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2023.3.16(木)晴れ UBER嘘日記

UBER7件配達。menu1件配達。出前館1件配達。

 半月前の2月末日をもって大山で50年続いた町中華が閉店した。その店が今日この日だけ店を開いて冷凍生餃子を販売するという。営業最終日にお客さんが殺到し、餃子の売り切れを出してしまったためだ。餃子は店の看板メニュー。おやじさんとしても悔いが残ったのだろう。限定販売の運びとなった。これをお嫁さんが予約し、俺がUBERがてら取りに行くことになった。

 店は東上線大山駅のほど近く。早めに着いた俺はまだ1件は配達できると、駅前に行って地蔵した。昨日の女子高生がまたいたりして( ´∀` )

 果たして駅前に昨日の女子高生がいた。地べたに座って向かいのマルジューベーカリーのパンを食べているのも昨日と同じ。学校はどうした。パンツが見えそうだぞ。心も新たに全ての女子高生の父になりたいと誓った俺は、父として一言言ってやった。

「学校はどうした。地べたに座るな。パンツが見えそうだぞ」

 そしたら返ってきた彼女の言葉がふるっていたね。「3000円で見せてあげるよ」だってさ。おーい!挑発的やねキミ。

 3000円はスリコ10回分。これを高いとみるか安いとみるか。俺は財布から3000円を取り出した。彼女はスカートを上げた。パンツが見えた。頭を殴られるような衝撃を感じた。うむ、お安い。俺の肩に手を掛ける者がいる。振り返ると警官だった。女子高生は逃げた。

 俺は交番に連行された。( ノД`) 

 俺は警官に事情を話した。彼女を更生させるべく声をかけたこと。不意をつかれ3000円を取られてしまったこと。決して本意ではなかったこと。必死に喋った。あることないこと頭に浮かんだ良さそうな言葉をひったくっては舌に乗せた。

「俺最近社会の役に立ちたい欲求がすごいんです。自分のことばっかりだった今までの自分に反省です。この前UBER中にボヤを消火したことがあって褒められたら嬉しくて。もっと何かできないかと思ったんです。日がな街中をうろうろしているUBER配達員にできることは何か。今日は街をうろうろする夜回り先生のイメージであの女の子に声をかけました」
「エンコーのパパのイメージではなく?」
「何を言ってるんですか。結果、反撃食らいましたけど俺が打ったのは正義です。俺は正義の輪を同業の配達員たちに広げていきたい。連帯して一つの力としたい。このTシャツを見てください」

 俺の着ているTシャツには一つの警句がプリントされている。
 One love, one heart. Let’s get together and feel alright.

「訳すと、ひとつの愛、ひとつの心。みんなで一つになれば、いい気分になれるさ。という意味になります。いずれ多くのUBER配達員がこのTシャツを着て配達することになるでしょう。手始めに店で居合わせるたび挨拶しています」
「うん挨拶は大事」

 警官は俺の志の高さに免じて解放してくれた。

「今度やったら逮捕だからね?」
「すいません気をつけます」
「そのOne loveナントカは自分で考えたの?」
「自分、実は劇団をやっていてそこから引っ張ってきました」
「へーすごいね」
「すごかないんで食えてません」
「がんばってね」
「がんばります今日は本当にすいませんでした反省しています」

 俺は店に戻って餃子を買って家に帰った。餃子はお嫁さんと食べたが、この日、俺はお嫁さんの目を見れなかった。

つづく

この日の嘘じゃないUBER日記

この連載小説のまとめ


この文章で上がった収益は、全てボス村松の演劇活動と植毛に充てられます。砂漠に水を。セイブ ザ ボース。