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3953 大村紙業について

はじめに

この話は、大村紙業という銘柄が投資対象として良いのではないか、と思って色々調べたのだが、不安だったのでやっぱりやめた…という話です。

私は買えなかったけど、材料としては面白いかな、と思い、折角なのでこの文章を残すことにしました。

注目した理由

私が大村紙業に注目したのは、2点あって、1つ目は異常に割安だったこと、2つ目はスタンダード適合に向けたカタリストが見えていたこと、でした。

割安性

私は割安かどうかを、ネットキャッシュと時価総額との対比で一次的に判断します。

2022年3月期の3Q決算短信から、大村紙業のネットキャッシュは現預金34.21億円に対し、有利子負債1.11億円で、差引き33.10億円でした。
これに対して自己株式を除去後の、時価総額は28億円です。

つまり、大村紙業はネットキャッシュ以下の価格で売買されている非常に割安な会社である、と判断できます。

業績も長年黒字を継続しており、事業の問題で売り込まれているわけではなく、地味な事業で、成長性もなく、株主還元も渋かったので、このような株価水準に落ち込んだのだろう…という風に見えました。
何かきっかけがあれば、評価が見直される余地はあるだろう、と思ったのです。

大村紙業の業績推移 (iMarketより)

カタリスト

大村紙業は2021/12/14に「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」の開示の中で、東証スタンダード市場の上場維持基準の流通時価総額>10億円、流通株式比率>25%を満たしていないことを公表しました。

そして、適合に向けたアクションの中で、2022/3/15に発行済み株式数の25%の自己株買いを実行しました。
買い付けた株式は9月末に消却すると言っており、流通株式比率基準に関してはクリアできる見込みです。

現在の数字情報を整理すると、以下のようになります。

  • 流通株式数 = 1,071,692株(*1)

  • 発行済株式数 = 4,884,000株(*2) - 1,250,000株(*3) = 3,634,000株
    *1 2022/2/10の自己株TOBの開示より. 東証の一次判定結果.
    *2 2022/2/10公表の3Q決算より.
    *3 2022/3/15公表の自己株買い結果より. 9月末に消却予定.

したがって、9月末の消却予定日時点でのスタンダード基準の指標を計算してみると以下のようになります。

  • 流通比率 = 1,071,692/3,634,000 = 29.4%

  • 流通時価総額 = 1,071,692 * 580(*4) = 6.21億
    *4 2022/5/2 現時点の株価

ここから、流通比率に関しては25%を超えておりクリア。
一方で流通時価総額に関しては大きく未達となることが予想されます。
基準の10億に到達するには株価を933円まで上げる必要があり、これは現在の株価から+61%の上昇が必要です。

この目標達成に向けて「新市場区分の上場維持基準の適合に向けた計画書」の中で、「利益水準の向上や内部留保の積み上げ水準に応じて増配を軸とする株主還元強化策について検討」とあるので、早ければ2022/5/13の本決算にて配当方針の変更が公表されることが期待できます。
2025/3末を流通時価総額の達成期日としているので、今年は何もないかも知れないですが、遅くても3年以内には動きはありそうです。

変更後の方針は、文面通り解釈すると、配当性向 and/or DOEの設定なのでしょう。
配当性向であれば、2022/3末のEPSが45円から考えると、配当性向30%~50%で13.5円~22.5円となります。
DOEではBPSが2021/3時点で1137円だったので、DOE 3%~5%で34円~57円となります。

いずれにせよ従来の残念な固定配10円からすれば、それなりにインパクトのある数字になる、と期待が持てます。

投資を見送った理由

以下は私が気になった大村紙業の懸念点で、投資を見送った理由になります。

キャッシュフロー計算書の内容が納得いかない

2021.3期と2019.3期に、設備投資としてそれぞれ2.52億、3.46億と当社としては非常に大きなキャッシュアウトがあったが、有報では「コルゲート部門の機械装置と車両運搬具の入替」としか説明がなかった。
というか、毎年の設備投資はすべて「コルゲート部門の機械装置と車両運搬具の入替」が理由になっていた。

2022.3期 有報 [設備投資等の概要] より

関係当事者取引の存在

有報の事業等のリスクの中で、関係当事者取引として、創業者および資産管理会社との間で損害保険・賃貸不動産の取引があった。

2022.3期 有報 [事業等のリスク] より

これらを問題視するかどうかは各投資家にもよるが、懸念を引きずったまま資金を投入すると下落時にとても辛いので、私は見送りました。

おわり

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