ワンルーム(ほぼ)おひとりさま松葉杖生活(室内編)

段差と気力とマッスルとたくさんの尊厳を浪費しつつ、
帰宅した我が家は20㎡未満のワンルーム物件である。
この物件、物件探しをしていた際に、
当時の会社から近くて(都区内のなかでも割と栄えてる)、
猫飼育可で(選択肢が急に少なくなる&家賃・敷金が跳ね上がる)、
玄関扉と居住スペースの間に一枚ドアがあって(猫脱走防止のため必須)、
できれば1階で(猫の大運動会による騒音を防ぐため)、
かつ賃料ができるだけ安くて(固定費は減らしたい)、
できればガスコンロのところ!
という条件のみで選んだものであり、
正直、猫部屋に人間様が間借りするを心境で選んだので
狭さ・古さ・防犯面についてはまったく気にしていなかった。

(例のいつもの「よゆーよゆー住めば都っしょ!」の精神である。
 ちなみに初めて我が家に遊びに来た父親は、大事に育てたかわいい(?)
 娘がこんなところで一人暮らし・・と絶句していた。)

そんな我が家で松葉杖生活となってみると、
<よい面>
・1階であること
  大・優・勝!!
  この物件はエレベーターがない。
  実は内見時に、もう少し広くてかつ部屋の間取りが正形に近い
  上階にするか迷っていた。
  2000円の家賃をケチった10年前の私に大拍手した。
  
・トイレやキッチンまで近いので移動が少なくて済むこと
  受傷1週間度、なんやかんやでギプスがとれるまで、
  実家に1か月近く身を寄せることになったのだが、
  自室と居間と風呂場とトイレがクッソ遠い上に
  和室を通らねばらならない間取りとかあって
  移動がいちいちダルく(田舎のおんぼろ一軒家あるある)、
  帰省したことを後悔した理由ランキングの上位に食い込んでいる。
  コンパクトかつ必要最低限の機能を兼ね備えたマイルームが恋しかった。

・エアコンさえつければどこでも室温が快適に保たれること
  部屋が狭い&集合住宅全般に使用されているであろう断熱材様様である。
  猫のために、エアコンは年中無休24時間稼働しているので
  猫が健康に暮らすことができる上に、人間も快適に過ごせる特典付きマイルーム。
  田舎のおんぼろ一軒家からこの物件に引っ越してきて初めて迎えた冬、
  室内の暖かさに「都会の集合住宅って・・しゅごい・・!」
  と抱いた感動は冬が来るたび、冬の実家に帰省するたびに何度でもよみがえる。
  なお、今の電気代値上げに対してささやかな対策として、
  部屋中に巨デカプチプチを張り付けて断熱効果を狙っているのだが、
  もし火事にあってこのプチプチに火が付いたら、
  さぞかしよく燃えるだろうなと思っているくらいには敷き詰めている。
  マジでね、うちの実家だけの現象かもしれないのだが、
  夏は暑く(エアコンある部屋は少ない)、
  冬は寒い(何なら日差しのある日中は外のほうが体感温度が高い)!!
  最も快適に過ごせる場所は客間となっていて、
  昔の家なので断熱材とかーなにそれ知らんー
  夏は打ち水まいて冬は石油ストーブと半纏でも着込んでおけーな
  環境なので、夏だったら多分実家に身を寄せることはなかっただろうと
  しみじみ思っている。

・ユニットバスの浴槽の狭さが、ギプス側の足を濡らさないように
 足を挙げて置くのにちょうどよかったこと。
 滑って転びそうになってもとっさにつかむところがある。
 安心感はセコム級。

・キッチンがコンパクトなので移動の必要がない。
 食材の取り出しから片付けまで三歩で済む。
 (でも配膳はできない。味噌汁とかコーヒーとか無理。)

・床掃除が楽。
 四つん這いスタイルは、必然、床と顔が近くなる。
 いままで見えてるものも見ないようにして生きてきた私だったが
 否応にも床の汚れ(猫毛とか猫毛とか猫毛とか)が見えてしまうので
 せっせと床掃除に励まざるを得ないことになるのだが、
 部屋が狭いおかげでお掃除がすぐ済んだのは楽だった。
 (ただし、部屋が狭いおかげで、すぐに汚れがたまるので無限お掃除編が開幕した)

<悪い面>
・道路から共用通路への微妙に高めな段差が憎い。

・玄関ポーチが狭い。
 靴の着脱のために椅子を置いたが、脱ぐときには狭い玄関ポーチで
 くるりと方向転換をしなければならず、
 結局、毎回、四つん這いスタイルで脱ぐ羽目になる。

・部屋が狭すぎてキャスター付き椅子を使うほどでもないが、
 部屋が狭すぎて室内では松葉杖が使えない。
 インターネットで「足」「骨折」「移動」とかで検索すると
 必ず上位にくるのがコロコロとしたキャスター付きの椅子である。
 「家事が楽になりました!」や「自宅での移動が便利です!」といった   
 口コミを見てはうらやましくて涙が出そうになる。
 常に四つん這いスタイルか、腕と右脚の力で立ち上がる必要がある。
 シンプルに上半身が筋肉痛で逝った。
 しかもこのとき運よく?悪く?
 妹殿が推し活の際の宿泊先としてマイルームに転がり込んできており、
 狭い部屋に人間2人と猫2匹というソーシャルディスタンスの喪失と
 圧倒的生きもの密度だったのも、移動が大変だった原因と思われる。
 ちなみに妹殿はスパルタなので、ものをとってくれたり食事を作ってくれたりすることはめったになかったので戦力として換算していない。
 猫2匹は、妹殿のことを多分自分たちより少し大きな猫だと思っている節がある。
 だが帰省時に妹殿が猫2匹を運んでくれたことは一生恩に着るつもりである。

・洗濯できないこと
 格安物件のため、洗濯機置き場は室外(ベランダ)にあるマイルーム。
 ベランダには外開きの扉を開けて高めの段差を降りなければ出られない。
 猫の脱走の危険等もあり、住み始めてこのかた、洗濯は近所のコインランドリー利用の一択である。
 これまでは1週間~2週間に1回、大荷物を抱えてコインランドリーにいっていたが、松葉杖では無理である。
 さあでかけよう一枚のパンツ・タオル・タイツかばんに詰め込んで・・
となると、時間も費用も不経済である。
 (コインランドリー利用自体が不経済なのだが、
  乾燥や取り込みにかかる時間等をお金で買っていると思っている)
 仮に洗濯機を置いていて、室内干しとしていたとしても、
 水にぬれた洗濯物をもって自室へ戻るのはやはり無理だったと思う。


こうして書き出してみると、私の場合における
ワンルームおひとりさま松葉杖生活は良い面悪い面あるが、
総評としてはやはり「ワンルームでよかったな」と思う。
なんやかんやあり受傷後1週間で実家に身を寄せることになったが、
いまでも「あのまま一人暮らしでも行けたんちゃう?」という気持ちは
いまでもある。
猫たちには移動の負担をかけてしまい本当に申し訳ないと思っている。
実家到着1日目にしてまるで生まれたときからここに住んでますよ?と
言わんばかりに新環境に慣れてくれた猫たちには感謝しかない。
やはり近所の友人との交流もふくめて住み慣れた我が家には愛着があるのだろう。
このあたりが、
「給料もずいぶん増えたし、良い物件が見つかったら引っ越ししようかな」
と思いつつ、
たとえ夜中に急に消したはずの部屋の電気がついたり(妹も遭遇済み)、
夜中に窓の外からフラッシュのような閃光を浴びたり(妹も遭遇済み)、
テレビのリモコンを紛失していたのに、テレビが勝手についていたり
(後日、風呂場の洗濯物かごの中からリモコンは発見された)、
真夜中に窓の外から法皇の緑によるエメラルドスプラッシュ並みの発光を感じても、なんだかんだ住み続けてしまう理由なのかなと思った。

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