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『機動警察パトレイバー2 the Movie 4DX』みてきたよ

『機動警察パトレイバー2 the Movie 4DX』を関西某所でみてきたよ。

4DXってどういうことなのかわからなかったが、席が揺れまくるということらしい。あと風が吹いてきたりした。

『機動警察パトレイバー2 the Movie』通称パト2は、私が今までに観た3000本近い映画の中でもオールタイムベストテンに入る1本であり、間違いなく最もたくさん観た映画である。たぶん100回くらいみてる。押井守信者だったのでDVDやBDはバージョン違いが出るたびに購入していたし(もうほとんど売ってしまったけど)、何回も何回も観た。みるたびに新しい発見があった。

劇場鑑賞は18年ぶり4回目だが今回もまた新たな発見があった。レイバーや戦車の機体のキズやヘコミがまめに描いてあって、さすが押井組は芸が細かい。あとこんな音が入ってたんだとか、これは沖浦啓之だなとか。劇場鑑賞はやっぱええね。

1993年製作の本作だが、湾岸戦争を始めとする世界各地の紛争に日本だけが兵隊を派遣しないことに内外から大きな批判があったという時代背景を理解しておく必要がある。

テレビゲームのようだと言われた湾岸戦争のことはもうみんな忘れてしまったかな。戦争をテレビスクリーンの向こうに押しやって、その成果だけはしっかり享受する偽りの平和とはそのことを指しているのは言うまでもない。

ここが戦線の後方にすぎないことを忘れたふりをし続ける平和ボケの日本という作中のセリフは、もちろん今日的な意味はあるのだが。

2001年に戦線の後方であったはずのNYの貿易センタービルに旅客機が激突したとき、本作の東京ベイブリッジ爆撃のシーンを思い出した人は少なくないだろう。そういう点でも非常にアクチュアルな映画であったと思う。

本作のキーマンは柘植行人、かつてカンボジアでのPKOで部下の大半を死なせてしまった過去をもつ元自衛隊員である。東京に騒擾情況をもたらすために日本へ舞い戻ってくる。われ地に平和を与えんために来たと思うなかれだ。CV根津甚八だ。なお東京に戦争の時間を演出したかったのは、言うまでもなく押井守本人である。
これに対峙するのは我らが警視庁警備部特殊車両2課第2小隊隊長後藤喜一と第1小隊隊長兼課長代理南雲しのぶだ。南雲は柘植のかつての恋人であるという設定であり、中年の三角関係も本作の見所となっている。

南雲の声をあてるのは榊原良子さん、コブラのレディ、Zガンダムのハマーン・カーンとマウアー・ファラオ、逆襲のシャアのナナイ・ミゲル、攻殻機動隊SACの茅葺よう子など一貫して強い女性を演じてきた。個人的には南雲しのぶが榊原さんのベストロールだと思っている。

狂言回しは荒川茂樹(竹中直人)である。彼が中年たちの間で動き回り、これはもう竹中直人以外ありえへんというはまりっぷりである。後藤と荒川の止め絵で正義の戦争と不正義の平和についてのダイアログは屈指の名シーンである。

本作のもう一つのポイントは第2小隊の隊員たちである。TVシリーズやOVAでは後藤隊長のもと楽しくわいわい文化祭の前日をやっていた彼らもすでに少年少女ではいられない年齢になっている。大人の覚悟とはなにか、責任や自覚とはなにか、押井守は厳しく問う。
そして泉野明は言う。

わたし、いつまでもレイバーが好きなだけの女の子でいたくないの、レイバーが好きな自分に甘えていたくない


冒頭のカンボジアでの戦闘シーン、レイダースクリーン上での幻の東京爆撃、隅田川空爆、最後の突入などエンターテイメント性にも富んでいて、つまり4DX向きの映画でもある。

パトレイバーに関心を持った方はまず劇場版の1作目からを観ることをおすすめする。レイバーのOSにウイルスが仕掛けられるという、Windows95登場以前に作られた傑作シュミレーションである。冒頭の自衛隊レイバーの暴走シーンなどエンターテイメントととしても抜群に面白い。


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