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エドワード・ヤンの恋愛時代みたよ

先日『エドワード・ヤンの恋愛時代』の4Kレストアを観てきたのである。

初めてみたのは25年前、VHSで、しょぼいブラウン管だった。今回は4Kで劇場鑑賞だったのでその差は歴然だった。

暗い場面や、長回しを多用する、お家で鑑賞には全くむかない作品だ。登場人物も多くて、把握するのもやや苦労する。

舞台は1990年代前半、日本に続いて高度成長期を終えた台北で、若い男女がワチャワチャするというだけの話だが、カメラの距離感がいいんだよね。優しい視線と突き放した視線の塩梅がいい。
もちろん女性の社会進出する経済発展の段階であるから、恐れる男と恐れぬ女という図式もある。

長回しに長過ぎるセリフが多く、劇的な演出はほとんどないのだが、ラストシーンはほんの少し劇的で、なんともいえない余韻を残した。

こういうチンタラした映画、昔はよく観ていたが久しぶりで慣れるのに少し時間を要した。そういえば、エドワード・ヤンは『クーリンチェ少年殺人事件』を除けば、都会の男女を淡々と描く作品が多かったね。

それに対して『悲情城市』以前の侯孝賢は、田舎の少年少女を撮っていた。『ナイルの娘』とか『冬冬の夏休み』とか『風櫃の少年』とか。

エドワード・ヤンも侯孝賢も経済が発展していく段階のある時期にしか撮れないものを撮っていたと思う。日本でいえば溝口健二や小津安二郎かな。日本でも台湾でも、彼らが撮ったようなものは作られないだろう。


エドワード・ヤンが2007年に亡くなってから、版権がぐちゃぐちゃになって、彼の作品を鑑賞するのが非常に難しくなっている。

関心のある人はこの機会に劇場へ足を運んだほうがいいと思う。

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