきた場合、上四人が青赤をやっていないという推測は概ね当たりそうですが、「その4人が白青、黒赤、赤緑、青緑」などという可能性もあり、その場合エーガーは誰も使わないが青や赤の有力カードはことごとく上に取られる、という状況もありえます。「赤や青のいいカードは全然こないがエーガーや青赤の英雄譚だけは流れてくる」という状況です。

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 参考:上はあるドラフトで私がピックしたサイドボード、つまりメインデッキに入らなかったカードたちです。エーガーにアンコモン土地、アンコモン英雄譚3枚にレア英雄譚までありますが、とても青赤がやれそうな感じはありませんでした(デッキは黒緑で2-1)。

 たぶん青赤に突き進めば「卓で一人の青赤」にはなれたでしょうが(そもそも8人に対して10パターンあるので被らないほうが普通)、青も赤も、特に赤の流れは相当悪く(卓に5人くらいいたかもしれない)、まともなデッキにはならなかったでしょう。

 というわけで、KHMのドラフトは「2色10パターンのうちのどれが他人と被らないか」よりも「5色のうちどの色が空いているか」を考えたほうがよさそうです。

 ごく単純に計算すると、8人3パックのドラフトにおいてある色をやっているプレイヤーの人数は平均3人強です。自分のやっている色が両方とも3人以下という状況にできれば完成度の高いデッキが組める公算が上がりますから、「卓上で混んでいない色を2つ探してそれをやる」という感じにしていくのが安定した勝率を残せそうです。「赤白が空いている」ではなく「赤と白が空いているから赤白をやる」のような感じになるでしょう。少なくとも片方が空いている色になっていればデッキの形になるとは思います。

 「赤と白は3人ずつだがその全員が赤白」などということもありえるにはありえますが、その場合でもマルチカラーはともかく赤と白のカードは十分に手に入るでしょう。

 逆に「赤白は卓に一人だが赤が5人白が4人いた」などという状況だとマルチカラーのカードばかり手に入ってデッキの基本となるカードに乏しい「見た目派手だがバランスが悪く不安定」というデッキが完成してしまう危険性が高まります。

 というわけで、今回はマルチカラーのカードよりも単色のカードに注目して空いた色を探していくのが良いのではないか、と思っています。

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 《大蛇の餌》《貪欲なリンドワーム》のようなダブルシンボルの強力コモンが遅い順目まで残っていた場合、その色を(タッチではなく)メイン2色のいずれかに据えているプレイヤーは多くないかもしれない、と判断できるでしょう。


・氷雪について

 専用カードに乏しく、アーキタイプ環境というよりは「個々のカードパワーと、それに合わせたバランスのいいデッキ構成がだいじ」という古風ゆかしきリミテッド環境に見える今回ですが、唯一アーキタイプと呼べそうなものが氷雪です。氷雪をやっているプレイヤー以外はまずピックしないであろう専用カードがコモンに(もちろんアンコモン以上にも)数多くあり、それらは氷雪マナが確保できていれば総じて強力です。

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 ただし問題として、氷雪カードは氷雪マナや氷雪土地がないと真価を発揮できないものがほとんどです。というわけで氷雪土地もピックしなければなりません。それも、特に《氷皮のトロール》のような氷雪ダブルシンボルを要求するカードを機能させるためにはデッキに氷雪マナソースが8枚以上は欲しいところです。

 色の合った氷雪土地の枚数がうまく確保できればいいですが、枚数を確保するために色の合わない氷雪基本土地や片方しか合っていない氷雪二色土地をたくさんピックすると氷雪以前に色マナの面で不安が発生します。色マナ安定を優先すれば氷雪土地が不足し、氷雪を優先すれば色マナ基盤に不安が生じます。

 更に別の問題として、氷雪土地をピックする以上、ピックできるスペルの枚数が減るという事実も無視できません。特に欲しいスペルがないときに色の合った氷雪土地が流れてきていればいですが、そんなに都合のいいことばかりではなく、デッキに入るコモン、時には有力なアンコモンを諦めてでも氷雪土地をピックしなければならないこともあるでしょう。

 そうなると当然デッキは薄くなりやすく、「強い氷雪カードを引けないとデッキが弱い」という不安定さが生じます。また、スペルの選択肢が少ないという弱点はbo3ではより顕著です(詳しくは後述)。

 これは、メイン二色の他に更に別種のマナが要求され、しかもそれを(通常の基本土地のように自由に供給されないので)ピックの中で確保しなければならないという制約があるので当然のリスクとも言えます。氷雪はコンセプト自体がピーキーなアーキタイプなわけです。

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 氷雪カードがスゥルタイに多いことや、上記にような強力なマルチカラーの氷雪クリーチャー、《輝く霜》《煌積の谷間》のような5色マナサポートの存在などから、氷雪デッキは白以外の4色の間で多色化しがちです。多色化すると、ある意味では「色の合った氷雪土地」が増え氷雪基本土地・氷雪二色土地がピックしやすくなり、上記の色マナ基盤と氷雪マナ基盤の両立が見ようによっては楽になります。

 ただし、多色というのはもともとマナ基盤に不安のあるもので、加えて氷雪マナも要求されれば不安定さは更に増します。緑が混じる場合は《輝く霜》があり土地サーチの手段も比較的多いので回りやすくはなりますが、あくまで「氷雪デッキの中では回りやすい」であって通常の2色デッキよりは不安定ですし、デッキの中のマナ関連カードが増えてしまうので「デッキが薄い」という弱点とそれに由来する不安定さは克服されません。

 多色氷雪デッキは強いカードがひしめくので見た目は派手ですが、やってみると意外と負けることが多く「デッキは強いのになあ」となってしまうことも多い印象です。これはおそらくデッキの見た目と実際の強さに乖離が生じており、単に運が悪いだけでなく「見た目よりは弱い」「事故りやすい」という特性が氷雪デッキ自体にあるのだと思われます。

 ただし、これは氷雪デッキが弱いという意味ではなく、一見失敗したような氷雪デッキでも氷雪マナをうまく引いて「《氷皮のトロール》で盤面を支えつつ《氷刻み、スヴェラ》を起動していたらそれだけで勝ってしまった」「クリーチャーの質は低めだったが《背信の王、ナーフィ》が墓地から帰り続けて勝ってしまった」などということもあり、よくも悪くも不安定なデッキタイプという印象です。

 また、氷雪カードがうまく集まった「強そうな」デッキは、「見た目ほどは強くない」かもしれませんがそれでも十分に強いです。見た目ほどは強くないと言っても、それは「90点に見えたが実は80点だった」程度のことも多いでしょう。

 勝ち負け以外の面でも、強力なパワーカードをふんだんに盛り込んで、うまく回ればその能力を遺憾なく発揮させられるということで、噛み合ったときの爽快感は高いであろうと思われます。それもゲームには大事な要素でしょう。

 モーリットやスヴェラは氷雪土地がゼロでも機能しますし、ナーフィは墓地から帰ってこなくても一定の強さを持ちます。氷雪デッキはそのようなカードからスタートし、2色デッキという基本は崩さず、色の合った氷雪土地が数枚取れたら《くすねる鷹》のような氷雪シングルシンボルのカードもピックし、《輝く霜》なども合わせて8枚程度確保できたら《霰嵐の戦乙女》のような複数の氷雪シンボルを要求するカードもピックする、というような手順であればある程度安定するでしょう。マナ基盤より先に氷雪カードをピックしてしまうのは少し危険なように思います。

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 もちろんそううまく行かないことのほうが多いでしょうが、その場合は氷雪にこだわらず普通の2色デッキをやればよいので大きな問題にはなりません。《輝く霜》は氷雪と多色の双方を強力にカバーする優秀なサポートカードですが、だからといって氷雪も多色も欲張ると不安定化の要因になります。通常のドラフトと同様、二色(+タッチ)に留めたほうが氷雪デッキは安定するでしょう。氷雪デッキというより「タッチ氷雪」という表現が近くなる場合が多いかもしれません。もちろん氷雪要素を全部抜く手もありえます。

 氷雪デッキは専用カードだらけの典型的なアーキタイプデッキなので、卓上で被ると完成度へ露骨に影響が出ます。効果の派手なカードが多いからか今は人気があるようで土地の確保も難しそうなときが多いですが、今後環境が進んでやる人が減ってくるようなことがあると組みやすくなるかもしれません。

 これは想像ですが、テーブルトップのいわゆる卓ドラの場合は取るものがないプレイヤーが氷雪土地を抜く可能性が大いに考えられ、氷雪デッキを組むことがより困難になる恐れがあります。


・ざっくりまとめると

 若干の傾向は見えつつありますが、「このアーキが強い!」「この色をやっておけば鉄板!」というようなものは現時点では(まだ)なく、「ピックしたカードや流れてくるカードから空いている色を探すか今の色で進むか判断しよう」「マルチカラーのカードがサインになるとは限らない」「氷雪は行ける行けないをきちんと見極めてピック順にも気をつけよう」…………という感じで、要するに「『こう』という画一的なセオリーを求めるのではなく状況を見極めたピックをしようね」という、攻略記事としては何の役にも立たない結論になっています。ある意味では情報戦略よりもベースの「ドラフト力(りょく)」の影響が大きい環境といえ、それはそれでいいことなのかもしれません。


・bo3とbo1について

 これはKHMに限りませんが、今回はbo3ばっかりやっているのでそれについても触れていこうと思います。

 bo3とbo1の最大の違いはもちろんサイドボードがあることです。メインでの対戦は一戦のみ、対してサイド後の対戦は一戦または二戦なので、繰り返していれば必ずサイド後のほうが対戦回数が多くなります。メイン・サイドといいますがむしろサイド後のほうが本番とも言えます。

 リミテッドにおいて、サイドボードというのは構築ほどの選択肢はなく「刺さる」カードを使うことは困難です。置物対策や条件付きカウンター等いかにも「サイドボード向け」のカードもありますが、それだけでなく、相手がアグロであれば重いクリーチャーを軽いものに変える、タッチカラーをマナ基盤ごと抜いて序盤に強いカードを追加する、相手が緑の大型で攻めてくるなら《霜噛み》を《圧死》に変える…………など、デッキ全体の構成やバランスをその相手用に調整するのもリミテッドのサイドボードです。

 《星界の大蛇、コーマ》を見たのでメイン1サイド1だった《鴉変化》を両方入れる、装備品と《輝く霜》を見たので《大当たり》を入れる、などといった「特定のカードによく効くカード」を入れる、といった戦略ももちろんあります。

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 ただし、いずれの場合も共通しているのは「選択肢がなければ入れられない」というものです。置物対策のようないかにもなサイド用カードだけでなく、低マナ域のクリーチャーや除去がある程度余っているからこそ相手に合わせた微調整が可能になるわけで、色の合ったカードがメインボードギリギリの枚数しかなければサイドボーディングを考える余地すらなくなってしまいます。

 ここがプレミアドラフトなどのbo1とマッチドラフトのbo3の最大の差で、プレミアドラフトの場合は(マッチ間に微調整をしないのなら)デッキに入る23~24枚程度のスペルさえピックできていれば残りは全部違う色でも構いません。ですから序盤は幅広くピックして後から色を決める、2パックから突如色を変更するなどというピックも比較的容易に行なえます。bo3の場合でもそれは可能ですが、スペル枚数がギリギリになるとサイドボードの選択肢が激減して不利な状況で残り二戦を戦うことになります。

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 私のゲーム戦績は上に再掲したように53勝25敗勝率67.9%ですが、記録を見て集計したところその内訳はメインが20勝13敗勝率60.6%、サイド後が33勝12敗勝率73.3%と結構な差になっていました。サイドボーディングを意識したピックの有用性を実感した次第です。


 カルドハイム環境におけるサイドボーディングに関して言えば、おそらく赤に割り振られているであろうと推測していた対氷雪のアンチカードが収録されていなかった(一枚ありますがレアの上に影響が小さめ)のは(bo3においては)氷雪デッキにとっての追い風ではあります。「①R、インスタント、『対象の氷雪パーマネントを追放する』」くらいのカードがアンコモンあたりにあってもおかしくないと踏んでいたのですが、外れました。



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