見出し画像

NY家族旅行のチェックアウト(7日目)

 本日、我々はアメリカを発つ。さようならアメリカ。ありがとうニューヨーク。過ぎてしまえば全てが美しい思い出。本日のタスクはニューアーク国際空港に行く。飛行機に乗る。うちに帰ってうどんを食うの3点。

 朝起きたなりお嫁さんと、昨日包んでもらったステーキハウスの骨にしゃぶりつく。マトンの骨とビーフの骨。うまい。お嫁さんは特にマトンの骨を気に入ったようで味がしなくなるまで離さなかった。

 6:50空港行きのシャトルバスを我々は手配してある。我々は6:30にチェックアウトを済ませ、そのままロビーに陣取り運転手を待った。
 しばらくしてホテルの従業員に話しかけられる。どうしたんだ? シャトルバスを待っていると答える。お嫁さんがね? 従業員はそうかいと言って持ち場に戻っていった。
 旅行初日を思い出す。我々は入国してすぐ、手配したシャトルバスと行き違い、お嫁さんは何度もバス会社とやり取りし、電話口の英語はわからないと悲鳴を上げた。

 6:50になる。運転手は来ない。遅れているのかな。嫌な予感がする。7:00になる。来ない。いよいよだ。俺はロビーに立つ柱と一体化する。お嫁さんに何も求めたくない。ただただ運転手が来るといいなあと願う。外で待ってなきゃいかんかったのかなあと思う。母がさっきの人に聞いてみたら?とお嫁さんに言う。先ほど我々に話しかけてきた従業員のことだろう。母ありがとう。それは俺が言いたくて言えなかったこと。
 お嫁さんは従業員の元に行く。何やら話すと、従業員はホテルの外を見に行ってくれた。戻ってきて、曰く、それらしいバスはいないね。

 母がおしっこに行きたい。おーけーおーけー。それについては俺がすでにチェック済みだ。案内図に描かれたトイレマークを母に示す。母とお嫁さんは連れだってトイレに向かった。少しまごついたようだが、ほどなく二人は用を足して戻って来た。

 何時の飛行機?11:50の飛行機。でもチェックインは2時間前にしろって言われてるから…。ついに俺はお嫁さんに求めることをする。7:30になっても来なかったらフロントで事情を話して、代わりに電話かけてもらおうか。ホント申し訳ないお願いするばっかりでと心の中でなく。俺は話を続ける。俺はここで運転手さん待ってるから。この役立たず。

 今度は俺がうんこをしたくなる。トイレに向かう。鍵がかかっている。さっき母とお嫁さんがまごまごしていたのはコレか。案内文がある。coin、receptionなどの単語が読み取れる。わかった! フロントに行ってコインをもらう。コインをトイレのドアに投下。ドアが開く。俺は目的を果たして意気揚々と家族に合流する。しばらくして意気消沈する。運転手が来ない。

 7:30になる。お嫁さんがフロントに行く。フロントとお嫁さんが長々とやりとりするのを見るだけの俺。ロビーの柱と同じ。お嫁さんは悪夢の中でもがいているように見える。質が悪いのはこの悪夢はもうすでに1度経験している悪夢ということだ。痛かった歯医者に、2回目行って、また痛いみたいな悪夢。ずっと痛いのが続くことは知っている。

 お嫁さんが戻って来る。何て?手配してくれるって外で待ってなきゃいけなかったんだって。外で待つの?たぶん。外で待つと言ってもホテルには出口が二つある。いつ来るかもわからない。入国の時はここから1時間待った。電車だと難しいんだっけ?たしかそう。荷物もあるし。タクシーで行っちゃおうぜ。そうそうそうしましょと母も言う。お財布担当がそう言った。シャトルバスはキャンセルだ。
 俺はタクシーを探しにホテルを出ようとする。お嫁さんがフロントで手配してもらった方が、と逡巡を見せる。NYのタクシーは荷物があることを事前に伝えなきゃいけなくて、でもフロント通すとまた、…直でいいか! GOサインをもらう。俺はホテルを出る。車道脇のおっちゃんと目が合う。背後には黄色い車がある。イエローキャブだ。俺はおっちゃんに言う。「ニューアーク空港OK?」 彼は返す。「OK」

 予約なんてするものじゃない。我々は無事帰国し近所のうどん屋でうどんを食った。

この文章で上がった収益は、全てボス村松の演劇活動と植毛に充てられます。砂漠に水を。セイブ ザ ボース。