ストリクスヘイヴン雑感(2)白

 白の絡むカレッジは白黒のシルバークイルと赤白のロアホールドです。

 シルバークイルは今回随一(唯一かも)のアグロカラーです。軽量クリーチャーを+1/+1カウンター(シナジーカードもある)で強化しながら殴るのが基本となります。魔技は一時強化が多く、軽量スペルを連打して一気に打点を上げる戦略もあります。

 トークンは2/1飛行の墨獣(Inkling)ですが、飛行の分ちょっと強力なせいか、他のトークンほど出す手段が豊富ではありません。

 ロアホールドは赤白にしては珍しく(ボロスとの差別化のため、とのこと)ロングゲームプランのアーキタイプです。墓地利用カードが多く息の長い戦いが可能で、そのアドバンテージによって最終的に勝つプランになるでしょう。魔技の効果はまちまちで、特にこれというコンセプトはないようです。

 トークンは3/2のスピリットです。トークンでないクリーチャーにもスピリットが多く、スピリットを参照するカードもあります。


白・コモン

《老いざる守護者/Ageless Guardian》

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 スピリットなのでロアホールドのカードと思われます(フレーバーテキストも考古学的)が、バニラなのでスピリットである以外はどちらのカレッジ寄りということもなさそうです。 

 2/1/4バニラは、構築はもちろんリミテッドでもあまり積極的に採用したいレベルではありません。ロアホールドで2マナ域が薄く序盤が耐えられなさそうとかスピリットシナジーが多くあるなどの理由がなければデッキに入らないでしょう。


《輝く抵抗/Beaming Defiance》

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  白い《顕在的防御/Blossoming Defense》です(英語名もちょっと似ている)。色が違うせいか1マナ重い。

 フレーバーテキストを読むとシルバークイルのカードで、実際にシルバークイルのデッキがカウンターを乗せたアタッカーを除去から守るような使い方が強力でしょう。もちろん、除去回避・コンバットトリックと用途が広いのでロアホールドでも使えるでしょう。


《戦闘学の教授/Combat Professor》

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 某マンモスのように「戦闘教授」にされなくてよかった。

 4/2/3飛行に加え、《正義の模範、オレリア/Aurelia, Exemplar of Justice》のようにコンバット開始時に味方を強化する能力があります。「他の」と書いていないので自分も強化でき、単体でも4/3/3飛行警戒のように振る舞うことができます(ただしブロック時は2/3)。

 能力的にはどちらのカレッジのシステムにも絡んでいませんが、攻撃的な能力で、カウンターで強化したクリーチャーに警戒をつけるのも強力なのでシルバークイル向けでしょう。しかし、中堅飛行戦力としてロアホールドのプレイヤーにピックされることもありそうです。


《学舎防衛/Defend the Campus》

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なんで学舎を防衛するんだ。ストリクスヘイヴンでは安保闘争でも起きてるのか。火炎瓶投げてゲバ棒で殴るぞ

 腐りやすいのでデッキに入れづらかった《大物潰し/Smite the Monstrous》と、同様に環境やデッキによっては入れづらかった全体強化が合体したモード選択呪文です。「限定的で使いづらいカードは抱き合わせてモード呪文にしてしまえ」という昨今の開発部の姿勢がよく現れています。

 どちらのモードも小型クリーチャーを並べて攻めるタイプのデッキに合っているのでシルバークイル向けですが、モードが選べる利便性があり除去の方はクアンドリクスやウィザーブルームによく刺さりそうということで、ロアホールドでも採用されうるでしょう。


《熱心な一年生/Eager First-Year》

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 魔技でパワーアップする、その気になれば3/3と相打ちになれる(かもしれない)熊です。

 魔技による一時強化はシルバークイルのデザインですが、癖がないのでロアホールドのブロッカーとしても2マナ域を埋めてくれるでしょう。


《導きの声/Guiding Voice》

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ディズニー映画っぽい。

 シンプルな履修つき呪文です。

軽量スペルや+1/+1カウンターはシルバークイルのテーマですが、1マナで履修ができるところに価値があるカードになる可能性があり、その場合はどちらのカレッジでも採用されるでしょう。もちろん、シルバークイルで使うほうがより評価が高くなります。


《優秀な学徒/Star Pupil》

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Starなガクト、これはつまり

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こういうことか

 大雑把には「1/1/1、死亡誘発で対象に+1/+1カウンターを一個置く」という感じのクリーチャーです。白い《電結の働き手/Arcbound Worker》と言ったほうが近いかもしれません。

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君は呼んでいない。ゼンディカーに帰りたまえ

 接合クリーチャー同様、自身の上にある+1/+1カウンターをすべて移し替えるので、何らかの方法で追加の+1/+1カウンターを置いておけば死亡誘発も強力になります。《巨怪な略奪者、ヴォリンクレックス/Vorinclex, Monstrous Raider》が横にいれば2/2で出てきて死んだときに4つのカウンターを乗せます。相手にヴォリンクレックスがいれば出てきた途端に死んで何も残しません。

 本人も死亡誘発も+1/+1カウンター関係なのでシルバークイル向けのカードです。サクリファイスエンジンはウィザーブルーム(黒緑)ですが、黒単色にもあるので確保しておくと便利でしょう。


《休憩時間/Study Break》

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きみ、学生なのかい?

 白によくあるタップ呪文です。インスタントなので攻防両面に使えます。

 タップ自体はアグロが最後の押し込みに使うのが強力ですが、履修がついているのでアタッカーを寝かしてライフを守りつつ講義を持ってくる(あるいはルーティングで解答を探しに行く)という動きも可能で、基本的にはシルバークイル向けですが講義や履修の取れ具合のほうが重要になるかもしれません。


《除名/Expel》

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 白定番のタップ(状態のクリーチャに対する)除去です。《素早い反応/Swift Response》より1マナ重くなっていますが、破壊から追放になりました。

 インスタントの追放ということで同種のカードの中では最高の除去性能ですが、やはり条件付きなのでアグロデッキなどでは打ちづらいこともあります。追放効果が主にロアホールドに割り当てられている点やゲームプランの問題などから、ロアホールドで使うことが多くなると思われます。


《星霜の巡礼者/Pilgrim of the Ages》

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 《管区の案内人/District Guide》系のカードです。土地サーチに長けた緑ではないからか、マナレシオが若干下がり持ってこられるのが基本平地のみになりました。

 色マナ基盤にはあまり貢献してくれませんが、土地を安定して伸ばしていくのに貢献してくれます。また、履修のある環境なので、手札が増える(減らない)こと自体が小さくないメリットとなります。

 そしてさらに、後半になると墓地から自力で手札に戻ってくる能力を持っています。起動は重めですが、出入りする度にマナが伸ばせるので次第に負担が減っていく、と自己完結したデザインです。

 場に出してしまうと死ねないときに能力が起動できないので、これ自身を履修で捨ててまた拾う、というような動きも可能で、展開によっては一切場に出ず手札と墓地を行ったり来たりすることも考えられます。墓地から手札に戻るので「カードが墓地を離れたとき」という能力を誘発させることもできます。

 序盤はマナを伸ばしつつ何かと相打ちになり、ゲームが長引いたら恒久的なアドバンテージ源になる、という優良クリーチャーです。スピリットでもあり、ロアホールドにとってはコモンの主要パーツになりそうですが、シルバークイルの戦略とは噛み合わないので奪い合いにはならないでしょう。


《柱落としの救助者/Pillardrop Rescuer》

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 飛行を得た代わりに1マナ重くなって戻せる対象が制限された白い《グレイブディガー/Gravedigger》です。飛行は嬉しい能力ですが、重くなったこと、強力なクリーチャーを戻せなくなったことは無視できません。グレイブディガーと比べると弱体化していると言えるでしょう。

 ただ、アドバンテージを取れるのは確かで、ゆったりしたアドバンテージゲームに持ち込めれば活躍できるでしょう。スピリットである、墓地からカードを減らせるなどの点でもロアホールドのカードで、シルバークイルで使うにはマナレシオが低すぎるでしょう。


《石昇りのスピリット/Stonerise Spirit》

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 墓地をコストにクリーチャーに飛行を与えるスピリットです。本人の戦闘能力は2/1/2飛行と現代の基準ではさほどでないですが、味方を飛ばすことで飛行クロックを上げることができます。

 スピリットであること、起動コストが4マナと重めであること、墓地からカードを追放することなどからロアホールドのカードと言えます。ここ一番では複数回起動も可能なので、攻める体制が整ってからは速やかにゲームを終わらせてくれます。

 軽量フライヤーということでカウンターで強化する先に向いている&飛行付与で最後の詰めを行えるということで、シルバークイルでも使えるかもしれません。


白・アンコモン

《賢い光術師/Clever Lumimancer》

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 ベースは1/0/1と人畜無害、そこから魔技で+2/+2されるという、《アクームのヘルハウンド/Akoum Hellhound》(色も考慮すると《ステップのオオヤマネコ/Steppe Lynx》)のようなデザインのカードです。誘発条件を考えると《小柄な竜装者/Wee Dragonauts》の系譜とも言えるでしょう。

 デッキに入っている誘発材の枚数を考えると魔技を上陸ほど継続的に誘発させるのは難しそうですが、ターン内の誘発回数や誘発のタイミングの自由度については魔技に分があります。使うとすれば、専用のデッキを組んで爆発力に期待するような運用になるでしょう。

 軽い、一時強化の魔技で爆発力がある、などシルバークイル向けのカードでしょう。

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賢い光術師

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強い妖戦士


《決闘の指導者/Dueling Coach》

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 ETBでどこかに+1/+1カウンターを置くクリーチャーです。+1/+1カウンター限定の増殖のような起動型能力も持っており、これは自分のETBで置いた+1/+1カウンターに限らないので膠着時には馬鹿にならない影響力を持ちそうです。

 マナコストも起動コストも重めですが、マナフラッド受けとして、膠着状態を打破するエンドカードとして役立ってくれそうなアンコモンです。このカードがデッキに入っている場合、+1/+1カウンターは一箇所に固めるより分散させておいたほうがよいでしょう。

 カウンターを使う点はシルバークイル向けですが、どちらかと言うとロングゲームで真価を発揮する点はロアホールド向けでもあります。


《象徴学の教授/Professor of Symbology》

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 ETBで履修を行う教授です。この教授が履修するのではなく、この教授が持ってきた講義をしてくれるフレーバーでしょうか。

 持ってくる講義がない場合は白い《イマースタームの略奪者/Immersturm Raider》ですが、あった場合には2/2/1+キャントリップ程度の性能になり強力です。講義さえあれば簡単にアドバンテージが取れる2マナパワー2なので、ある程度の枚数の講義をピックしておく必要性を感じさせるカードです。

 フレーバーテキストを読むとシルバークイルのカードですが、シンプルな性能なのでロアホールドでも2マナを埋めてくれるでしょう。前者の場合はアタッカー、後者の場合はブロッカーとして期待されるでしょう。


《記憶留出法/Reduce to Memory》

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 万能除去の講義です。単体で見た場合は重くなってリスクが固定された《神聖な計略/Divine Gambit》、あるいは《暁の騎兵/Cavalier of Dawn》のETB部分を改変したもの、といった感じです。

 3/2トークンは馬鹿になりませんが、喫緊の脅威に比べればだいぶマシであることも多いでしょう。必要に応じてサイドボードから持ってこられる講義であることも考えれば十分な性能と言えそうです。置物やPWにも対処できる、追放除去である、という点もシルバーバレット向きです。

 自分のパーマネントに打つこともできます。もちろんアドバンテージ損ですが、状況によってはいらないパーマネントを3/2に変えることがあるかもしれません(ただし、今回は疑似除去オーラがあまりないので無力化したクリーチャーは出づらいかもしれません)。オーナーではなくコントローラーを参照するので、赤に多い一時コントロール奪取と併用するとちょっとお得です。

 スピリットトークンが出るのでロアホールド(赤白)の透かしが入っていますが、基本的には除去なのでシルバークイルでも使えなくはないでしょう。


《石縛りの使い魔/Stonebinder's Familiar》

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 ターンあたり一回だけですが、カードが追放領域に行くと+1/+1カウンターが置かれる犬です。

 追放除去はもちろん、予顕、出来事、ブリンク、衝動ドロー、墓地追放等、誘発材料は多岐にわたりますが、毎ターン継続的に強化させるには工夫が必要になりそうです。

 誘発するのは自分のターンだけなので、相手のターンに《踏みつけ/Stomp》を打ったり、ソーサリーの追放除去を受けたりしても強化されません。その代わり、相手のカードを追放してもいいので自分から追放除去を(自分のターンに)打てば強化されます。

 墓地追放と相性がいいことやクリーチャータイプ、フレーバーテキストからするとロアホールドのカードです。+1/+1カウンターはシルバークイルのメカニズムですが、早いターンに置いて強化できるかという問題があります。ロアホールドならじっくり育ててフィニッシャーにすることも可能でしょう。


《轟く語り部/Thunderous Orator》

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2/2/2警戒に加え、攻撃時には《威厳ある万卒隊長/Majestic Myriarch》のように味方のキーワード能力を模倣するクリーチャーで、横に並んでいるクリーチャーによってはとんでもない化け物になります。

 警戒だけ最初から持っているのは、他と同様にすると警戒を持ったときにはすでにタップしていて意味がなくなってしまうからだと思われます。

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こういう相方がいるといい

ただしベースが熊なのでトランプルなどは意味が薄いこと、警戒を持っているがブロック時には他のキーワードがないこと、インスタントで隣のクリーチャーが除去を受けるとあるはずだったキーワードがなくなること(特に飛行や威迫がなくなると危険)、などには注意が必要です。

 (うまく行けば)多数のキーワード能力を備えたクリーチャーになるので強化と相性が良さそうです。特に装備品はキーワード能力を与えるものならば隣のクリーチャーにつけることでこのクリーチャーもそれが得られ、修正の大きいものならこれにつけることで(うまく行けば)強力なアタッカーを用意することができます。

 デッキの他のクリーチャーに依存する能力ではありますが、最低でも《高山の番犬/Alpine Watchdog》相当なので弱くはないでしょう。夢も広がりそうなので、ある程度早めにピックしてもよさそうです。構築でも、カジュアルレベルなら面白そうなカードです。

 攻撃時にしか効果がない能力であること、墨獣(Inkling)トークンが飛行を持っていること、などを考えるとシルバークイル向けのカードと思われます。カウンターによる強化とも好相性。


《居残りの渦/Detention Vortex》

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 1マナで、マナ能力も禁じて搭乗を禁じない《金への捕縛/Bound in Gold》ですが、軽さの代わりに対戦相手がこのカードを破壊できる能力がついています。《ヘリオッドの神罰/Heliod's Punishment》に似たデザインとも言えます。

 軽いのでブロッカーを排除しつつアタッカーを追加することもできますし(起動はソーサリータイミングなので貼ったターンのブロックは確実に禁止できます)、返しのターンで相手がこれを割ればブロッカーや除去に回すマナが減る、とアグロに適したカードと言えます。逆に、アグロ相手に時間を稼ぐカードと見ることもできます。いずれにせよカードアドバンテージに目をつぶってテンポ(この場合はマナとライフのアドバンテージ)を稼ぐ設計のカードでしょう。

 どんなデッキに入れても、あるいはいつ引いても強いとは言い難いカードです。おそらく役立つ瞬間もありますが、採用は慎重に検討したほうがよさそうです。

 前述の通りアグロに向いたカードでボードコントロールには向かないカードなので、使うならロアホールドよりもシルバークイルが多くなるでしょう。今回、《平和な心/Pacifism》系のカードがこれしか収録されていないので、色は除去に難儀する色になるかもしれません。


《秘密のランデブー/Secret Rendezvous》

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青春。

 白い呪文のくせに、3マナで3枚もカードを引けます。もちろんそんな都合のいい呪文はなく、対戦相手も3枚引きます。同じ枚数を引くので、何かの工夫をしないとマナと手札を損するだけのカードということになります。

 例えば《覆いを割く者、ナーセット/Narset, Parter of Veils》を場に出しておけば引かれるのは一枚になり差し引き一枚分のアドバンテージが得られますが、そこまでして使うのかというと疑問です。そのターンに勝つから何枚引かれても関係ないコンボデッキに組み込む、など有効な使い方が発見されないと日の目を見ることはなさそうなカードです。

 工夫の余地がさらに少ないリミテッドでは有効活用するのが難しいです。手札のダンプ速度に自信があるアグロデッキが最も活用できそうですが、相手にも土地を引かせてスムーズに最適な対応を可能にさせるリスクも高くなるのでやはりあまり入れたくはないでしょう。


《自身の誇示/Show of Confidence》

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 対象に+1/+1カウンターを乗せて警戒を与えるインスタントです。加えて、自分のインスタントとソーサリー限定のストームのような能力もついています。

 ストームは強力な効果ですが、リミテッドでそこまでストームを稼ぐのは困難です。1回コピーできれば御の字、よくても2回と言ったところでしょう(1回コピーしただけでも効果はそこそこ強力)。ただしコピーでも誘発する魔技とは相性がよく、インスタントやソーサリーを2つ唱えてからこの呪文を唱えると魔技が合計5回誘発します。

 ストームは構築でこそ威力を発揮する能力ですが、クリーチャーを強化するだけのこの呪文が選ばれる確率は高くないでしょう。条件が厳しくなっているのもつらいところです。

 +1/+1カウンター、魔技を複数誘発させやすい軽量スペル、ということでシルバークイルのカードと言えるでしょう。

白・レア

《謹慎補講/Academic Probation》

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 モードを選ぶ講義呪文ですが、どちらも効果が一時的であまり使い勝手のいい呪文には見えません。戦局が煮詰まってきて生死を分けるターンに突入しているときやコンボデッキを相手にしているとき(もしくは自分がコンボデッキのとき)など効果的に使える瞬間もあるとは思うので、講義らしいカードとは言えるかもしれません。環境次第ではサイドボードの候補になりえるでしょう。

 リミテッドでも、そこまですぐに取られるカードではなさそうなので色が合っていたら取れそうなときに取って存在を頭の片隅に置いておくとここ一番で突き刺さる可能性があります。二番目のモードが主になるでしょう。講義全般に言えることですが。履修で持ってきた時点でカードアドバンテージが取れているので、次の履修でルーティングの弾にしてしまう手もあります。

 強いて言えば最後のアタックをねじ込むのに使えるシルバークイル向けかもしれません。


《精鋭呪文縛り/Elite Spellbinder》

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2019年世界チャンピオン、パウロ・ヴィター・ダモ・ダ・ロサ(Paulo Vitor Damo da Rosa)、通称PV。

 3/3/1飛行という攻撃的なスペックに妨害能力も搭載した高性能クリーチャーです。ETB能力は簡単に言えば「相手の手札の呪文のうち1枚を②重くする」というものですが、手札から追放するので予顕されなくなる、《ドラニスの判事/Drannith Magistrate》もいれば完全な手札破壊になる、などの差異もあります。このクリーチャーが死んでも手札に戻ったりはしないのも強力です(唱えることはできます)。

 おそらくビートダウンに入ってくるであろうということも加味すると、例えばこれで全体除去を重くされたら唱える前にゲームが終わりかねません。《スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben》などと一緒に並んでいたら悶絶ものです。

 多元宇宙にはPVが何人もいるらしく、このクリーチャーは伝説ではないので、ビートダウンが四枚積んでくることも十分に考えられます。3マナのこのクリーチャーが出てくるより先に(予顕によって)「逃して」おける《ドゥームスカール/Doomskar》の価値が相対的に上がるかもしれません。

 リミテッドにおいても、3マナの飛行3点クロックがそもそも強いです。ETBも構築ほどの働きはしなさそうですが十分に強力で、手札が見られるだけでもメリットがあります。色があっていたら初手級のカードかもしれません。

 下環境のヘイトベアー系デッキ(デスタク?)にも入ってくるようだとトップレアになるかもしれませんが、3マナ域はライバルが多いのでどうなるか分かりません。

 どちらのカレッジでも強そうですが、高いクロック、早いターンほど効果のある妨害効果、とシルバークイルで使うほうが強そうです。


《学期の終わり/Semester's End》

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 PWも対象に取れるようになり、対象の数も任意になった《来世への旅/Otherworldly Journey》。最近のカードでいえば、白くなってクリーチャーかPW限定になったかわりに対象の数が任意になった《テフェリーの時間改変/Teferi's Time Twist》。《空を放浪するもの、ヨーリオン/Yorion, Sky Nomad》のETBにおまけをつけ対象を制限したもの、と言ってもいいかもしれません。

 一度に複数の対象を取れるようになった分重くなっており、構えづらくなったのはマイナスポイントですが、全体除去に対応できること、恒久的な集団強化として機能することは魅力です。

 数を並べてフルアタック→不利なブロックをされたクリーチャーだけ逃がす→強化されたアンタップ状態で戻ってくるので隙が小さくなる、というような使い方もできます。

 PWは神話レアにしかいないのでリミテッドで置く機会は多くなさそうですが、忠誠度をリセットしつつさらに+1できるのもありがたいです(戻ってくるタイミングの都合上、同一ターンの複数回起動に使うことはできません)。

色的にあまりなさそうですが、ウィルに打つとローアンで帰ってくるので注意が必要です。その他両面クリーチャーも同様。

 汎用性の高そうな呪文ですが、カウンターが乗ることや展開の早いデッキで使いほうがより強いということを考えるとシルバークイルのカードでしょう。


《戦闘講習/Sparring Regimen》

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 ETBで履修を行い、攻撃の度にアタッカー一体を強化するエンチャントです。場に出た時点で(講義があれば)アドバンテージが確保でき、リミテッドのボムレアであり構築でも活躍している《光輝王の野心家/Luminarch Aspirant》に似た誘発型能力を持ちます。

 エンチャントであることは、ほかにクリーチャーがいないと乗せる先がないという点ではマイナス、クリーチャーよりも除去されづらいという点ではプラスです。構築では前者のデメリットが大きそうですが、リミテッドでは後者のメリットのほうが大きいでしょう。

 攻撃しないと強化できない点は光輝王の野心家より劣りますが、強化したクリーチャーをアンタップさせ疑似警戒として働かせられるという点では勝っています。ETBで履修があることまで含め、ボムレアかそれに近いものである可能性が高そうです。

 カウンターを乗せること、攻めるデッキのほうが機能しやすいこと、などからシルバークイルのカードです(イラストにも墨が描かれている)が、どんなデッキで使っても強いでしょう。

※「あなたが攻撃するたび/Whenever you attack」は見慣れないテンプレートですが、「あなたが攻撃する」は《夜勤隊の猛士/Nightsquad Commando》や強襲などで登場済みではあります。

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《厳しい試験官/Strict Proctor》

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 2/1/3飛行というそこそこのスペックに、自他双方を巻き込むETB妨害能力を持ったヘイトベアー系クリーチャーです。サイズも加味すると《トカートリの儀仗兵/Tocatli Honor Guard》に似ていますが、クリーチャー以外にも影響が及ぶ、完全妨害ではない、といった点に違いがあります。

 ETB能力はそれを持った何かを場に出すためにマナを使っているので、②とはいえ追加マナ要求はかなり重くのしかかりそうです。重ね張りすればほぼ完全妨害と言えるでしょう。

 クリーチャー以外にも影響すること、コントローラーを問わないことから例えば《睡蓮の原野/Lotus Field》のデメリットを踏み倒すような使い方も可能です(ショックランドなどはETB能力ではないので無理)。ほかにも探せば色々あるでしょう。

 刺さるデッキに対してはコンセプトを瓦解させる力があるので、サイドボード要因として優秀です。メタによってはメインに入ってくるかもしれません。ただし、同時収録されている《精鋭呪文縛り/Elite Spellbinder》と相性が悪いのは困りものです。

 スピリットであることや防御的なスペックからロアホールドのカードですが、自分の首を絞める恐れもあるのでピックした他のカードとの兼ね合いをよく考えて採用を決める必要があります。


《壊滅の熟達/Devastating Mastery》

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 逆キッカーとでも言うべきか、マナコストを軽くすることで性能を落とす(相手にメリットを与える)というデザインの「熟達」サイクルの白です。

 素ではクァドラプルシンボルになった《次元の浄化/Planar Cleansing》ですが、代替コストで打つと対戦相手がパーマネントを2枚手札に戻してしまいます。

 全体除去は戦場を一掃するものですが、破壊されるものの価値が全て均等ということはあまりなく、大抵は「特に除去したい何か」があるものです(一体のクリーチャーに打つこともあります)。それを手札に戻されてしまうというのは無視できないデメリットです。

 しかし、4ターン目にものすごい数のクリーチャーが並んでいて翌ターン確実に死ぬ、など「背に腹は代えられない」状況というのも(主に構築では)ままあることで、そういうときにこれを打つ選択肢があるというのは(打てないだけというよりは)だいぶ良いでしょう。また、手札に戻されたものは除去できないとはいえ戦場から消えるのは確かなので時間を稼ぐことはできます。

 構築では他の全体除去と競合しますが、2つの選択肢があること、クリーチャー以外を巻き込めることの価値が大きい環境であれば採用されるでしょう。

 リミテッドの場合、4ターン目に打つ展開はあまりないので素打ちが基本になると思いますが、シンボルがきつすぎるのでピックが見送られることも多そうです。もちろんリセットカードは基本的に強いので相応に白が濃ければピックすることになるでしょう。極限状況では代替コストで打つこともありえます。

 リセットは概ねどのようなデッキで使っても強いですが、どちらかと言うとロアホールド向けのカードでしょう。コモンに平地サーチがあるので中盤あたりには打てるようになっている可能性もあります。

 余談ですが、手札に戻せるのは対戦相手一人なので、多人数戦なら代替コストのデメリットが緩和されるかもしれません。


《レオニンの光写し/Leonin Lightscribe》

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 魔技で全体強化を行う熊(猫ですが)。

 単体でもそこそこの戦闘力を持ち、数が並べば当然危険性が増します。3~4体並んだところに軽い履修からの講義などで複数回誘発すると、ゲームの行方を決めてしまいかねません。インスタントがあればブロック時にも活用できる、制圧力の高いレアと言えそうです。基本的にはシルバークイルのカードでしょう。

 構築でも白いアグロがあれば相性がよさそうですが、小型クリーチャーを並べると強い集団強化と、誘発材にスロットを割きたい魔技があまり噛み合ってない点が気がかりです。


白・神話レア

《学生の代言者、マビンダ/Mavinda, Students' Advocate》

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 3/2/3飛行とそこそこのスペックに、毎ターン一回墓地のインスタントやソーサリーを使うことができる能力を持っています。ただし、それが自軍のクリーチャーを対象とするものでない場合、コストが非常に重くなります(実質的に唱えられないに近いレベル)。

 自軍のクリーチャーを対象に取る呪文は主に強化・保護・格闘といったあたりですが、色を考慮すると強化や保護が多いでしょう(今回は白緑という組み合わせに多分ならないので格闘は無さそう)。その手のカードはあまり多数入らないものですが、一枚のカードを二度使えるだけでも強力ですし、キャントリップや履修がついていれば尚更です。もちろん魔技とも好相性。

 制限はターンあたり一回というだけで自分のターンなどの制限はないので、インスタントならば相手のターンに打つこともできます(1ターンに1度だけならば)。

 3マナ、飛行、能力と、総じて《贖いし者、フェザー/Feather, the Redeemed》を思い起こさせるカードです。マナレシオは下がっていますが、能力は一長一短で、爆発力と継続性ではフェザーに分がありますが、出す前から墓地に落ちていたカードを使える点ではこちらに分があります。併用すると墓地の呪文をこれの能力で打ってフェザーの能力で手札に戻せるのでさらに強力になります。

 ボロス(ナヤ)フェザーの主要パーツの多くが既に落ちているため、スタンダードで同種のデッキを組むのは難しそうですが、試みる人もいるかもしれません。ヒストリックなら(フェザーを使っている人がもしいれば)試される可能性もあります。

 リミテッドにおいては、墓地利用はロアホールドのメカニズムですが、デザイン自体は強化呪文を連打するもののようなのでシルバークイルのほうが向いているでしょう。魔技の複数誘発も狙え、例えば《自身の誇示/Show of Confidence》を手札から打って続けて墓地から打てば+1/+1カウンター3つを割り振りつつ魔技が3回誘発します。

総評

 シルバークイルとロアホールドはやりたいことがかなり違っているので、白単色のカードも割と棲み分けが可能なように見受けられます。パーツが流れてきやすい色になるかもしれません。

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